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業界ニュース 2018.11.3

クラシックミニを普段使いする!

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近ごろ、人間の能力をテクノロジーで強化する「人間拡張(Human Augmentation)」なる言葉を耳にする機会が増えてきた。

たとえば筋肉が発する電気信号を読み取って、まるで実際の手のようにモノをつかんだりできる筋電義手(バイオニック・ハンド)もその一種だ。事故で右腕を失った男性が、バイオニック・ハンドを装着してピアノ演奏をしている動画を見たことがある人もいるかもしれない。

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いわゆるハンディキャップを負った人のバイオニック・ハンドと決して同列に語るわけではないのだが、「機械による人間拡張」とは男子一般の夢でもある。

古いところではマジンガーZ然り、もう少し新しいところではいわゆるガンダムシリーズ然り。詳しくは知らないがエヴァンゲリオンというのも、その一種なのだろう。

バイオニック・ハンドはさておき、モビルスーツ的なアレの実用化には(おそらく)あと100年はかかるはず。完全なる人間拡張への道のりはまだまだ長い。

だが我々は自動車の運転免許さえ持っていれば、とある絶版名車を通じて、人間拡張の境地に近い感触が味わえることをご存じだろうか?

「とある絶版名車」とは、英国のBMCが製造していた「ミニ」というクルマだ。

最近の人にミニと言うと、おそらくはドイツのBMW社が作っているちょっと派手めな現行モデルを連想するのだろう。だがここでいうミニはそれではなく「元祖」のほう、つまり1959年にデビューした革命的小型車のことである。

1956年に中東でスエズ動乱が勃発すると、世界中で石油価格が高騰した。これを受けて当時の西ドイツでは「バブルカー」と呼ばれる2~3人乗りの超小型車が濫造されたのだが、それらバブルカーの総合性能は正直、「マトモな自動車」と呼べる水準ではなかった。

そんな状況を憂いた当時のBMC会長が、自社開発陣に「きわめて経済的で、きわめてコンパクトでありながらも、人々が十分以上に満足できるクオリティの4人乗り大衆実用車を早急に開発せよ」と命じた。

この無理難題に完璧に応えて生まれたのが元祖のほうのミニであり、その開発チームを率いたのがアレック・イシゴニスという、ギリシア系英国人のエンジニアだった。

「小さくて安いのに高性能なクルマを作れ」という会長の無茶ぶりに対してイシゴニスが採った革命的手法はさまざまあるが、決定的なそれは「エンジンを縦ではなく横向きに載せる。そしてそのうえで、後輪ではなく前輪を駆動させる」というアイデアだ。

これは、クルマにまったく詳しくない人には意味不明な呪文に見える文章かもしれない。だが少しでも自動車のメカニズムについての知識があれば、こう思うだろう。

「それってごく普通のレイアウトじゃない?」

そのとおりだ。今となっては当たり前すぎる手法であり、高額なスポーツカーなどは除いた世界中のほとんどの実用車は、この「エンジン横置きの前輪駆動」という方式を採用している。

だが1950年代後半の地球においては、ごくごく一部の軽車両を除けば誰も実現できていなかったレイアウトなのだ。

イシゴニスは、加えて「変速機をエンジンの下に配置する(つまり二階建てにする)」「サスペンションには金属バネではなくゴム(ラバーコーン)を使う」「スペースを節約するため、ほとんど前例がない直径10インチというごく小さなタイヤを採用する」などのレボリューショナルな手法を駆使し、初代ミニを完成させた。

そしてミニは、BMC会長の要求どおりの「ものすごく小さくて経済的なのだけれど、大人4人が乗る実用車として普通以上に用を足せる」という名作大衆車になった。

だが思わぬ「副作用」もあった。

実用大衆車として作ったつもりなのだが、動きが妙にスポーティなのだ。

スポーティというよりは「ダイレクト」といったほうが実際のニュアンスに近いだろうか? いずれにせよ「大衆向け小型車」であるミニは、同時に「やたらと運転が楽しいクルマ」にもなってしまった。

本稿の冒頭で筆者が「人間拡張(Human Augmentation)」について触れたのは、この点ゆえである。

元祖ミニの運転席に座り、それを動かし始めると、このクルマはドライバーの肉体および精神と完全に一体化する。いやもちろん実際にそんなことはないのだが、あまりにもコンパクトで、そしてあまりにも「決して不快ではないダイレクト感」に満ちているため、まるで自らの肉体がこのクルマの形状およびサイズへとメタモルフォーゼし、そのうえで走っているかのような錯覚を覚えてしまうのだ。

英国のコメディ映画『Mr.ビーン』で、主人公氏の愛車が黄色い元祖ミニであることをご存じの方は多いだろう。そしてビーン氏は劇中でなぜかいつも、黄色のミニをえらい勢いでかっ飛ばしている。駐車するときも、どこかへ行く用事があるときも、彼はいつだっておそろしいほどシャープに走る。

ミニというクルマのことをご存じない人は、眉をひそめるかもしれないシーンだ。「ビーンは、なんだってあんなに飛ばしてるんだ?」と。

だがミニを知る者にとってあれは、思わずニヤリとしてしまうシーンである。「そうそう、どうしてもそうなるよね……」と。

ミニを買って、ビーン氏のように無法な勢いで街中をかっ飛ばそうぜという話ではない。ミニを買って、もちろん節度と法を守りながらではあるが、「人間拡張(Human Augmentation)」にも似た世界を楽しんでみるのはどうだろうか? という話を私はしている。

マニアックなことを言うのであれば、1960年代から1970年代あたりに製造された「本当のクラシックミニ」を買うのがいちばんではあるかもしれない。

だがそこにこだわりすぎる必要もない。1990年代から2000年までの最終世代であっても、しっかりと整備されてきた(できれば妙な改造はされていない)個体でさえあれば、ミニの真髄すなわち「人間拡張の境地」は十分以上に堪能できる。

その世界にご興味のある方は、ぜひ。

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(GQ JAPAN 伊達軍曹)

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みんなのコメント

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  • zoo*****|2018/11/03 21:44

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    今でもクラシックミニは街で見かけると綺麗に乗っている人が多く、オーナーを羨ましく思う。
    街を流しているだけで楽しい名車だと思う。
    いつまでも大切に乗り続けてほしい。
  • rak*****|2018/11/03 22:33

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    この「元祖ミニ」こそが本当の意味での『MINI』であり、
    3ナンバーを付ける現行のBMW製は、もう違う車だ。

    そう、あの車はいまや『FAT』としか言えないと思う・・・
  • kan*****|2018/11/04 08:50

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    クラシックミニを普段使いできる人も実際少ないのではないかと思う。
    パワーアシストの無いステアリングをトラックのような運転姿勢で操らなくてはならないし、エンジンオイルは構造上まめに替えないといけないし、乗り心地だって決して良いとは言えないくらいゴツゴツ跳ねる。大半の人は故障だの不良品だの言いそうだけど、それをわかったうえでそういうもんだと思う人だけが、至福の時間を過ごせるのだと思う。

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