現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > カスタム不要のスーパーカブ? DOHC4バルブ搭載の名車「CR110カブレーシング」って?

ここから本文です

カスタム不要のスーパーカブ? DOHC4バルブ搭載の名車「CR110カブレーシング」って?

掲載 更新
カスタム不要のスーパーカブ?  DOHC4バルブ搭載の名車「CR110カブレーシング」って?

1958年(昭和33年)8月に登場以来、日本はもちろん世界各国で愛され続けてきたスーパーカブ。かつてカブには、“精密機械”と異名をとる、物凄いレースモデルが存在した。その名は「CR110カブレーシング」。通称シーアール・ヒャクトーだ。REPORT●北秀昭(KITA Hideaki)

 1962年に「世界一速いバイク」を競う世界GP(現在のMotoGP)で、50ccクラスが新設(現在は廃止)された。他メーカーがパワーの出しやすい2サイクルエンジン搭載のマシンを送り込んでくる中、ホンダはDOHC 4バルブ単気筒49.9ccの4サイクルエンジンを積んだワークスマシン「RC110」を投入した。

MotoGPイギリスGP:全クラス決勝が雨で路面コンディションが回復しないため中止。翌日開催はなし

 RC110は1960年より、市販車の「スポーツカブC110」をベースに開発されたマシン。小さな燃焼室に4つの吸排気バルブを備えたRC110のエンジンは「精密機械」と呼ばれた。

 世界GP50ccクラスがスタートして間もない1962年5月、ホンダはモータースポーツへの関心の高まりを背景に、レース初心者にも扱いやすい50ccクラスの市販レーサーを発売。それがCR110カブレーシングだ。


 CR110カブレーシングは、ワークスレーサー「RC110」をベースに開発。世界GPのデビュー戦となった6月のマン島TTレースでは、2ストエンジンを搭載した並みいる強豪を相手に9位に入賞。国内デビューとなる7月の第5回全日本モーターサイクルクラブマンレースでは優勝を果たした。国内外で販売されたCR110カブレーシングは、多くのプライベーターたちに愛用され、数々のレーサーを育てた伝説のマシンだ。

なぜ「“カブ”レーシング」なの?

 CR110カブレーシングの排気量は、名称に示された“110cc”ではなく49.9cc(110はメーカーの開発番号)。またエンジンも、当時のスーパーカブ50に搭載されていたOHV 2バルブではなく、レースで勝つために開発されたDOHC 4バルブを採用。フレームもスーパーカブとはまったくの別物だ。

 CR110カブレーシングに“カブ”の名称が与えられたのは、ホンダの50ccの代名詞=カブだったこと。また、クランクケースがスポーツカブC110の横型エンジンがベースであったこと。以上の2点が大きな理由だ

 CR110カブレーシングは本格的なレーサー仕様が有名だが、保安部品を装着したスクランブラー仕様がすでに先行発売されていた。
 レーサー仕様は8速ミッションを導入し、重量は61kg。一方、先行発売されたスクランブラー仕様は、街中での使いやすさを考慮して5速ミッションを採用。保安部品等の装着により重量は75kgとなっている。


CR110カブレーシングは当時の憧れのマシンだった

 世界GPで活躍するなど、市販後は注目の的だったCR110カブレーシングは若者を中心に、絶大なる人気を獲得した。

 当時の販売価格は17万円。なお、1960年発売のスポーツカブC110は5万8000円。50ccのバイクとしては破格値だったため、多くの若者にとってCR110カブレーシングは“雑誌やサーキットで見るだけの憧れのマシン”だったわけだ。
 CR110カブレーシングには初期型、中期型、後期型が存在するが、生産台数はすべて合わせて、わずか246台(メーカー発表値)。そのため、現存するCR110カブレーシングはごくごくわずか。中古車市場はもちろん、ネットオークションなどでお目にかかることはまずない。


