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悲劇のヒロインか!? 隠れた名車か!? 三菱RVRはなぜ生き続けるのか?

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悲劇のヒロインか!? 隠れた名車か!? 三菱RVRはなぜ生き続けるのか?

 「あっ、まだ作っていたんだ」というクルマに時折出くわすことがある。しかし販売台数などを見ているとそこまで大ヒットしているわけでもない。

 今回取り上げる三菱RVRもその一例だ。三菱はデリカD:5を筆頭に魅力的なSUVを輩出しているが、このRVRの販売台数はさほど多くない。

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 しかし3代目の現行型は2010年の発売以降、小規模改良やマイナーチェンジを繰り返しいまも現役。なぜ三菱はRVRを進化させ続けるのだろうか?

文:渡辺陽一郎/写真:池之平昌信、三菱

■画期的だった初代と制約のあった3代目

 失礼ながら「今でもまだ作っていたのね」と思ってしまうのが三菱RVRだ。2017年(暦年)の国内登録台数は2072台。

 1カ月当たりに換算すれば173台にとどまる。この台数は一般的な市販車の中ではかなり少なく、販売が終了しても不思議のない状態だ。

 同じ三菱のアウトランダーは、PHEVを含めると1か月平均で633台だから(これも少ないが)、RVRの売れ行きは約27%になる。

 過去を振り返ると、初代RVRは、SUVとハッチバックの中間的な車種として1991年に発売された。

 背の高いボディで後席側にスライドドアを備え、SUVのカッコ良さと、2列シートながらもミニバン風の使い勝手を両立させた。今でも通用する優れたコンセプトであった。

 1997年に発売された2代目は初代の発展型で、2000年代の初頭に生産を終えた。そして2010年に、3代目の現行RVRが復活している。

 ただしボディスタイルは大幅に変わり、普通のSUVになった。現行RVRは、本来ならば2Lエンジンを積みたいところだったが、当時のエコカー減税の対応で1.8Lに抑えており、動力性能が物足りない印象だった。

 プラットフォームはアウトランダーと共通で、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2670mmと長い。

 エクリプスクロスを含めて、三菱の主力SUVは、3車種ともにプラットフォームが共通でホイールベースも2670mmに統一される。

 RVRはホイールベースが長いのに全長は4365mmに収まるから、オーバーハング(ボディがホイールから前後に張り出した部分)が短い。

 カーブを曲がる時に慣性の悪影響を受けにくく、設計が古い割に今でも走行安定性は満足できる。

 またクルマの居住空間は前後輪の間に位置するため、ホイールベースの長いRVRは、全長が短い割に後席の足元が広い。

 運転のしやすいサイズのボディで、4名乗車も快適に楽しめる。

 こういった優れた実用性と相まって、RVRは北米やインドネシアなどではアウトランダースポーツ、欧州や中国ではASXの名称で売られている。

 日本では軽自動車のeKワゴンやeKスペースが好調に売れることもあってRVRの存在感は乏しいが、海外では三菱の車種数が少ないこともあるから大切な商品だ。

 それならどうして、人気のSUVカテゴリーに属するRVRが1か月平均で173台しか売れないのか。

■不祥事で現行型は不遇の存在に。それでも進化はすごい

 もっとも大きく影響しているのは、2000年代の中盤までに次々に発生したリコール隠しなどの不祥事だ。

 一連のイメージダウンにより、2010年に発売された現行RVRのアピールも十分に行われなかった。

 この後、2012年に現行アウトランダーのノーマルエンジン車、2013年にアウトランダーPHEVとeKワゴン、2014年にはeKスペースが発売され、国内販売が上向くかと期待された。

 それなのに2016年に、eKワゴンとeKスペース、日産のデイズとデイズルークスに燃費数値の偽装があったことが発覚する。三菱車全体の売れ行きが再び伸び悩んだ。

 紆余曲折の結果、今の国内では、すべての三菱車が売れていない。2017年(暦年)における三菱車の国内販売総数は9万1620台で、1か月平均に換算すると7635台だ。

 この台数は同じ時期のフィットやシエンタ1車分と同程度になる。

 そうなればRVRの販売が低調だといっても、三菱にとっては大切な商品だ。

 販売会社とセールスマンの尽力により、RVRを何台も乗り継ぐユーザーもいるから、安易に廃止などできない。

 そこでRVRは定期的にマイナーチェンジや改良を行い、2018年9月6日にも、緊急自動ブレーキを作動できる安全装備を全車に標準装着した(以前は一部がオプションだった)。

 ドライバーの死角に入る後方の並走車両を検知する機能も、新たにオプション設定している。このように定期的に進化を図り、現行RVRのユーザーも、新車へ乗り替えやすくしている。

 RVRの売れ行きが下がったのに生産と販売を維持する理由として、国内の販売店舗数が以前に比べて減ったことも挙げられる。

 現在の三菱の店舗数は600拠点少々だから、460拠点前後のスバルに次いで少ない。トヨタは4系列を合計すると4900拠点、ホンダは2200拠点、日産は2000拠点とされるから、トヨタと比較すれば10%以下だ。

 そうなるとRVRの登録台数が1か月当たり173台でも「1店舗の割り当て台数」という見方をすれば、トヨタの1400台、日産の580台くらいには相当する。

 それぞれの販売店にとっては、手堅い収益源だ。

 特に今の三菱では、販売総数の55%を軽自動車が占める。1台当たりの粗利が限られるから、小型/普通車のRVRは、売り上げを伸ばす上で効率の優れた商品でもある。

 このほかアウトランダーやエクリプスクロスとの相乗効果もねらえる。

 販売店でこの2車種の商談をしている時に、顧客から「ボディが大きすぎる」「価格が高い」といった問題点が提示された場合、「RVRであればボディがコンパクトで価格も安いですよ」と解決案を示せるからだ。

 RVRの需要がアウトランダーやエクリプスクロスに奪われることもあるが、その逆もあり得る。

 メーカーの損得勘定としては、基本的に長く造るほどトクをすることもある。車両の開発には、エンジンに加えてプラットフォームを共通化した場合でも、80~100億円は必要だといわれる。

 販売しながらこの開発費用を償却していくわけだが、予想外に売れ行きが伸び悩むと、収支を合わせるまでの販売期間が長引く。

 RVRのように長く売り続けるクルマの中には、一定の台数に満たないため、販売期間が伸ばされている車種もある。

 このように、いろいろな事情でRVRは販売を続けている。新型車が次々と発売されれば好ましいが、そうもいかない場合、設計の古い売れ行きの下がった車種が重要になることもある。

 とりわけ三菱はSUVを主力商品としてブランドの再構築を図っているため、RVRは絶対に省けない。

 三菱の悲喜こもごもを背負いながら、今日もRVRは、大切な三菱ファンの元に届けられている。

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