発売1ヵ月後の2018年8月に即届いた「受注1万4000台突破!」という景気のいいニュースを追い風に、その後も順調に月間4000台ペースで届出台数を重ねているのがホンダのN-VANです。
その背景には、先代モデルであるアクティ・バンの存在も大きいと思われます。その理由は何といっても、そのモデルライフの長さです。アクティ・バンが登場したのは、軽自動車規格改定が行われた翌年の1999年。いまから19年も前のことです。装備内容の変更など軽微な改良はあったものの、大きく姿カタチを変えず売り続けられてきました。これは凄いことで、延べでいうなら累計20万台レベル、手放さず乗り続けているアクティブユーザーがその半分だとしても10万人程度の顧客ベースがあると予想できます。
ボルボXC40を測って測って測りまくる。高さは? トランクは?
ただ、それらアクティ・バンのユーザーが待ってましたとばかりに一斉にN-VANに乗り換えている……のかと思いきや、中古車マーケットを見ると、どうやらそうではないようなのです。
プロユースで使われる軽の商用バンは乗用車に比べると車歴が長いのが特徴です。車検1回もしくは2回で乗り換えるユーザーは少なく、セカンドユーザーなど当たり前、10万kmをゆうに超えていても再整備し仕上げたのち流通させれば買い手がつくという、しぶとく商品価値が落ちない傾向があります。
というわけで、新車に乗り替えるタイミングと思われる5~7年落ちのアクティ・バンの流通量を調べてみました。すると、6年落ちの2012年式の中古車流通量が突出しているのがわかりました。おそらく5回目を迎える車検期を機に手放したと思われます。
ただ、N-VANの絶好調を裏付けるほど下取り車が市場に増えているかというと、けっしてそうとは言い切れません。売れっぷりからするとまだまだ少なく感じます。
ちなみにアクティ・バンの中古車相場ですが、N-VANのデビューに関係なく、このところ急速に下落傾向にあるといいます。それには、アクティ・バンが抱える闇の部分があります。
アクティ・バンの中古車相場はかつては強気でした。10年落ちくらいまでは新車価格に迫るほどの相場でしたが、過走行の車両が増えてくるようになると旗色が変わります。致命的なトラブルが発覚したのです。それはアクティ・バンのMR構造に由来するものでした。ラジエターは前、エンジンは後ろというレイアウトは水路を長くとらざるを得ず、クーラントへのエア混入によるオーバーヒートが頻発。あわせてヘッドガスケット抜けも続発し、要整備の車両が増えてしまったのです。MRですからエンジンを降ろすのもひと苦労。よって、中古車業者も敬遠するようになりました。商用バンに載せておくのはもったいないくらいシュンシュンとよく回る名機E07Zエンジンだっただけに惜しいウィークポイントでした。19年という歴史がありながら、中古車流通台数がわずかなのも、こんな理由があるのです。
ホンダもそれはわかっていたのか、1999年のデビュー時は2000台だった月間販売目標は、時を経るごとにハードルが下っていき、2010年の一部改良時は月間750台に、2015年に行われた最後の改良時は月間500台という消極的なものでした。ちなみに同時期のスズキ・エブリイの目標台数は月間7000台、ダイハツ・ハイゼットカーゴは月間5000台でしたから、アクティ・バンのモデル末期は次世代N-VANの登場に託し、耐え忍んでいたことがわかります。
我慢の甲斐あってN-VANは、エブリイ、ハイゼットともに商用バンの3強入りすることができました。N-VAN登場後も先行2車合わせて月間1万台以上という売れゆきに大きな変化はありません。N-VANはライバル車からの代替えというより、新たな市場を創出したといってもいいのかもしれません。
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