■CR110カブレーシング(レース仕様)の主要諸元 ■
エンジン:空冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ
ボア・ストローク:40.4×39mm 
排気量:49.99cc 
圧縮比:10.3 
キャブレター:京浜RP25-P1 
最高出力:8.5ps/13,500rpm 
最大トルク:0.46kgm/11,500rpm 
最高速度:130km/h以上 
ミッション:8速
全長1725mm×全幅510mm×全高780mm 
軸距:1155mm 
キャスター:26゜ 
タイヤサイズ:前2.00-18 後2.25-18 
車重:61kg
燃料タンク容量:9.5ℓ
オイル容量:0.8ℓ

CR110カブレーシングをさらに進化させた“2気筒”のRC115

 1965年に登場したホンダのワークスマシン、RC115。エンジンはCR110カブレーシングと同じ空冷4ストロークDOHC4バルブだが、単気筒から2気筒に変更された。

 4スト50ccながら、最大出力は13ps/20,000rpm、最高速度は150km/h以上をマークした。このマシンでホンダは初の世界GP50ccタイトルを獲得した。

 1966年に投入された最終型のRC116は、最大出力14ps/21,500rpmを発揮。車重は50kgと2ストロークマシンよりも軽量で、最高速度は175km/h以上の実力を誇った。ミッションは9速を採用。

 空力抵抗を減らすため、マフラーはアップタイプを採用。写真はツインリンクもてぎで行われたデモ走行の模様。50ccだが排気音の迫力は物凄い。半径2m以内に近付こうものなら、鼓膜がじんじんして、しばらく身動きがとれないほどだ。


CR110カブレーシングは「ドリーム50」となって復活

 1962年にデビューして以来、「史上最強のゼロハンレーサー」として多くの人々を魅了したCR110カブレーシング。
 1996年(平成8年)、多くのファンの声を受け、CR110カブレーシングは「ドリーム50」としてついに復活した。

 前後に伸びた細長いタンク、レトロな外観のシングルシートなど、そのフォルムはレーサー仕様のCR110カブレーシングに近い。
 パワーは5.6ps/1万500rpmにダウンされていたため、パワーを求めるユーザーは、社外製ボアアップキットやホンダのレース部門であるHRC製エンジンパーツでチューニングするのが定番だった。


「ドリーム50」をHRCがチューニングした「ドリーム50R」

 ホンダのレース部門であるHRCが手掛けた、上記のドリーム50をチューニングしたレース専用のコンプリートマシン。
市販のドリーム50をベースに、HRC製の「Dream50用レース専用キット」のカムシャフト、バルブスプリング、ピストンへ交換。低フリクションカムチェーン、クランクシャフト、軽量ACジェネレーター、レース専用設計のキャブレターやエアファンネルを採用。最高出力はノーマルの5.6ps/1万500rpmから、7.0ps/13,500rpmにアップされている。ミッションは6速クロスミッションをチョイス。販売価格は49万1400円だった。
 2009年に生産終了。

