私がこの『Ferrari』を最初に見たのは2017年5月、イタリア・マラネロで開催されたフェラーリ70周年記念イベントの会場においてだった。最初の印象は「あれはなんだろう?」。真っ赤なカムカバーが、エグゾーストマニフォールドの上に載っているではないか!
それが2018年11月7日、日本でも披露されたタッシェンの本、『Ferrari』だった。マラネロに飾られていたのはプロトタイプで、中に収まる本はなかった。だから、本そのものを見るのは今回が初めてだ。
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「フェラーリの歴史をビジュアルで見せよう、という話から企画がはじまりました」と、タッシェンでマネージングディレクターを務めるマレーネ・タッシェン氏は話す。
「4~5年前、友人が(フェラーリ副会長の)ピエロ・フェラーリ氏を紹介してくれた際に、歴史のビジュアル化に興味はないか? と、打診されました。そのあと(この本の著者である)ピーノ・アッリエーヴィ氏に会い、珍しいフェラーリの写真を集めて、歴史本を刊行する企画が本格的にスタートしました」
「恐らく写真のほとんどは見覚えがないのでは?」と、タッシェン氏に言われ、べージをめくると、たしかにそのとおり。貴重な数多くの写真が、美しく印刷されている。
なかでもフォーミュラレースや、スポーツカーレースの記録写真には眼が釘付けになる。伝説的なレーシングドライバーたち、雨中のスタートシーンの美しさ、さらに悲惨な事故の写真……。フェラーリのあらゆる歴史を写真で表現している。
著者はエンツォ・フェラーリとも親交があり、フェラーリやモータースポーツの本を何冊も執筆する。イタリアでは、レースの解説者としても知られた存在だ。それゆえ、フェラーリ秘蔵のアーカイブや、世界のコレクターが保有する“お宝写真”を集められたのだ。
製本作業のほとんどは北イタリアでおこなわれる。514ページにも及ぶ大型本を製本するため、バチカン向けの大型本を手がける製本所が選ばれた。装幀のレザーはフェラーリ車のシートと同じもので、ステッチも同じ職人が手がける。表紙の跳ね馬も、クルマに使用するエンブレムと同じという。
『Ferrari』は2種類ある。ひとつは「アートエディション」と呼ばれ、カムカバーを模したアルミニウムのケースに入っているがスタンドはつかない。価格は72万円(税抜き)で、限定1697部を販売する。
このエディションを“簡略版”としたら、もうひとつの「コレクターズエディション」は“完成版”だ。私がマラネロで見たのはまさにこちらで、価格は360万円(税抜き、輸送費別)に達する(限定250部)。
自宅に飾っておけるスペースを持っているひとは、このコレクターズエディションを買ったほうがいい。とにかく迫力満点だ。
デザインを手がけたマーク・ニューソン氏は言う。「本のケースデザインは『V12のエンジンカバー』しかない、と思いました。フェラーリが自社で手がけていたのはエンジンですから、とにもかくにもすべてはエンジンなんです。ボディは他のところ(スカリエッティやピニンファリーナ)が作っていましたからね」
プロダクトデザイン界の大御所とも言うべきニューソン氏は、これまでもタッシェンのために、いくつもの本を”デザイン”した。
「フェラーリの歴史上、もっとも重要なエンジンといえば(ジョアキーノ)コロンボが手がけたものではないでしょうか? だから、『815S』をはじめ、彼が手がけたエンジンをモチーフにしようと思いました」
エンジンをモチーフにしたケースを製造したのは、実際のエンジンメーカーだ(「残念ながらフェラーリのエンジンではありません」と、ニューソン氏)。アルミニウムを削って形を作り、赤の塗装を吹き付けて、ホンモノのフェラーリエンジンのようなケースを丁寧に仕上げている。
代官山の会場には、フェラーリのジョン・エルカン会長も姿を見せた。この本について意見を求めると「これほどまでの“すごい写真”をよく集めましたよね」と、頷いていた。制作過程でなにかコメントしましたか? と尋ねると「スタンドについてちょっと意見しました」との答えだった。
1969年にフェラーリを傘下に収めたフィアットグループを率いるアニェッリ家に連なるジョン・エルカン氏は、「マニフォルードを少し太めにして、もっとリアルなエンジンに見えるよう、頼みました」と、言う。
「あなたも意見はありますか?」と、私に尋ねるので、「そのマニフォルードが白に塗装されていたらよかった」と、答えた。エルカン氏は「なるほど」と言ったあと、「ただ、クロームのエグゾーストパイプと視覚的に無理なくつなげられるかどうか、それが問題ですね」と、つけくわえた。
「見る」「読む」に限らず、フェラーリ好き同士、あれやこれやまわりで語り合えるのも楽しい1冊であった。売れ行きは好調で、限定250部のコレクターズエディションは「すでに在庫はほとんどありません」と、タッシェン氏は言う。
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