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業界ニュース 2018.7.26

“おもてなし”の究極はこの1台に尽きる──トヨタ新型センチュリー体験記

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こういう仕事をしていても、なかなか間近で見たりふれたりする機会がないのがトヨタ センチュリーである。取材メモをひっくり返してみると、前回センチュリーを取材したのは10年前。ポルシェやランボルギーニ、フェラーリなど、毎月のようにスーパーカーに乗る機会はあっても、センチュリーだけは遠い存在なのだ。

そのセンチュリーが、21年ぶりにフルモデルチェンジした。残念ながらまだ走らせることはできなかったが、お披露目の場で微に入り細を穿って観察した結果をここに記しておきたい。たとえ走らせることができなくても、日本が誇るショーファーカーのディティールは、知的好奇心を刺激してくれたのだ。

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センチュリーのドアを開けることは、秘密の花園の扉を開けることだった。

乗り込む前に、まずは軽く車体の周囲を1周してみる。気がつくのは、「CENTURY」の文字と鳳凰のエンブレムだけが目に入り、車体のどこにも「TOYOTA」の文字とトヨタのエンブレムが見あたらないことだ。

その理由についてトヨタの担当者は言葉を濁したけれど、一説によれば皇室が使う時に、特定の企業名が表に出るのが好ましくないからだという。つまりこのクルマは、“トヨタ センチュリー”ではなく、“ニッポン センチュリー”なのだ。

助手席側の後席ドアの前に立ち、センチュリーに乗り込む。この時、Cピラー(後輪の上部に位置する太い柱)に、自身の姿がはっきりと映っていて驚く。聞けば、後席から降り立ったやんごとない方は、Cピラーに映る自身の姿で身だしなみを整えてから、晩餐会なり会合なりに向かうという。センチュリーのCピラーはまさに「姿見」だ。そのために熟練の職人が30時間もかけて、手作業で鏡面仕上げをおこなうという。

エンジンの姿を拝もうとエンジンフードを開けると、フードの裏側まできれいに仕上げられていて驚く。一分の隙もない。

室内に1歩足を踏み入れると、分厚いフロアカーペットによって床面に段差がなくなっていることに気づく。シートに腰掛けると、ほどよい湯加減の温泉に浸かった時のように、「ふーっ」という声が漏れてしまう。掛け心地がふかふかなのだ。

センチュリーの後席座面は、ソファと同じようにスプリングが仕込まれているのだ。トヨタ車でこのシートの構造を採用するのはセンチュリーだけだという。

後席に座った人が足を伸ばした姿勢をとるためのオットマン機構は、通常の高級車であれば後席シート下から現れる。ところがセンチュリーの場合は、後席の掛け心地が悪化することを避けるため、オットマン機構を助手席シートに装備する。

後席に座ると落ち着いた気分になるのは、深く腰掛けると顔がCピラーに隠れて、外界から遮断されたように感じるからだ。

ここで、Cピラーと後席の窓との位置関係について驚くべき事実を知る。後席に座った人は、出発する時にカーテンを開け、お見送りの方にお辞儀をすることが多いという。このお辞儀のために前屈みになった時に、外から顔がきれいに見えるようにCピラーと後席の窓はデザインされているのだという(!)。

そして、お辞儀をした人の顔が「1枚の絵」として美しくなるように、後席の窓枠はアルミニウムで縁取りされる。センチュリーの後席の窓は、ポートレイトを美しく見せるための額縁なのだ。

後席から降りるためにドアノブを引く。ウッドのように見えたドアノブは実はダイキャスト製で、手のひらにはずっしりとした重量感と冷たい触感が残る。これもセンチュリーの伝統だという。とはいえ、後席のドアは、通常は運転手が開けるものなので、後席の住人がドアノブに手をかけることは滅多にないはずなのではあるが。

運転席を確認すると、シフトセレクターのすぐ下の手が届きやすいところにスイッチ類が並んでいる。これは後席に座った人からのリクエストに間髪入れずに応えるため。後席の方が「オットマンを出したい」「後席をリクライニングしたい」「カーテンを閉じたい」などといったリクエストを伝え終わる前に、運転手の手はスイッチを操作しているのだ。

グローブボックスから整備手帳と取扱説明書を引っ張り出すと、その表紙と製本までフツーのクルマとは大違いの立派なもので、いかにセンチュリーが特別なモデルであるかを知る。

フロントグリルの格子の奥は、七宝文様と呼ばれる凝った意匠になっており、鳳凰のエンブレムの金型は工匠が1カ月半の時間をかけて手で彫ったもの。これほど凝ったつくりだけあって、1日で2台か3台を生産するのがやっとだという。レクサスLSが登場してからセンチュリーの需要は減ったとはいうものの、新型センチュリーの受注は順調で、いまオーダーしても年内に納車できるかどうかだという。

ちなみに、先代モデルは21年間で約1万台が納車され、大都市圏では大企業の社有車として、地方ではオーナー社長の移動車として使われるケースが多いようだ。

残念ながら今回の取材は「静的チェック」に留まるが、いずれ試乗ができる広報車両も用意されるというから、その時には「荒れた路面でも新聞が読めて、スマホのメールも打てる」という快適性を確認したい。

その細部に注ぎ込まれた気配りと匠の技を知ってから、あらためてセンチュリーを眺めると、言いようのないオーラを感じてしまう。21年振りのセンチュリーのモデルチェンジとは、ただの新型への移行ではなく、伊勢神宮で20年に1度おこなわれる「式年遷宮」にも似た出来事であるというのが結論だ。モデルチェンジというよりも、様式美の継承なのだ。

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(GQ JAPAN サトータケシ)

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