■1978年の登場からほとんど姿を変えていない「リアルクラシック」モデル
ヤマハのシングルスポーツ「SR」が発売40周年を迎えました。今回は1978年に登場した初期型以来、ほとんど姿を変えることなく今に至る超ロングセラーモデルの歴史を振り返っていきましょう。
2018年現在、バイク業界は国内外問わずネオクラシックと呼ばれるカテゴリがブームになっています。初代モデルを知らない若い世代にはヤマハ「SR」もその1台に見えるかもしれませんが、空冷単気筒SOHC2バルブのエンジン形式も、それをキックで掛ける始動方法もティアドロップ型の燃料タンクも2本のリヤショックもほぼ当時のまま。
時代に合わせて形状や構造こそ微妙に進化してきましたが、ネオクラシックというよりリアルクラシックと表現すべきモデルなのです。
さらに言えば、ネオクラシックは当時のハイスペックマシンや歴史的なヒットを記録した名車をモチーフにし、現代に蘇らせたケースがほとんどです。その点、SR400は1978年の発売当時からすでにやや枯れた雰囲気を漂わせていました。
というのも、70年代はとっくに大排気量&多気筒の時代に突入していたため、ホンダCB750Four(1969年)やカワサキ900 Super4(1972年)に引っ張られるようにして、スペック競争が激化。
パワーはあればあるほど、スピードは出れば出るほどシェアに直結した時代の中、あえて控えめなスペックとスタイルで世に送り出されたのが「SR」というバイクです。
その変化球が逆にウケてベストセラーとして君臨、ということもなく、空前のバイクブームが巻き起ころうとする中、SRは浮くこともなければ沈むこともなく、淡々とラインナップの中に存在し続けてきました。
絶対数は多くなくとも、そのシンプルな機構と飽きのこないデザインを支持するファンが必ずいて、ヤマハも右往左往することなく、「SR」を守り続けてきたというわけです。
SRは最初からスペック競争のステージに立っていなかったため、そこで負けることもありませんでした。負ければメーカーはテコ入れせざるを得ず、それが過剰なモデルチェンジや不必要なドレスアップにつながるのですが、ヤマハ「SR」はどうしても必要な時に最小限の改良だけを施してきました。
それでもなお「もっとこうだったら」というポイントがあれば、ヤマハはユーザーの工夫にゆだねることにしましたが、ある意味でカスタムやチューニングでいかようにも変われる素材の柔軟さが、「SR」が長年に渡って支持されてきた理由のひとつでしょう。
■大別すれば5世代に これでアナタもSR通
さて、そんなSRは次の通りざっくり5つの世代に分けることができます。
●I型 1978年から1984年 オフロードバイク「XT500」をベースに持つロードモデルとして登場したのが1978年のこと。今でこそ400ccのイメージが強いものの、長らく400ccの「SR400」と500ccの「SR500」の2本立てでラインナップされていました。
このI型は前19インチ、後18インチのホイールの採用が特徴で、1979年以降はそのホイールがキャスト化された「SR400/500 SP」というモデルもありました。
●II型 1985年から2000年 この型から前後18インチのホイールが装着され、ハンドルは低く、ステップは後退するなど、そのディメンションはよりスポーティなものになりました。
ところがそれまでディスクだったフロントブレーキはドラムになり、フォークにはブーツカバーを装備。スポーツとクラシックの狭間にあったモデルと言えるでしょう。
またビッグシングルの代名詞でもあった「SR500」は、このII型を最後にラインナップから消えることになりました。
●III型 2001年から2008年 キャブレターの変更などによって、扱いやすさが大きく向上したのがこの型です。また、フロントブレーキは再びディスク化され、I型では前輪の左側に装着されていたものがこの型では右側に変更。サスペンションのセッティングも見直され、ハンドリングが時代に合わせて最適化されました。
しかしながら、デビュー30周年を迎えた2008年式を最後に生産終了。新しい排出ガス規制に適合させるための準備期間が設けられたのです。
●IV型 2010年から2017年 それまでのキャブレターに代わり、ついにインジェクションが採用されたのが2010年式からです。それに伴って吸排気系を全面的に刷新。マフラー内部にはハニカム触媒も配置され、優れた環境性能を備えて再デビューを果たすことになりました。
ところが段階的に厳しくなる環境規制を前に、さらなる改良が必要になったことを受けて2017年8月に再び生産を終了。ただし、ヤマハは早々に復活させることを名言し、ファンを安堵させたのです。
●V型 2018年~ IV型の生産終了から約1年後、2018年9月に発表されたのがV型となる最新モデルです。IV型の時と同様、環境規制をクリアするための改良が各部に施され、O2センサーの制御向上や蒸発ガソリンの外気放出を低減するためのキャニスターなどでそれを実現しています。
新型の正式なリリースは2018年11月22日からで、スタンダードモデルの「SR400」と特別な塗装や装飾を施した「SR400 40th Anniversary Edition」が500台限定でラインナップされることが決まっています。
カタログ上のスペックを見ると、最大トルクの発生回転数がグッと引き下げられた様子なので(IV型:5500rpm/V型:3000rpm)、そのフィーリングの違いが楽しみです。
もちろん、これ以外にもさまざまな改良が積み重ねられてきたわけですが、ひと目で「SR」とわかる佇まいが40年間も維持されてきたのは、ちょっとした奇跡ではないでしょうか。一ファンとして、これから先の進化も楽しみでなりません。
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