モータージャーナリスト塩見智が10年ぶりにレースに挑戦するストーリー。なぜもういちど挑戦しようと思ったのか? かつて同レースに参加し、クラッシュした際の記憶を語り、次なる一歩を歩き始めるのであった。REPORT◎塩見智(SHIOMI Satoshi)
その後、ピットへ戻って謝り、まだ戦っている相手チームのピットへ謝罪にいった。最高に落ち込んだ。100%自分が悪いのに、チームメイト、すなわち編集部の皆は責めるようなことは(直接僕に向かってはw)言わなかった。それでよけいに申し訳なくなって、しばらくは編集部の居心地も悪かった。翌年、レース期間中にちょうどあった出張を奪い取るようにその担当となって、海外へ逃亡したことも、今思い出した。変なことばかり記憶に残っている。
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10年前の素人の衝突を延々書いても仕方ないのでこのあたりにするが、その私が再び伝統あるこのレースに出ることになった。しかも今度はもう自分の編集部のチームとかではなく、お客さんとして『Start Your Engines』と『MotorFan.jp』の混成チームで走らせてもらうのだ。貢献はできないだろうが、足を引っ張る度合いを少しでも減らさなければ! しかし筑波サーキットまで足を運んで練習する車両もないし予算もない。それに私も今ではそこそこ忙しいのだ。
そこで“都心の筑波サーキット”で練習することにした。シミュレーターを使って世界中のサーキット走行をバーチャル体験できる東京バーチャルサーキットの門を叩いた。インストラクターはかつてスーパーGTやスーパー耐久で活躍した元レーシングドライバーの砂子塾長。普段は自動車ジャーナリストで、10年ぶりのロードスターレース参戦のため、リハビリ気味のトレーニングをしにきたことを伝えた。
塾長は私に過去のサーキット走行体験などを質問し、それを踏まえてシミュレーターをセッティング。私は本物の911をカットしたシミュレーターに乗り込む。すでにフロントウインドウ(ガラスは外されている)越しの巨大スクリーンに筑波サーキットのピットロードが表示されている。「ギアチェンジはシーケンシャル、引いてアップ、押してダウンです。ロードスターよりもややハイパワーに設定しています。まずはオーバーもアンダーも出ない程度のペースで走行してください」と塾長。私の10年ぶりの筑波アタックが始まった。
(つづく)
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