シビックタイプRをも凌駕するホットハッチ、ルノー メガーヌR.S.の新型が発表されたのはつい先日、8月30日のことだった。その性能の高さは言うまでもないが、興味深いのは“心臓部”。279馬力を発揮する1.8Lターボエンジンは、なんと日産のシルフィに搭載されるエンジンがベースだという。
エンジン開発には多額の研究費が投じられる。コストを抑えるために1車種だけでなく他車種に転用し、生産量を増やす例は特に近年増えている。
総勢40台超! 誌上モーターショー2018 ベストカー11月10日号
しかし、シルフィとメガーヌR.S.のように“一見、何の関係もないように見える実用車のエンジンをベースにスポーツエンジンが生み出された例”は、それほど知られていない。
このメガーヌR.S.の例を端緒に、本稿では逆にスポーツカー用エンジンが別モデルに転用されたケースも紹介。過去を振り返れば、GT-Rのエンジンをそのままのスペックで活用した異端モデルも存在したのだ。
文:片岡英明/写真:編集部、NISSAN
メガーヌR.S.のエンジンは日産ベースの“日仏合作”
ルノーを代表するFF・2ボックスのメガーヌにはホットハッチのR.S.がある。R.S.が搭載するのは、“M5P型”と名付けられた1798ccの直列4気筒DOHC直噴ターボエンジンだ。アルピーヌA110には直噴ターボではなく自然吸気エンジンを積んでいる。
このエンジンは、シルフィなどに積まれている日産設計のMR18DE型エンジンをベースに開発された。
ただし、ロングストローク化している。M18DE型(日産)はボア84.0mm、ストローク81.1mmで、排気量が1797ccだ。これに対しルノーのM5P型エンジンはボア79.7mm、ストローク90.1mmで、排気量は1798ccとなる。
メガーヌR.S.の心臓は直噴ヘッドにツインスクロールターボを組み合わせ、大幅なパワーアップに成功した。もちろん、プレミアムガソリン仕様だ。
また、日仏合作とわかるのは、フリクション低減技術の「DLCコーティング」、「ミラーボアコーティング」などの技術を日産が技術供与していることである。
ちなみに弟分のルノー ルーテシアR.S.などが積む直列4気筒直噴ターボエンジン(M5M型)とジュークNISMOのRSに搭載しているDOHC直噴ターボ(MR16DDT型)も、基本設計が同じだ。どちらも排気量は1618ccで、パワーススペックもかなり近い。
GT-Rと同一スペックの心臓を持つステージアも存在
日産はゴーン体制になる前にも積極的にパワートレーンを共有化している。直列6気筒エンジンの傑作と言われた“RB26DETT型”DOHCツインターボは、1989年8月、R32型スカイラインGT-Rに積まれてデビューした。このエンジンは改良され、後継のR33型とR34型GT-Rにも搭載されている。
また、RB26DETT型ツインターボは、1997年10月にステーションワゴンのステージア 260RSにも移植された。これはオーテックジャパンが手がけた特別仕様車だ。
ステージアは7代目ローレルのシャシーにスカイラインの直列6気筒エンジンを積んだ快速ワゴンだが、260RSはスカイラインGT-Rと同じRB26DETT型エンジンと電子制御トルクスプリット4WDのアテーサE-TSを組み合わせた超ド級のスポーツワゴンだ。
2568ccのRB26DETT型DOHCツインターボは最高出力280ps/最大トルク37.5kgmを達成した。パワースペックはR33型GT-Rとまったく同じ。飛び抜けて速かった。
スープラとアリスト、セリカとカルディナも同じエンジンを活用
トヨタもバリエーションが豊富だから、いろいろなクルマに高性能エンジンを転用している。その筆頭が1990年代に一世を風靡した2491ccの“1JZ-GE型”と、これをスケールアップした“2JZ-GE型”直列6気筒、そして電子制御スロットルシステムを採用した“2JZ-GTE型”直列6気筒2ウェイツインターボだ。
このパワフルなエンジンは、プレミアムスポーツセダンのアリストのほか、A80系スープラなどにも搭載され、好評を博した。アリストは初代だけでなく2代目にも搭載している。
2JZ-GE型直列6気筒と2JZ-GTE型直列6気筒ターボは1JZ系のスケールアップ版で、排気量は2997ccだ。
ボアとストロークをそれぞれ86mmに拡大したスクエア設計で、1995年以降は連続可変バルブタイミング機構のVVT-i仕様に進化し、ドライバビリティを向上させた。
初期の2JZ-GTE型ツインターボでも自主規制枠いっぱいの280psを発生し、最大トルクは44.0kgm。これに対しVVT-i仕様は280psの最高出力は変わらないが、最大トルクは46.0kgmに増強されている。ターボの後押しによって自然吸気の2JZ-GE型を大きく上回る鋭い加速を見せつけた。
ステーションワゴンのカルディナにもトヨタはスポーツユニットを与えている。2代目のカルディナは1997年秋に登場したが、初代と違ってスポーツワゴンを設定した。それがフルタイム4WDにDOHCターボを組み合わせた「GT-T」だ。メカニズムの多くは、WRCで大暴れしたセリカGT-Fourのものを譲り受けている。
心臓はボア、ストロークともに86.0mm、排気量1998ccの“3S-GE”型直列4気筒DOHCエンジンにターボを装着した“3S-GTE型”エンジンだ。ベースとなった6代目セリカ GT-Fourの3S-GTE型エンジンは、圧縮比8.5で255ps/31.0kgmのスペックだった。
これに対しカルディナGT-Tは改良型の3S-GTE型ターボを積み、セリカGT-Fourを上回る260ps/33.0kgmを発生する。最強スペックにこだわったのは、当時、全盛を誇ったレガシィツーリングワゴンGTと真っ向勝負するためだ。
同エンジンだった2台のタイプRは微妙な仕様差も
ホンダもスポーツユニットを巧みに使い分け、仲間を増やしている。その代表がインテグラタイプRの第二世代モデル(DC5型)とセンタータンクレイアウトを採用した異色の2代目シビックタイプR(EP3型)だ。
シビックタイプRは欧州仕様を日本のユーザー向けに手直ししたものである。両車ともDOHC・VTECエンジンを2Lにスケールアップし、2001年に登場した。
パワーユニットは両車とも1998ccの直列4気筒DOHC・VTEC(K20A型)だ。ただし、パワースペックは違う。
ピュアスポーツのインテグラタイプRは最高出力220ps/8000rpm、最大トルク21.0kgm/7000rpmのスペックだった。これに対しシビックタイプRはワインディングロードなどでの扱いやすさを重視して、最高出力は5ps、最大トルクも0.4kgm引き下げている。それでも215ps/20.6kgmの高性能だ。
ちなみにトランスミッションは、ユニークなインパネシフトの6速MTだった。3代目のタイプR(FD2型)とはファイナルレシオも異なっている。
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