■ホンダ起死回生のCR-V誕生まで
最近、新型SUVよりもセダンが発表されると『珍しいな』と思うことがあります。それほどSUVは市民権を得て、セダンの人気がなくなってきているということでしょう。今回、ホンダのミッドサイズSUV「CR-V」が2年ぶりに復活し、日本でも市販されました。それに先駆けて欧州の新型「CR-V」試乗会に参加してきたので、そのインプレをレポートします。
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まずは簡単に「CR-V」誕生までを振り返ってみようと思います。SUVとは「スポーツ・ユーティリティ・ビークル」の略語ですが、その語源はアメリカの西海岸サーファーが作ったと言われています。
父親が使うピックアップトラックにサーフボードを載せて、大きな波を追い求めた若者のライフスタイルがSUVの意味です。つまり、サーフボードというスポーツギアを乗せるためのクルマとして、SUVが定着した歴史があります。
その一方でクライスラーの「チェロキー」もSUVとして普及しました。SUVはトラックにカテゴライズされていた歴史があります。メーカーにとっては「SUV=ライトトラック」と認識していました。
同時期、日本では三菱「パジェロ」がヒットして、RV(レクレーショナル・ビークル)として時代を引っ張っていました。多くのRVはアメリカ同様、商用車ベースで開発されていたので、乗用車のプラットフォームしか持たないホンダは苦しんでいました。
アメリカのSUV、日本のRVブームに乗り遅れたホンダは業績が悪化しました。しかし、当時の川本社長はホンダのRV戦略を打ち立て、日本では「オデッセイ/ステップワゴン/CR-V」というRV三兄弟が誕生します。『クリエイティブ・ムーバー』と名付けられたホンダのRVは、商用車を持っていなかったことを逆手にとって、乗用車ベースで親しみやすいRVとしてヒットします。こうして、1995年に誕生した初代「CR-V」がホンダのSUVの出発点となりました。
それから約23年後、5代目「CR-V」が誕生し、日本でも市販されました。
■トルク感あるエンジンとアウトバーンでも安定したサスペンション
5代目「CR-V」はアメリカやアジアでは昨年から市販されているので、今回は欧州マーケット向けのお披露目となりました。意外だったのが「CR-V」のハイブリッドは今回が初めてだったこと。欧州では先代からディーゼルモデルを販売してきましたが、ホンダが得意とする『SPORT HYBRID i-MMD』が登場しました。今回の試乗会でハンドルを握ったのは1.5リッターのガソリンターボでしたが、インプレッションをレポートしようと思います。
開発者に5代目のコンセプトを聞くと、「5代目は徹底的にこだわり抜いた上質さ」だといいます。たしかに細部までこだわったのは見るとわかります。またボディサイズはあまり大きくしない範囲で見事なパッケージを実現しています。これこそ本田宗一郎さんの『M.M.思想』(マンマキシム、メカミニマム)です。
全長は4605mmに収め、同じボディで2列と3列シートが選べます。2列で使うと後席の足元はゆったりと余裕で過ごせるし、3列でもなんとか我慢できるスペースは確保されていました。
今回の5代目「CR-V」はオフロード性能も向上しています。走り以外では、サイドステップが泥で汚れてもドアがサイドシルの下側まで覆うようにデザインされているので、キャビンが汚れにくい構造になっています。こうした配慮は先代「CR-V」までに蓄積された経験によるところだと思います。
リアゲートは中央部のバンパー下にセンサーが配置され、荷物で両手が塞がっていても足をかざすようにすると開けることが可能です。このあたりはミニバン作りからのフィードバックです。
ガソリンターボにはCVTと6速MTがラインナップ(欧州仕様)され。どちらで乗ってもターボのトルク感は満足できるレベルでした。追い越し時のフル加速ではエンジンとCVTの音が気になるものの、日本ではハイブリッドが主力なので、そっちをチョイスすればいいでしょう。
アウトバーン(ドイツ)も走ってみましたが、そこそこのスピードでも12km/L前後でクルーズできました。ハイブリッドならさらに20%くらいは燃費がよいかもしれません。
乗り味はマイルド。かなり癒やされるので、眠気も誘われるほどです。ハンドルは軽く、サスペンションはゆるめでも、アウトバーンで安定性は損なわれず安心できました。ドライバーをアシストする安全機能も充実し、万が一の衝突安全も世界最高の水準です。
新型「CR-V」は家族思いのSUVですが、ちょっとスポーツ心のある人も満足できるホットな「CR-V」があっても良いでしょう。とりあえずハイブリッドが気になりますが、今年の冬にプロトタイプを雪道でテストした経験では、大本命となりそうです。
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