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W140型 Sクラスというメルセデスが威信をかけた至高のベンツ

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W140型 Sクラスというメルセデスが威信をかけた至高のベンツ

巨大化した威風堂々のボディサイズでバブル末期の日本で評価された第三世代

プレミアムサルーンのベンチマーク的な存在として、メルセデス・ベンツのSクラスは先進的な技術を搭載。常に時代の先端を歩んできた。その歴史において1991年に登場した第三世代の「W140型」は、ボディサイズの拡大をはかり最新の装備を搭載し、メルセデスのフラッグシップモデルとして存在感を示した。今回は、このW140型について紹介したい。

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メルセデス・ベンツSクラスは、いつの時代も世界の高級車市場において、圧倒的な先進性と存在感を示したモデルだ。ライバルメーカーにとって、それは常に最も強く意識すべきベンチマークであり、Sクラスを超越する高級車を生み出すことは究極的な夢にほかならなかった。

2013年にデビューし、ビッグマイナーによってさらなる進化を果たした現行型のSクラス(W222型)は、Sクラスとしては第6世代に相当する。初代Sクラス(W116型)が誕生したのは1972年のことで、じつに45年もの歴史を刻んだ計算になる。ここで解説するのは、1991年から1998年まで生産された第3世代のSクラス(W140)。前作は1979年デビューのW126型、そして後継車は1998年デビューのW220型というのが、W140型を中心とした時系列だ。

果たしてW140型は、メルセデス・ベンツが想定したとおりの成功を収めたのだろうか。誕生した時の衝撃は、小さなものではなかった。それはメルセデス・ベンツが企業哲学とする「最善か、無か」という言葉をそのまま体現化したようなモデルであったし、先代W126型に比べて全長100mm、全幅と全高においては65mm、60mmと拡大されたボディサイズも”人間の平均身長はさらに伸び続け、21世紀にはこれだけのサイズが高級車には必要だ”というメルセデス・ベンツの主張を聞けば、それに否定的な意見を唱えようという者は少なかった。メルセデス・ベンツの進む道に誤りがあるわけはない。それが当時の常識だったのだ。

W140型で採用されたエンジニアリングは、もちろん時代の最先端にあるもの。ボディのフラッシュサーフェイス構造や、さらなる遮音性能を目的とした二重構造のサイドウインドウ。搭載エンジンには6ℓ仕様のV型12気筒が設定され、装備レベルにおいても、それは高級車の頂点を極めていた。その代償として、驚くほどのプライスが設定されることになる。さらに大きく、そして高価なモデルとなったW140型は、結果的にメルセデス・ベンツの予想に反してドイツはもちろんのこと輸出市場においても、非常に厳しいセールスを強いられた。そのような状況の中でも、比較的好意的な目でW140を評価したのは、実は日本だったのである。

デビューイヤーの1991年は、日本のバブル景気が後退期に入った時期に重なるが、高級で高価格なものに特別なステータス性を感じるという消費動向が、一瞬で変わることはなかった。まさに、その消費動向にベストマッチする商品だった。デザインスケッチの段階ではかなりスポーティな…クーペのようなスタイリングだったW140だが、最終的にはマッシブなサルーンスタイルに変更された。最後のオーバークオリティモデルと呼ばれ、細部の質感は非常に高く、電動調整式ステアリング(テレスコピック機能付き)など高級車らしい装備類も充実。しかしW126から拡大されたボディサイズ、それに伴って増大した2tを超える車重など否定的な意見も多かったのも事実だ。

【前期型】

同年の夏に日本でのセールスがスタートしたW140型は、300SE、500SE、500SEL、600SELの4グレードをラインアップ。搭載エンジンは、300SEが3.2リッター・直列6気筒DOHC。500SE/500SELには5リッター・V型8気筒DOHC、600SELには前述の6リッター・V型12気筒という構成だ。注目を集めたのは新開発されたV型12気筒エンジン。最高出力410psというスペックは市場で大きな話題となった。

ところで、1998年まで生産されたW140型は、マイナーチェンジによって前期型、中期型、後期型と大別することができる。1991年から1994年までの前期型では、1992年に4.2ℓのV型8気筒DOHCエンジンを搭載する400SELが、右ハンドル仕様で新規導入。そして300SEや500SE、500SELでも右ハンドルの選択を可能にするなど、バリエーションの拡充が図られた。さらに、唯一左ハンドル仕様だったフラッグシップ(600SEL)にも右ハンドル仕様を追加設定。1993年になるとV型12気筒エンジンと標準ボディのコンビネーションとなる600SEL、そしてクーペモデルの600SECも日本仕様のラインアップに加わる。参考までにセダンの標準ボディとロングボディの全長差は100mm、クーペのSECには標準ボディよりもさらに55mm短い全長だが、このサイズ差がいずれもリアシートまわりの居住性に直接反映されているのは言うまでもない。W140前期型

