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なぜ売れなくなる? ホンダ車人気衰退スパイラルに次期フィットが挑む

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なぜ売れなくなる? ホンダ車人気衰退スパイラルに次期フィットが挑む

 ホンダの車といえば、「初代モデルは画期的なコンセプトで爆発的にヒットするものの、2代目、3代目以降は初代ほど成功せず、周りの車に埋もれてしまう」というジンクスがある。かつて大ヒットしたオデッセイやステップワゴンも、現在では5代目となり、全盛期と比べて販売は大幅に減少している。

 一方、少し状況が違うのが、現在3代目となっているフィット。2001年に登場した初代ほどのインパクトはないものの、2017年も販売トップ10に入るなど販売は堅調だ。だからこそ、次期型はフィットが人気車であり続けられるかどうかの鍵を握る。次のフィットには何が必要なのか。オデッセイやステップワゴンが衰退した理由から探る。

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文:永田恵一/写真:編集部

オデッセイはミニバン嗜好の変化で販売も徐々に低下

 まずオデッセイは、ホンダがバブル崩壊による景気低迷や当時流行っていたSUVやミニバンといったRVへの参入の遅れによりピンチに陥っていた1994年に初代モデルが登場。

 アコードをベースにしたことにより、スタイルや走りが乗用車的だったことやキャビンの広さ、リーズナブルな価格などを理由に大ヒット。モデル末期まで好調な販売をキープし、ホンダを救った1台となった。

 2代目は完全なキープコンセプトで1999年に登場。各部が熟成された実にいいクルマで、モデルサイクルを通して堅調に売れたのだが、初代モデルほどのインパクトはなかった。

 こうした事情もあり、2003年登場の3代目は、「室内空間をキープしながら全高は機械式立体駐車場に入る1550mmに抑える」という、いわば7人がちゃんと乗れるステーションワゴン的なコンセプトで登場。

 このコンセプトは登場当初は大きな支持を集め、2006年あたりまでは堅調に売れたのだが、ミニバンの主流がどのクラスも「全高が高く、ドアはスライドドア」という、いかにもミニバンらしい方向にシフトしつつあったこともあり、モデル末期には存在感が薄れてしまった。

現行型(左)と4代目のオデッセイ(右)。販売台数は2代目登場直後の2001年に12万台超を売り上げていたが、4代目登場直後の2009年は2万3027台、直近の2017年は2万830台と徐々に台数が減っている

 4代目モデルは2008年に登場。新しさはなかったものの、その代わり車自体はドイツ車のように全体的な精度が高いいわゆる「いいクルマ」であった。

 しかし、3代目モデルのところで書いたミニバンに求められる方向性の変化もあり、地味な存在となってしまった。

 そして、2013年登場の現行型となる5代目モデルは3代目、4代目モデルのコンセプトに見切りをつけ、4代目までのオデッセイと絶版となったエリシオンをミックスしたようなスライドドアを持つミニバンに移行。

 2016年にハイブリッドを追加した効果もあり、現在もまずまずの販売をキープしている。

大ヒット、ステップワゴンも競合車台頭で現在は押され気味

 ステップワゴンも成り立ちとしてはオデッセイに似たところもある「乗用車ベースのミドルハイトミニバン」として1996年に登場。

 同クラスでは初のエンジン横置きのFFミニバンで、オデッセイと同様に室内の広さやリーズナブルな価格を理由に大人気を集め、ホンダ復活に貢献。モデル末期まで好調な販売をキープした。

 2代目モデルは、2代目オデッセイのようなキープコンセプトで2001年に登場。

 同時期のノア&ヴォクシー、セレナが両側スライドドアだったのに対し、ステップワゴンはスライドドアが左側だけだった(コストや子どもに車道側への飛び出しを防ぐという安全面などの理由はあったにせよ)のが原因か、初代モデルほどは売れず、ノア&ヴォクシーにミドルハイトミニバンベストセラーの座を明け渡してしまった。

 2代目モデルの停滞もあり、2005年登場の3代目モデルはホンダミニバンの文字通り「土台」である低床・低重心プラットホームの採用により、広い室内空間を確保しながら全高は75mm下げるという攻めたミドルハイトミニバンとなった。

 3代目モデルは掃除のしやすいフローリングフロアの採用というトピックもあり、乗れば低さを生かしたピタっと走るいい車だった。

 だが、今度は全高の低さがユーザーに「ハイトミニバンらしさに欠ける」と評価されてしまったのか、販売台数で同時期にフルモデルチェンジされたセレナや2007年にフルモデルチェンジされたノア&ヴォクシーに勝てなかった。