こんな記事も読まれています

ピレリ、ポルシェ・タイカン用に2種の新しい承認タイヤを開発! P ZERO タイヤでEVの特性に適したELECTのレンジを拡大!
ピレリ、ポルシェ・タイカン用に2種の新しい承認タイヤを開発! P ZERO タイヤでEVの特性に適したELECTのレンジを拡大!
LE VOLANT CARSMEET WEB
人間の心の闇に踏み込んだ衝撃のアンチモラル・ロマンス『マンティコア 怪物』
人間の心の闇に踏み込んだ衝撃のアンチモラル・ロマンス『マンティコア 怪物』
バイクのニュース
雨の混乱の中、ノリスが驚異の走りでポール! ハミルトンが2番手、角田裕毅はSQ1敗退|F1中国GPスプリント予選
雨の混乱の中、ノリスが驚異の走りでポール! ハミルトンが2番手、角田裕毅はSQ1敗退|F1中国GPスプリント予選
motorsport.com 日本版
NEDOと東京都、水素エネルギーで未来を紡ぐラッピングバス運行開始
NEDOと東京都、水素エネルギーで未来を紡ぐラッピングバス運行開始
レスポンス
ニヤケテールがいいじゃないか!スカイラインに対決を挑んだ「二代目コロナ・マークII」【魅惑の自動車カタログ・レミニセンス】第45回
ニヤケテールがいいじゃないか!スカイラインに対決を挑んだ「二代目コロナ・マークII」【魅惑の自動車カタログ・レミニセンス】第45回
LE VOLANT CARSMEET WEB
F1中国GPスプリント予選速報|雨の中ノリス最速! ハミルトン2番手で母国戦の周がSQ3進出。RB角田裕毅は19番手
F1中国GPスプリント予選速報|雨の中ノリス最速! ハミルトン2番手で母国戦の周がSQ3進出。RB角田裕毅は19番手
motorsport.com 日本版
ダイハツ、ムーヴキャンバスとロッキー/ライズHVの出荷停止が解除 現行モデルすべての試験完了
ダイハツ、ムーヴキャンバスとロッキー/ライズHVの出荷停止が解除 現行モデルすべての試験完了
日刊自動車新聞
アクティブの「ラウンド/ストレートオイルクーラーキット」がリニューアルして登場
アクティブの「ラウンド/ストレートオイルクーラーキット」がリニューアルして登場
バイクブロス
日産、2023年度決算見通しを下方修正 販売計画に届かず サプライヤー関連費用も拡大
日産、2023年度決算見通しを下方修正 販売計画に届かず サプライヤー関連費用も拡大
日刊自動車新聞
アウディのEV「Q8 e-tron」、航続距離を118km伸ばすオプションを設定
アウディのEV「Q8 e-tron」、航続距離を118km伸ばすオプションを設定
日刊自動車新聞
【復刻版カタログ】オリジナルとスクエア、2種のフロントマスクで個性を主張した1973年クラシックミニの肖像
【復刻版カタログ】オリジナルとスクエア、2種のフロントマスクで個性を主張した1973年クラシックミニの肖像
カー・アンド・ドライバー
ホンダのスゴい「新型軽バン」発売延期! 「100万円台」なるか 斬新「前後2人乗り」で注目も!  6月に価格発表、どんな声集まる?
ホンダのスゴい「新型軽バン」発売延期! 「100万円台」なるか 斬新「前後2人乗り」で注目も! 6月に価格発表、どんな声集まる?
くるまのニュース
【NISMO、STI、無限、TRD】ワークスチューニング・サーキットデイ2024を開催。マイカーでのサーキット体験とレーシングドライバーからレッスンが受けられる
【NISMO、STI、無限、TRD】ワークスチューニング・サーキットデイ2024を開催。マイカーでのサーキット体験とレーシングドライバーからレッスンが受けられる
driver@web
「開発チームが語るスズキGSX-8Rの実力」GSX-R不在の時代に現れた、サーキットもイケるフルカウルスポーツ
「開発チームが語るスズキGSX-8Rの実力」GSX-R不在の時代に現れた、サーキットもイケるフルカウルスポーツ
モーサイ
「モデリスタ」からランドクルーザー 250用のカスタマイズ アイテムを発表
「モデリスタ」からランドクルーザー 250用のカスタマイズ アイテムを発表
Webモーターマガジン
レクサスが世界最大のデザインイベント「ミラノデザインウィーク2024」に出展! EVコンセプトカー「LF-ZC」にインスパイアされた2作品を展示
レクサスが世界最大のデザインイベント「ミラノデザインウィーク2024」に出展! EVコンセプトカー「LF-ZC」にインスパイアされた2作品を展示
THE EV TIMES
明治通りが「完全分断」へ!? 池袋駅前の再開発で「ブツ切り」になる南北道路、一体何がどうなってしまうのか 実は渋滞緩和の解決策も
明治通りが「完全分断」へ!? 池袋駅前の再開発で「ブツ切り」になる南北道路、一体何がどうなってしまうのか 実は渋滞緩和の解決策も
くるまのニュース
「ギア感」マシマシ! ホンダ「N-VAN」に“アウトドア仕様”登場 内装も自然派!? 従来モデルも進化
「ギア感」マシマシ! ホンダ「N-VAN」に“アウトドア仕様”登場 内装も自然派!? 従来モデルも進化
乗りものニュース

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村