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業界ニュース 2018.6.28

自動運転技術に見る「技術者の常識、世間の非常識」【岩貞るみこの人道車医】

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◆技術者の常識、世間の非常識

突然ですが、エレベータの扉を操作する開閉マーク、特に、ふたつの△で開閉を表示してあるスイッチを、反対に押してしまった経験はないでしょうか?

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私は、ある。しかも、しょっちゅうである。同じオフィスビルで仕事をしている人なら、何度も使ううちにスイッチの配置が、左右や上下のどちらにあるという情報がインプットされるので間違えにくいのかもしれないけれど、仕事がら、ほぼ毎回、違うエレベータに乗る身としては、えーっと、どっちだっけ?と、いつも△の向きを見て悩むのである。

こうしたピクトグラム(マーク)は考え抜かれて採用されているため、間違える私はよほどのボケなんだろうな……と落ち込む一方、しかし、よくよく思い出してみると、エレベータに駆け込んで乗ろうとした瞬間、すでに乗っている最前列の人が私に気づいて手を動かし、でもその瞬間、「あ!」と慌てた表情になって扉が閉まる状況(=つまり押し間違えている)に何度も遭遇している。ということは、間違えるのは私だけではないということだ。

そう、この△マークは、わかりにくいのである。エレベータ業界におかれましては、なんとか改善していただきたい。もっとも、「開」「閉」のスイッチとか、△マークといっしょに、「ひらく」「とじる」と併記されているパターンもあるものの、外国人にはわからないという声もあるから、むずかしいところなんだろうけれど。

◆技術をどう使わせるか、どう伝えるか

技術をどう使わせるか。いかに技術が進化しようとも、最終的に人が使う以上は、最後はこうしたピクトグラムをはじめとするデザイン力が問われる。工業デザイナーと呼ばれる人たちは、機能をデザインでいかに使いやすくし、直観的に「ここを握る」「こちら向きに動かす」を表現する使命も担っている。

さてここで、自動運転である。

現在、道路交通法により(世界のほとんどの国のベースはジュネーブ条約とウィーン条約なので動きはほぼ同じ)、運転するときは常にドライバーに周囲監視義務があるとされ、市販されるクルマは、レベル2の被害軽減ブレーキやレーンキープアシストなどの自動運転技術が採用されるにとどまっている。しかし「常にドライバーに周囲の監視義務がある」となると、メールを読んだり眠ったりという、セカンドアクティビティが許されない。

自動運転なら、少しくらい周囲の監視義務から解放されてスマホをいじりたい。

そう思うのは人間としては自然なことだ。むしろ、セカンドアクティビティができないのなら自動運転車を購入しようという意欲もわきにくい。それに、高度に制御されるレベル2のクルマを勘違いして、「ほおら、クルマがちゃんと走ってくれるから大丈夫。スマホでメールの返信しちゃおう」という油断行動に出て事故を起こす危険が高まる。実際、そうした行動により、2016年に北米でテスラが死亡事故を起こしたことは周知のとおりである(テスラは単なるレベル2のクルマ)。

だったら、道交法はさておき、いっそのことレベル3にして、クルマが責任をもって周囲監視も行ったほうが安全ではないか? という声が高まっている。とはいえ、技術はまだ完全ではなく、雪や強い西日で路面のラインが読み取れなくなるなどすれば、システムは対応できなくなる。そんなときは、走行中でも人に運転の権限をもどすことになるのだが、ここで問題。どのくらい前に、どう伝えたら、人はしっかりと安全運転できるレベルでシステムから引き継ぐことができるのだろうか?

◆「閉めちゃってごめんね」では済まない

世界が技術的にレベル3を目指すなか、ここは喧々諤々の議論が起こっている。寝ていたら目が覚めて状況を認識するのに数分かかるとか、いや、8秒もあれば十分だろうとか、運転経験レベルや年齢によって異なる、とか、航空機のオートパイロットと操縦士の関係を例に、クルマの機能を熟知させ、なぜシステムが人に運転をもどそうとしているのか理解させる必要があるとか(航空機の操縦士は、それゆえ機種ごとに免許がある)。

まだ議論は白熱中だけれど、キーになるのはシステムが「もう無理です、運転代わって!」とギブアップしたときの「伝え方」だ。冒頭にも書いたとおり、いかにいい「引継ぎ技術」ができたとしても「伝え方」が悪ければ使い物にならない。エレベータのスイッチすら間違える庶民の私が恐れているのは、技術者の人たちの自己中心的な解釈である。「このくらいなら常識的に大丈夫」……って、いえ、それ技術者の常識ですから。庶民は違いますから! 

エレベータの△マークは、「閉めちゃってごめんね」で済むけれど、自動運転はそうはいかない。100人、いや、1万人にひとりでも誤使用するようなデザインではダメなのである。自動運転の技術開発も大切だけど、自動運転だからこそ人間研究はもっと大切なような気がする。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家

イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。9月よりコラム『岩貞るみこの人道車医』を連載。

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(レスポンス 岩貞るみこ)

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