満を持して発売されたホンダ N-VANをはじめ、キャブオーバー、バン、トラックなどカーゴとトラックの2本立てで働く軽自動車を牽引するハイゼットなどがある。また、ゆったりキャビンのスーパーキャリーやロングセラーなエブリイ、アトレーワゴンも見逃せない。
<b>キャブオーバー、バン、トラッククラスとは</b>
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乗員スペースがエンジンの上となり、荷室のスペースを最大限に確保できるキャブオーバータイプや、軽自動車の商用グレードやトラックなど。特に積載性に特化したラインナップが揃うのがこのクラスの特徴だ。
軽バンの概念を覆す革命児……ホンダ・N-VAN
<b>ホンダ独自のFFレイアウト
キャブオーバー以上の積載性</b>
アクティバンの後継となる軽バンがN―VANだ。働くクルマの軽バンは荷室長を最大限に確保するためエンジンを前席床下に置き、前席をギリギリまで前寄りにレイアウトできるボンネットのないキャブオーバーが基本だが、一番売れている国産車のN―BOXをベースにしたFFレイアウトを採用した点がユニークだ。
が、FFレイアウトでも、操縦性の左右差をほぼ解消したとされる助手席側センターピラーレス構造や、ホンダ独創のセンタータンクレイアウトによる低床化、後席&助手席ダイブダウン格納などによって、キャブオーバー同等の最大荷室長(助手席側)を実現。しかも低床による荷室高(室内高)のゆとりから、ライバルのキャブオーバーでは難しい250ccクラスのバイクの積載をも可能にしたのである。
つまり、働くクルマとしてだけでなく、バイク、キャンプ、釣り、車中泊などさまざまなホビーユーザーへの提案がより現実的になったと言える。実際、仕事用はもちろんだが、ホビーユーザー向けのホンダ純正アクセサリーも数多く用意されている。
ラインナップはプロの道具として開発されたハイルーフの「G」、「L」、ホビーユーザーにも向くスタイリッシュな+STYLEのハイルーフ=「FUN」、標準ルーフ=「COOL」を用意。パワートレーンはN―BOXのものを受け継ぎ、FF、4WD、自然吸気とターボ、CVT、S660譲りの6速MTを揃えている。
秀逸パッケージの軽バン代表格……ダイハツ・ハイゼット カーゴ
<b>スマアシIII採用で安全性向上
個性に合わせた豊富なカラー</b>
日本の地域物流で大活躍している小さな働くクルマ、キャブオーバー軽バンの代表格の一台がハイゼットカーゴ。現行型は歴史ある十代目で、2017年11月のマイナーチェンジでは待望の衝突回避システム「スマアシIII」を採用したSAIIIグレードを用意。フロントグリルはたくましさを強調する台形デザインとなり、前後のLEDライトも設定した。
仕様はMR、4WD、インパネセンターシフトの5速MT、4速ATが揃い、基本のハイルーフ、標準ルーフを設定。エンジンは46㎰(AT車は53㎰)、6・1kgmの自然吸気、及び最上級の「クルーズ」に64㎰、9・3kgmのターボを用意する。
また、業種や仕事の個性に合わせて選べる7色のボディカラーを「カラーパック」として揃え、ホワイトとシルバー以外の爽やかなカラーを選べるようになった。グリーン系のファインミントメタリックやピンク系のライトローズマイカメタリックなどがそれだ。擦りやすいフロントバンパーの左右角は部分的に外して交換できる黒色樹脂製のコーナーピース仕様で、「カラーパック」選択時はその部分もボディ同色となる。
2名乗車時の荷室フロア長1950mm、荷室高1235mm(ハイルーフ)、助手席前倒し時の6畳相当のカーペットが丸めて積める最大荷室長2630mmはライバルに並ぶ数値だが、みかん箱の積載数はライバルのエブリイ69個、新ライバルのN―VANの71個に対して65個だ。
自動ブレーキを軽トラで初採用……ダイハツ・ハイゼットトラック
<b>日常で安心して使える安全性
荷台の広さと積載性も良好</b>
ハイゼットトラックは2010年から17年まで、軽トラ年間販売台数1位を維持している、軽トラ界のベストセラーモデル。初代の発売は1960年でダイハツ車の歴史の中で最も古く、14年に発売された現行型が十代目となる。
17年11月に行なわれたハイゼットカーゴのマイナーチェンジと同時に、軽トラ初のLEDヘッドランプの採用や全車にABSを標準装備するなどの改良を実施。そして18年5月には軽トラでは初となる衝突回避支援ブレーキや前方誤発進抑制制御機能などを採用したスマートアシストIIIt装備車を設定した。スマートアシストIIItは、軽トラの走行状況を踏まえて、積載時でも安全に停止できるように通常のスマートアシストIIIよりも衝突回避支援ブレーキが稼働する速度域が抑えられていたり、誤発進抑制制御機能が前方に限定されるといった違いはあるが、軽トラでも歩行者に対応する自動ブレーキが装備されるというのは画期的だ。スマートアシストIIIt装着車にはトラクションコントロールや横滑り防止装置も標準装備されるので、日常的な安全性も向上する。もちろん軽トラでは人気の5速MT車にもスマートアシストIIItは用意される。