ボディディメンションは全長5120mm×全幅1885mm×全高1490mm。標準仕様は3040mm、ロングボディは3140mm(全長5220mm)のホイールベース設定し、登場した。サスペンションは高級車にふさわしい乗り心地を求め、フロントにダブルウイッシュボーン、リアにマルチリンクを採用。ABSや車高調整システムなども装備した。そして、1993年にはクーペを新たにラインアップしている。

【中期型】

1994年になると、初のマイナーチェンジを実施。すでにこの前年、メルセデス・ベンツはモデル名の表記を変更し、新たに”Sの”頭文字に続けて、エンジンの排気量を示す数字が示されるようになった。それに前後して日本仕様では、2.8リッター・直列6気筒エンジンを搭載するS280と、5リッター・V型8気筒をクーペボディに搭載したS500クーペを追加。より幅広いニーズに応えるラインアップとなった。

このマイナーチェンジでは、フロントのウインカーレンズがオレンジからクリアタイプへと変更。テールレンズや前後バンパー、また当時メルセデス・ベンツのデザインチームを率いてW140のスタイリングを統括したブルーノ・サッコの名前にちなむ”サッコ・プレート”と呼ばれるボディサイドのボトム部を被うパネルを採用するなど、エクステリアでもさまざまな変更が加えられた。

そして、装備面では、車体姿勢を常に安定方向に導くための”ASR”が、V8とV12モデルで標準装備化。1995年の秋にはS500(L)、S600(L)、S600クーペの各モデルで、4速ATから5速ATとすること、燃料噴射システムをLHジェトロニックからより細かい制御が可能なモトロニックへと変更することなどを発表した。W140の進化は終わらないことを、ユーザーに強く印象づけたのである。

インテリアは質実剛健を貫きシンプルな意匠ながらも、ラグジュアリーな装備を大幅にグレードアップさせた。人間工学に基づきシートの形状を見直し、シートヒーター機能を盛り込むなど(リアシートも電動調整式)快適性を向上。電動調整式ドアミラーなども、そのひとつだった。また、後期型では文字と方向表示だけだったがナビゲーションシステムを搭載している。

【後期型】

そして、1997年から生産された後期型は、まさにW140の完成形ともいえるモデル。テールレンズ内のウインカーがクリア化されるとともに、ホイールのデザイン変更などエクステリアでもその違いは明らかなもの。中古車市場においては現在でもファンの心を刺激し続ける存在となった。前後してクーペはCLクラスと改称された他、1997年のモデル末期にはS320の装備を向上。インフォメーション&コミュニケーションシステム、メモリー機能付きのパワーシート、ブレーキアシストなども標準装備化され、こちらも中古車市場で常に高い人気を集めている。中期型ではASR(アクセレレーション・スキッド・コントロール)と5速AT(1995年/3~5速にロックアップ機構付き)の新採用、ボッシュ製の燃料噴射システムへの変更などを実施。エクステリアではW124でお馴染みのサッコ・プレートがボディサイドに与えられた。また、後期型はテールレンズのクリア化や新ホイールデザインの採用に加え、ブレーキアシストやデュアルサイドエアバックの搭載が主要な変更点。キセノンヘッドライト(ロービームのみ)、オートレインセンサー付きのワイパーなどのエクイップメントも充実化が図られた。

最後に、W140の時代にあった特別モデルを紹介しておこう。

S500 Long Landaulet

Gクラスやマイバッハなどでよく知られているランドレーモデルがW140にもあった。フロントシート上部はルーフがありリアシート上部は幌付きのオープントップとなるモデルのことを指すが、写真を見ていただくとリアシートが単座仕様になっているのが興味深い。ゆったりとした空間の中ひとりだけでオープンエアを楽しめるというなんとも贅沢(!?)な仕様になっている。

S600 Pullman Limousine

1995年5月に登場したW140型のプルマンは、対面式の4座を備えたメルセデスの伝統を受け継いだリムジン。ロングボディから約1mストレッチされ全長は6.2mを超えておりエンジンはV8に加え、プルマンとしては初めてとなるV12ユニットが搭載されていた。ロシアのエリツィン元大統領が移動の足として使用していたのをはじめ、世界のVIPが愛用していた。もちろん、装甲仕様とすることもできた。

果たしてSクラス=W140は、これからクラッシックとしての価値を生み出すのか。ここ最近のファンの興味は、ここに集まっているようだ。

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