現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 大人の911乗りは“羽ナシ”で──ポルシェ 911GT3 トゥーリングパッケージを試す

ここから本文です

大人の911乗りは“羽ナシ”で──ポルシェ 911GT3 トゥーリングパッケージを試す

掲載 更新
大人の911乗りは“羽ナシ”で──ポルシェ 911GT3 トゥーリングパッケージを試す

ポルシェ好きが今、現行ラインナップのなかで最も憧れるモデルというと、911GT3だろう。

このチョイスに異論のある方は少ないはずだ。もちろんGT3RSでもいいのだけれど、まずはGT3でさえあれば、現代ポルシェの真髄を味わうことができると思う。

並みのスポーツハッチとは違うぜ──ルノーの新型メガーヌRSに試乗した

端的にいって、加速・ハンドリング・制動=走る・曲がる・停まる、という走りの基本において、現代スポーツカーの頂点を極めている。だから、乗れば文句なしに楽しい。絶対的にも、そして官能的にも、スーパーカー殺しのパフォーマンスを有している。スーパーカー好きのボクがそういうのだから、たぶん間違いない。

そんなわけなので、ボクの欲しいクルマリストにも、ポルシェ911GT3は常連、なのだけれど、ふたつだけ不満があった。ひとつは昔存在した3ペダルMT仕様がなくなっていたこと。けれども、これは最新モデルで復活をはたした。残るもうひとつの不満はというと、アピアランスが派手すぎることだった。

そんなこと、ド派手なスーパーカー好きに言われたくないかもしれない。でも、ボクはポルシェ911をリアルスポーツカーだと認めてはいても、スーパーカーだとは全く思っていない。

毎日使える実用性と、最高レベルのスポーツ性を両立していることが911における唯一無比の魅力だと思っているから、スーパーカーではない。だからこそ、GT3の、あのデカくて立派なリアウィングは、ちょっと興ざめで苦手だったのだ(たとえ空力的に有用だと言われても)。

実は少し前に、理想とも言える“GT3”がデビューしていた。2016年に発表された、911Rだ。ナロー時代の名車を現代に蘇らせたらこうなる、というポルシェお得意の商品企画で、ナカミはGT3RSなのだけれども、リアウィングは無く、しかもマニュアルミッションのみという仕様。

やはりというべきか、世界に同じような想いの人は多かったらしく、瞬く間に人気を博して、一時はオークションで軽く1億円オーバーになったこともあった。特に911が好きだというわけではないボクの感覚が、世界の911乗りとさほどかけ離れたものでないことを確認して、大いに意を強くしたものだった。

もっとも、ポルシェは、転売目的で911Rを購入し、大きな利益を得た人が少なからずいたことに憂慮した。かといって、991台という限定数でリリースした911Rの数を増やすことはできない。

そこでポルシェは、911Rとほとんど同じ仕様のモデルを、911GT3 トゥーリングパッケージとしてカタログに載せることにしたのだった。つまり羽ナシ3ペダル6MTのみ、500psの911。

それはそれで衝撃的なニュースである。911Rを転売目的で買った連中はさぞかし“怒った”ことだろう。そんなことされちゃ持ってるRの価値が下がるじゃないか。けれども、ハネ無しMT仕様のGT3を乗って心底楽しんでみたいと思っていた人には朗報、のはずだったのだが……。

残念ながら、日本市場への正規輸入は見送られた。理由は分からない。欲しい人はいっぱいいるだろうに……。ボクのまわりにだって、数人はすぐに見つかる。

というわけなので、日本法人が輸入して売ってくれないなら、ヨーロッパに行って買ってくるだけだ! といつもこの手の希少未導入モデルをヨーロッパ市場で買い付けては日本で乗り回す友人が、早速、GT3トゥーリングを手に入れて登録もしたというので、味見させてもらうことに。有り難いことに彼はいつも筆者に気前よく鍵を預けてくれる。

某ホテルの地下駐車場に、そいつは佇んでいた。グレーの911GT3トゥーリング。クレヨンと呼ばれる人気色。インテリアはブラック一色。潔い。

500psの4リットル水平対向6気筒エンジンが、コンクリート製の箱のなかで、けたたましく目を覚ました。軽いタッチで決まるシフトレバーを操作し、今となってはそれが重いのか軽いのか見当もついていない左足をゆっくりと上げて、アイドリングのままクラッチを繋ぐ。ススーッと、何ごともなく滑り出した。

段差や坂にはとても気を遣う。最低地上高が低いから。オーナーもすでに一度、がりっとやってしまったらしい。プラスチック製のリップだから交換は簡単、とはいえ気分のいいものじゃない。見かけは911カレラだけど、しっかり車高は下がっているし面構えはGT3そのものだった。

手動の変速機は、素晴らしく小気味良くキマってくれる。4リットルもあるので自然吸気(NA)だと言いつつも、さほど神経質に変速しなくてもいい。何なら3速あたりでオートマチック風に乗っていても、停止さえしなければ平気。けれども、3ペダル自体が貴重な今、むやみに手足を動かしたくなるというのが(前時代の?)クルマ運転好きの人情というものだろう。

コキコキ変速フィールを楽しみながら、郊外へと向かった。GT3であることを忘れさせてくれるほど乗り心地がいい。ときおり路面からのソリッドな反応に、リアルスポーツカーであることを思い出すも、すぐさま何ごともなかったかのような滑らかさを取り戻す。よくできたGTカーだ。

ためしに加速してみた。パドルシフトが恋しくなるほど、スリリングでシャープな吹け上がり。力強さは相変わらずで、ばかっ速。偶然、隣に並んだターボのオーナーが驚いている。

GT3は、もうその出で立ちからしてサーキットに持ち込みたくなるようなマシーンだった。けれども、このトゥーリング、ナカミはほとんどGT3と変わらないというのに、なぜだがそういう気分にはならない。

郊外のちょっとしたワインディングロードを攻めてみるだけで十分、満足できてしまう。これなら仕事の合間のストレス発散にも十分使える。GT3だと、逆にストレスが貯まってしまうというのに。出で立ちだけで、こうも変わるものだろうか。

それはおそらく乗り手の気分の問題だろう。いかにも派手な出で立ちのモデルを選んで、身も心も震え立たせるもよし。大人しいけれど力を秘めたモデルを選んで、こっそり楽しむもよし。大人の911乗りには、後者のほうが断然お似合いだと思うのだが、どうだろう?