荷台の広さはライバルのスズキ・キャリイと同じ数値をマークしているので積載性も良好。他社にOEM供給もされており、トヨタではピクシストラック、スバルではサンバートラックとして販売されている。
働く人想いの利便性と安全性にこだわった新型……スズキ・キャリイ
<b>快適性能を大幅に向上した新型スーパーキャリイ誕生</b>
キャリイは軽トラックの代表車種だ。日産/マツダ/三菱にもOEM車として供給され、スズキを含めると、乗用車を手掛ける国内8メーカーの内で4メーカーが扱う。軽商用車は薄利多売の商品だから、大量に生産しないと採算が取れず、ホンダもN―BOXをベースにN―VANを開発した。
現行キャリイの荷台は、ライバル車のハイゼットトラックと同程度の広さだが、乗降性は異なる。キャリイは前輪の収まるホイールハウスと、ドア開口部の前端に十分な間隔があり、乗員の足が通りやすい。
バリエーションで注目されるのは、2018年5月に追加されたスーパーキャリイだ。標準ボディのキャリイに比べると、室内空間の上側を後方へ460mm拡大して、運転席には最大で40度のリクライニング機能が与えられ、前後に180mmのスライドも行なえる。標準ボディでも運転席が140mmスライドするが、リクライニングはできずヘッドレストは固定されるから、スーパーキャリイは快適性が高いといえる。運転席の調節機能は、軽商用バンのエブリイと同程度。助手席の背もたれを水平になるまで前側に倒すと、背面をテーブルとして使うことも可能だ。
車内後部の下側は手前に張り出しており、荷室の床面が伸ばされている。背の高い荷物を積む時の荷台長は1480mmだが、高さが230mm以下の薄い脚立などであれば、1975mmの長さまで収められる。
仕事に趣味に効率的に使える万能車……スズキ・エブリイワゴン
<b>利便性の高い広々空間
前後席のスライド機能は秀逸</b>
目いっぱいスペースを使い切るなら、商用バンの右に出るものはない。その装備を乗用車テイストに仕立て直したのが、スズキ・エブリイワゴン。決して安くはないし、燃費も経済的とはいえないし、強い横風に対する安定性などマイナス面も指摘される。地味な戦いを強いられているが、徹底的に使い倒す本格派ファンからは熱く支持され、現行のワゴンは三代目に当たる。
ベースとなる貨物仕様のエブリイから数えると六代目だし、その祖先の初代キャリイバン(1962年発売)まで遡ると通算50年を超える長寿命車になる。
現行モデルは2017年に登場したもの。血筋が商用車だけに、前席の下にエンジンを縦置きしたキャブオーバー配置で、後輪を駆動するのが基本(4WDもある)。3気筒658ccエンジンは、大きい車重、大荷物、空気抵抗などを考えてターボの64㎰仕様のみ。変速機はATのみだが、このモデルから4速化され、使い勝手が向上した(それまでは3速)。注目すべきは軽自動車界で最大の室内空間(室内長2240mm、室内幅1355mm、室内高は標準ルーフで1315mm、ハイルーフなら1420mm)。しかも、前席だけでなく後席も180mmスライドできる。家族揃って乗るにも余裕だし、1~2名なら車中泊だって可能。完備した積載アクセサリーを利用しての渓流釣りなどにも威力を発揮する万能車だ。真剣に検討の価値はある。
意匠変更と安全性強化でさらに頼れる存在に……ダイハツ・アトレーワゴン
<b>荷室が広く積載能力は抜群
改良で室内の静粛性が向上</b>
アトレーワゴンはハイゼットカーゴの乗用車モデル。商用車がベースなだけあり、室内が広く大人4名が乗った状態でもガッツリ荷物を積める点が魅力。前席の居住性は良くないが、後席には足元や頭上空間に余裕がある。現行型登場から13年が経過したロングセラーモデルだが、2017年11月にマイナーチェンジを行ない、内外装をリフレッシュ。外観はシャープなデザインのフロントマスクが採用され、インパネもデザインが一新されて質感を高めている。安全装備は歩行者にも対応する自動ブレーキなどを搭載したスマートアシストIIIを標準装備。ただし、スマートキーや右側の電動スライドドアの採用が見送られたので、この点はライバルのエブリイワゴンと比べると見劣りしてしまう。
前席下にエンジンがあるため運転席に乗り込む際に、小柄な人だと少し座面が高く感じるが、乗り込んでしまえば前方がよく見える。座面のクッションが薄いこともあり、走行中は振動が伝わり、エンジンの透過音も聞こえてくるが、マイナーチェンジによって、だいぶ改善されている。エンジンはターボだけなので力不足を感じさせることはないが、4速ATになるため燃費は良くない。フットワークも重心が高く、商用車に近い少し硬めの乗り心地になるが、乗員や積み荷が増えてくると落ち着きが増してくる。平日は仕事で使い、週末はレジャーカーとして使いたい人には魅力的なクルマだ。
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