チョークレバーの調整だけはなくアクセルとのコンビネーションが必要
現代ののクルマはエンジンへの燃料供給に電子制御燃料噴射装置を使っている。それゆえスタートボタンを「ポンッ!」と押せば、いとも簡単にエンジンを始動することができる。
ところが、1980年代までに生まれた昭和のクルマは、エンジンへの燃料供給は『キャブレター』という装置を搭載していた。エンジンはガソリンと空気を混ぜて燃焼させるが、燃えやすくするためにガソリンを空気の中に霧状にして混ぜている。このガソリンを霧状にする役目を担っているのがキャブレターだ。エンジンが冷えているときは、その混合気を濃いめに設定して始動しやすくしていたのだが、それはマニュアル操作で行うため「コツ」が必要だった。とくにスポーツモデルのエンジン始動は、儀式とかオーナーの技とも言えるほど難しかった。
そんなキャブレター仕様のエンジン始動に欠かせないのが「チョーク」というもの。これはガソリンに対して空気の量を絞って、混合気(空燃比)を一時的に濃くするための装置である。
ガソリンが冷えて燃えにくくなっている冬場や長く止めていて燃焼室が冷えているときなどは、エンジンがかかりにくい。こういう状況のときにはチョークレバーやノブを引き(下の写真の矢印のスイッチ)、キャブレターの入り口にあるチョークバルブを開いて始動しやすくしてやるのだ。
エンジンが気化しにくい状態になっているとき、チョークレバーを引き、ガソリンを一時的に濃くしてやれば気化しやすくなり、エンジンはかかりやすくなる。気化する量が増えれば増えるほど、エンジンはかかりやすくなるわけだ。2度目の始動は、燃焼室が暖まっているのでエンジンは始動しやすくなる。キャブレター仕様のエンジンは、チョークを上手に使えないとうまく始動させるのは難しい。
チョークを引いたままアイドリングを続けていると、エンジン内にカーボンがたまってストールしやすくなる(回転が落ちてしまう)。また、チョークを引いたままアクセルを踏み込むと、混合気が濃くなりすぎて、ガソリンで点火プラグが濡れてしまうことも少なくない。こうなるとプラグがかぶり、火花が飛ばなくなるから、エンジンがかかりにくくなるのだ。
キャブレターの種類や数、チョークの種類によってエンジンのかけ方は違う
また当時のクルマは、エンジンの冷却水の温度や外気温などによってチョークの効き具合を変える必要があることも知っておく必要があった。寒い日の始動やエンジンが冷え切っているときはチョークレバーを目いっぱい引く必要があるが、エンジンが暖まった後の再始動や夏場の暑い時などはチョークの操作は不要だ。
チョークを働かせるにはレバーやノブ、ボタンなどがあり、必要に応じて操作し、効き具合を調節。エンジンのウォームアップ(温まっていく)状態に合わせてノブやレバーを戻していくが、その加減はクルマやキャブレターの種類によって違うから慣れが必要だ。操作量を間違えてしまうと、エンジンのプラグがかぶって始動が困難になる。また、暖気が終わった後もチョークを効かせたまま運転を続けると、エンジン不調に陥りやすいし、燃費も悪い。
ハコスカと呼ばれるC10型スカイラインGT-RやフェアレディZ432、トヨタ2000GT、セリカ1600GT、ギャランGTO MRなどが装着しているのは「ソレックス」と呼ばれる高性能型のキャブレター。6気筒だと3基、4気筒だと2基装着するから始動はなおさら大変だ。個体差があるからコツと慣れも必要になってくる。この手の高性能車には電磁ポンプが装着されているから、燃料を送ってから始動するのが基本。高性能キャブレターを装着しているスポーツモデルは、長めのクランキングで目覚める。最初にキーを一段階ひねると、「カッカッカッカッ」と電磁ポンプの作動音が聞こえるから、数秒ほどガソリンを送り、そこからさらに右にキーを回すとDOHCエンジンは元気に目覚める。冷寒時に始動する時は、チョークレバーを引くのが一般的だ。が、そのさじ加減は千差万別。アクセルペダルを1、2回、深く踏み込み、そしてアクセルペダルを踏まない状態にしてキーをひねり、セルモーターを回して始動を行う。その後は、エンジンが暖まってくるまでアクセルを操作して回転数を調整するとともにチョークレバーを少しずつ戻していくのが一般的だ。慣れるまでは、戻すときの加減とタイミングが難しい。
また、何度もアクセルをあおり、アクセルを踏み込んだままセルモーターを回すと始動するキャブレター仕様のエンジンも存在する。逆にアクセルをあおりすぎると始動が難しくなるエンジンも少なくない。さらに点火プラグやバッテリー、プラグコードによっても始動性は変わってくるから奥が深い。
ちなみに、始動性をたやすくするために考案されたのがセミオートチョークや自動チョーク。煩わしいチョーク操作をなくし、アクセル操作だけで暖気を完了できるようになったのである。
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