素直な操縦性を持つクルマがカギとなる
本当に速いクルマは、ストッピングパワーも強力で、コーナリングスピードも速く、トラクションもよくかかって、最高速もきっちり伸びる。ハイパフォーマンスカーはそうした万能性を求めるが、“サーキットの狼”の時代から、「コーナリングマシン」、「コーナリング性能No.1」といった称号には、何とも言えない魅力がある。
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しかし、コーナリングマシンとは何なのか。俊敏性、操縦性のいいクルマ? コーナリング中の気持ちがいいクルマ? コーナリングフォースの高いクルマ? 旋回Gが高いクルマだろうか?
じつは、定常円旋回のタイムを測定してみると、いわゆるスーパースポーツもちょっとスポーティーな普通のセダンもそれほど大きな違いはない……。というわけで、なかなかコーナリングマシンを定義するのは厄介なのだが、とりあえず、“直線番長”の対義語、動力性能よりコーナリングでタイムを稼ぐ類のクルマで、なおかつ素直な操縦性を持つクルマと考えて、その代表的な車種を挙げてみよう。
1)マツダ・ロードスター
月並みだが、やはりマツダの歴代ロードスターは、コーナリングマシン、ハンドリングマシンの優れたベンチマークとして外せない一台。前後重量バランスの良さ、サスペンションストロークの豊富さ、ジオメトリーの良さ、適度な剛性、車重の軽さといった要素から、よく曲がり、限界が掴みやすく、滑り出しても挙動がマイルドでコントロールがしやすい。エンジンパワーが大人しいという意味でも、ハンドリングが際立ち、稀代のコーナリングマシンといえる。
2)マツダRX-8
マツダからもう一台。RX-8をプッシュ。マツダには、開発者が「どんなサーキットでもインからライバルを刺せるハンドリングマシン」と語ったRX-7もあるが、RX-7よりホイールベースが伸びたにもかかわらず、“よく曲がる”RX-8は、操縦性+安定性=操縦安定性でRX-7の上を行く。NAのロータリーエンジンで、パワーよりもコーナリング勝負という意味でも、コーナリングマシンの名にふさわしい。
3)BMW Mクーペ
レイアウトからして、コーナリング最優先としか思えないちょっとヘンタイ的なFR(褒め言葉)。ほとんどアンダーステア知らずで、なおかつピーキー過ぎず、懐深いハンドリングは1990年代のベストハンドリングマシンといっても過言ではなかった。
4)ロータス・エリーゼスポーツ
軽快、俊敏、アンダー知らず。かといってナーバスではなく、リヤのスタビリティもしっかりしているという点で、ロータス・エリーゼスポーツのバランスはピカイチ。ライトウエイトのミッドシップスポーツのお手本で、こういうクルマは、10年経っても、20年経っても、ハンドリングマシンとしての評価は下がらない。
5)ホンダ・インテグラタイプR(DC2)
「FFは曲がらない」とは言わせない。インテRの存在価値はまずそこにある。とにかくこのクルマはちゃんと曲がって気持ちいい。下手な後輪駆動車など目じゃないほどきちんと曲がる。そのうえ、VETCエンジンとの組み合わせによって、クラス最速の速さを誇った点も評価できる。ホンダでは、S2000や一時ハンドリング性能世界一と評されたNSX(初代)も秀逸なコーナリング性能を誇るが、この二台はNAながら類を見ない強力なエンジンを積んでいるので、総合点が高いクルマに分類しておく。
その点では、MINIのジョンクーパーワークス(BMW)もFFだが、旋回性が高くて気持ちがいい。危ない感じはしないが、四つのタイヤがきちんと仕事をしていて、大人のコーナリングマシンといったところ。そのほか、“サーキットの狼”で絶賛された、ロータスヨーロッパやランチア・ストラトス、ディーノ246なども、凄いコーナリングマシンだったのだろうが、残念ながら筆者はロータス・ヨーロッパ以外乗ったことがないので……。
いや、池沢さとし先生がコーナリングマシンとおっしゃる以上、不朽のコーナリングマシンだと思って間違いない。
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