消費税率が10%に上がる見込みという観測報道も聞こえてくる。先日、東京・お台場の臨海副都心エリアで開催された東京モーターフェスでも、自工会・会長でありトヨタ自動車・社長の豊田章男氏が、マツコ・デラックスさんと行なったスペシャルトークショーにて消費税の増税による日本の自動車市場の縮小について言及していた。
いわく、日本の自動車市場は消費税によってシュリンクしているという。消費税率が3%から5%になったとき(1997年)に101万台も市場が小さくなり、その後5%から8%に税率があがったとき(2014年)には75万台も減少したと試算されている。もし2019年に消費税率が10%になると、今度は30万台規模で市場が小さくなると予測される。つまり、消費税率のアップにより、日本の自動車マーケットは200万台も縮小しているのだ。
軽自動車からバス・トラックまで含めた自動車マーケットの規模は2017年の実績で523万台。6%近く市場が小さくなり、9万人の雇用が減ってしまうと豊田章男氏は主張する。たしかに30万台というと、2017年実績における登録車の販売台数(≒国内向けの生産台数)でいうとマツダ(約17万台)とスバル(約14万台)の合計に近い数字だ。製造側は国内だけでなく海外市場もあるが、販売会社は国内市場のシュリンクはダイレクトに影響を受ける。つまり30万台減というのは、2ブランドに相当する販売店が不要になるという見方もできる。
もちろん、特定ブランドだけでなく各社がそれぞれに影響を受けるわけだが、2ブランド相当の販売網が不要になると考えただけでも、雇用に対する影響が大きいことは実感できる。また、製造ラインにおいても人員減になるため、非正規雇用層から影響を受けることだろう。豊田章男氏は、自動車産業の裾野を支える中小企業への存続まで含めた影響があることも懸念材料として指摘した。
とはいえ、トヨタ自身も販売店の再整備や販売ラインナップの整理を進めていると報道されているなど、自工会としては消費税アップに反対しながら、企業としてはその対応も進めているわけで、覚悟を決めている部分もあるのは間違いない。
消費税率アップ以外にも1997年にはアジア通過危機などもあり、国内自動車市場のシュリンクに消費税だけが因果関係にあるとは言い切れないが、豊田章男氏がいうように過去2度の消費税率アップにより170万台もの自動車市場が失われたとすれば、さらに消費税が上がることを懸念するのは当然だ。内需が拡大してこそ消費税による税収が増えるという考え方からすれば、税率アップにより市場が小さくなることが予想されているならば、それを避ける政策が必要だと思う。消費税アップによる駆け込み需要について言及されることもないような状況において、できることは少ないのかもしれないが……。自動車ユーザーとしては、せめて消費税率アップのかわりに、自動車諸税の減税を求めていきたい。
文:山本晋也
自動車コミュニケータ・コラムニスト
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