こんな記事も読まれています

3年後に「東京-愛知の新道路」全線開通!? あと25kmでぜんぶ繋がる… 新東名の「最後の未完成区間」いつ実現?
3年後に「東京-愛知の新道路」全線開通!? あと25kmでぜんぶ繋がる… 新東名の「最後の未完成区間」いつ実現?
くるまのニュース
ポルシェ、ダ・コスタ失格に不服申し立て。フォーミュラEミサノE-Prixで優勝も車検で一転
ポルシェ、ダ・コスタ失格に不服申し立て。フォーミュラEミサノE-Prixで優勝も車検で一転
motorsport.com 日本版
2024年4月最新! 人気250ccの納車状況は?
2024年4月最新! 人気250ccの納車状況は?
バイクのニュース
最高に楽しい! スズキの最新「軽トラ」が“遊びクルマ”に最適! 5速MT搭載の「スーパーキャリイ Xリミテッド」何がスゴい?
最高に楽しい! スズキの最新「軽トラ」が“遊びクルマ”に最適! 5速MT搭載の「スーパーキャリイ Xリミテッド」何がスゴい?
くるまのニュース
ホンダ「EM1e:」「モトコンパクト」 ホンダとして5年連続で「レッド・ドット賞」を受賞
ホンダ「EM1e:」「モトコンパクト」 ホンダとして5年連続で「レッド・ドット賞」を受賞
バイクのニュース
ピアッジオが創立140周年、記念してペスパの特別仕様を発売---140台限定
ピアッジオが創立140周年、記念してペスパの特別仕様を発売---140台限定
レスポンス
台北で「TAIPEI AMPA」が開幕 台湾の自動車部品・用品が一堂に 20日まで開催
台北で「TAIPEI AMPA」が開幕 台湾の自動車部品・用品が一堂に 20日まで開催
日刊自動車新聞
F1中国GPはマクラーレンにとって『ダメージ最小化』狙いのレースに? 苦戦中低速コーナー待つサーキットに覚悟
F1中国GPはマクラーレンにとって『ダメージ最小化』狙いのレースに? 苦戦中低速コーナー待つサーキットに覚悟
motorsport.com 日本版
フォルクスワーゲン「ID.Buzz」 電動ブリは走りの良さが売り!ミニバンとコマーシャルバンの2本立て
フォルクスワーゲン「ID.Buzz」 電動ブリは走りの良さが売り!ミニバンとコマーシャルバンの2本立て
AutoBild Japan
ホンダがスゴい「新型軽バン」今秋発売! 前後2人乗り「タンデム仕様」が斬新! 価格は6月発表で「N-VAN e:」どんな人が買う?
ホンダがスゴい「新型軽バン」今秋発売! 前後2人乗り「タンデム仕様」が斬新! 価格は6月発表で「N-VAN e:」どんな人が買う?
くるまのニュース
中国製BEVの進出にEUが排除ともとれる動き! 日本メーカーの静観は賢い選択
中国製BEVの進出にEUが排除ともとれる動き! 日本メーカーの静観は賢い選択
WEB CARTOP
639万円のトヨタ「斬新バン」現る!?  フルエアロ&4本出しマフラー仕様! 特別な赤い「スティンガー ハイエース」とは
639万円のトヨタ「斬新バン」現る!? フルエアロ&4本出しマフラー仕様! 特別な赤い「スティンガー ハイエース」とは
くるまのニュース
ヤマハ「YZF-R1"JR Replica"」 65台限定のジョナサン・レイ仕様車登場
ヤマハ「YZF-R1"JR Replica"」 65台限定のジョナサン・レイ仕様車登場
バイクのニュース
[カーオーディオ・プロショップに行こう♪]プロなら、欲しいサウンドを奏でられる「サブウーファーボックス」を作れる!
[カーオーディオ・プロショップに行こう♪]プロなら、欲しいサウンドを奏でられる「サブウーファーボックス」を作れる!
レスポンス
納付期限が切れた自動車税をコンビニで支払うことはできる?
納付期限が切れた自動車税をコンビニで支払うことはできる?
@DIME
納付期限が切れた自動車税をコンビニで支払うことはできる?
納付期限が切れた自動車税をコンビニで支払うことはできる?
@DIME
これ以上ない深化と熟成、そして洗練!「二代目センチュリー」発売!【27年前の今日、こんなことが…】
これ以上ない深化と熟成、そして洗練!「二代目センチュリー」発売!【27年前の今日、こんなことが…】
LE VOLANT CARSMEET WEB
第40話 バイク用ジャケットを買ってみた 【連載マンガ】20代女子イラストレーターがバイク乗りになるまでのお話  
第40話 バイク用ジャケットを買ってみた 【連載マンガ】20代女子イラストレーターがバイク乗りになるまでのお話  
モーサイ

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

677.3698.3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

428.0860.0万円

中古車を検索
ヨーロッパの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

677.3698.3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

428.0860.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村