ステップワゴンは2代目にスイッチした2001年には年間11万台超を販売したが、2017年の販売台数は年間4万6457台。ライバルのノア3兄弟、セレナに対して劣勢が続く

 2009年登場の4代目モデルは3代目モデルの反省もあり、全高を若干高めた堅実なミドルハイトミニバンとして登場。

 登場直後は好調に売れたのだが、セレナやノア&ヴォクシーがフルモデルチェンジし、相対的にモデルが古くなると販売は落ち込んでしまった。

 そして、2015年に登場した5代目の現行型は、出来のいい1.5Lダウンサイジングを搭載する意欲作なのだが、地味なスタイルも原因で登場当初から販売ではセレナやノア&ヴォクシーに及ばず。

 2017年のマイナーチェンジでハイブリッドを追加し、スパーダのスタイルを押し出しの強いものとなるなどのテコ入れを行い、販売は復調傾向となっている。

ジンクス打破の鍵握るフィット

現行型の3代目(左)と2代目(右)フィット。初代は2002年に年間25万台超を、3代目登場直後の2014年には再び年間20万台超を販売。2017年は9万7939台と減少したが、ヒット車だけに「次」がジンクス打破の鍵を握る

 このようなホンダ車のジンクスを思うと、ちょっと心配なのが来年(2019年)登場が有力視される4代目となる次期フィットである。

 2001年登場の初代フィットは、燃料タンクを車体中央に置く「センタータンクレイアウト」を核に、「これ1台で十分」といえる広い室内や明るさを感じる内外装の雰囲気、燃費の良さ、コンパクトカーの相場を変えてしまったほどの価格の安さなどを理由に大ヒット。

 登場翌年の2002年にはカローラの34年連続年間ベストセラーを阻止するほどだった。

 2代目は2007年、現行型となる3代目モデルは2013年にそれぞれ初代モデルからのキープコンセプトで登場。

 2代目モデルはモデルサイクル中盤の2010年にハイブリッドを追加したことも強い後押しとなりモデル末期まで好調な販売をキープしたが、3代目モデルは十分に売れているにはせよ、ここ2年ほど「それまでほどは売れていない」という感も否めない。

 特にスタンダードな1.3Lガソリンに乗ると、「これ以上のクルマは不要」と本当に思ってしまうほどよくできた現行フィットの販売が足踏み状態に感じる理由としては、

【1】3世代連続のキープコンセプトに飽きを感じているユーザーの存在
【2】フリードのような小型ミニバンやヴェゼルのような小型SUV、N-BOXのような軽自動車といった“比較的フィットに近い価格帯の他ジャンル”の競争力も強くなっている

といった点が浮かぶ。【1】に関しては、個人的にはトヨタ車とは対照的にホンダ車のコンセプトが歴代一貫しないことも疑問に思う面もある(単純にキープコンセプトならいい訳でも、変わることがいけないことでもないにせよ)。

 フィットの「1台で満足できるコンパクトカー」というコンセプトは素晴らしいだけに、このコンセプトを変えるのは難しいだろうし、無理に変える必要もないと思う。

新型には「フィットでなければならない何か」が必要

2019年に登場予定の次期型フィット(予想CG)。らしさを体現しつつ、新しさと他車にない魅力を打ち出せるか? 

 ただ、ホンダ社内で似た値段で買えるN-BOXのスバ抜けた完成度の高さや広さを見てしまうと、高速道路での動力性能の余裕などフィットの良さはあるにせよ、N-BOXの方がダッシュボードの質感が優れるなど、「維持費の安さなどを考えたらN-BOXの方がいいかな」と思ってしまうのも事実だ。

 こうしたことを考えると、キープコンセプトで登場する可能性が高い次期フィットには、これまでと同じ方向でのグレードアップに加えて、ダウンサイザー向けの今まで以上に全体的な質感の高いラグジュアリーなグレードやタイプRを含めたスポーツモデル、最低地上高を上げたクロスオーバーといったバリエーションの拡充など、「フィットでなければならない何か」が必要なのではないだろうか。

 ……という筆者が思いつくようなことは、優秀なフィットの開発陣はすでに考えているに違いない。

 こんなことを考えていると、やや追い詰められた感もあるフィットが次期モデルで、どんな風に「自分の殻」を破ってくるか、ちょっと楽しみにもなってきた。

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