拙者のいわゆるライフスタイルなど、こういった場でわざわざ書くまでもないほど地味で慎ましいものである。
毎週月曜日の夜こそ、東京ヤクルトスワローズの試合がないため近隣の飲食店にて外食をしてこますが、行くのは激安モツ焼き屋であり、頼む品も1本60円のハツや1杯280円の甲類焼酎または二級清酒などばかりである。
カネはなくとも「元・世界最高峰」が手に入る素晴らしき世界があるのを知っているか
そして月曜日以外は、日中は自作のお弁当を食べながらパチパチとLet’s noteのキーを叩き、日が暮れると駅前のシュペールマルシェで購入した1袋398円の枝豆を茹で、二級酒とともにいただく。その繰り返しである。
それなのに、ゼニがない。これはいったいどういうことなのか?
普通な毎日の中の「ちょっとした贅沢」がガンなのか?
「これはいったいどういうことなのか?」と白々しく言ったが、実は理由は自分でもよくわかっている。
慎ましく暮らしているのは事実なのだが、そのなかでも意外と贅沢をしているからだ。
著述業者としてのキャラ作りのため、拙者は「下町の貧乏若隠居」みたいな生活描写を原稿内にちょくちょく入れ込んでいる。イメージとしては、ボロい着流し姿の文豪ワナビーで、古い長屋に住んでいて、いつも腹をすかせながら七輪で激安ししゃも1尾だけを焼いて食っている……みたいな人物像だ。
その人物像の大まかな方向性に嘘はないのだが、細部には多分のフィクションを含んでいる。
そもそも住んでいるのは下町ではなく山の手だし、モツ焼き屋にも確かに行くが、行くのは地場のモツ焼き屋のなかでは松竹梅の松に近いグレードの店である。そしてそこで飲む清酒も、実は二級ではなく特級または一級だ。ちなみにシュペールマルシェで398円の枝豆と598円の枝豆が並んでいたならば、迷うことなく598円のほうを買うだろう。
つまり「銀座でドン・ペリニヨンを浴びるほど飲んだ後、シラフの部下に運転させるロールスロイス・ファントムにて松濤の億ションに帰宅する(するとそこには元キャンギャルの妻がいる)」みたいな生活はしておらず、したいとも思わないが、まぁ普通程度のシンプルな生活を送り、そのなかでちょこちょこと「少しだけいい物」を選ぶ日々を過ごしている……というのが事実に近い。
そしてその「少しだけいい物を選ぶ」というのが、おそらくは拙者がゼニをまるで持っていない大きな理由のひとつなのだ。
安いモノだけを選べばゼニも貯まるのだろうが
ゼニは、できることなら手元にたくさんあったほうが良い。孫正義さんや前澤友作さんほどの超絶巨富はいらぬが、まぁ少なめに見ても1億円ぐらいは駅前の銀行や信用金庫などに置いておくのが大人の男の務めだろう。
そのためには、これまで何も考えずに行ってきた「少しだけいい物を選ぶ」という行動を完全に廃止し、原稿中の設定どおりに60円のハツだけを10本食うとか、二級清酒を飲みながらなわ跳びの二重跳びを15回ぐらい連続で行い、なるべく安く酔っ払うようにする……などの創意工夫が必要なのかもしれない。
だが、そうすると確かに多少のゼニは貯まるのだろうが、今度はQOLすなわちクオリティ・オブ・ライフが著しく悪化するという問題が生じてくる。そこまでする人生、つまり二級酒を飲みながら二重跳びをする人生に、果たして生きる意味はあるのか? という大問題である。
クルマに関してもそれは同様だ。
拙者は今、現行型のスバルXV なるSUVに乗っており、これはお世辞にも「高級車」とは呼べないクルマだ。無論、かなり良いクルマではあるのだが、あくまで大衆的なモデルである。
だが「ゼニがないやつに総額約300万円のXV新車は分不相応である!」という見方もあるだろう。
それは確かにそのとおりで、あまり詳しくないのだが、国産リッターカーとか軽自動車とかあたりに乗り替えたほうが、もしかしたら良いのかもしれない。そうすれば、クルマ関係にかかるゼニはずいぶんと浮くはずだ。
だがしかし、拙者はその転向がもたらすQOLの著しい低下に耐えることができない。「そんなのに乗るぐらいならクルマなんて要らん! 歩く!」と思ってしまうのだ。
そのため、大したゼニもないのに新車のXVや、あるいは中古のポーシェ911、ランチア デルタHFインテグラーレなどに乗っているのである。これはもう仕方がないのだ。そして、日々少しずつゼニを失っていくのである。
だからこそ新型ジムニーに期待したい!
だがそんな拙者の前に、ひと筋の光明が現れた。
7月に発売される新型スズキ ジムニーである。
まだ乗ってないし、つーか現物も見ていないのだが、なんと美しく、なんと洒落たクルマであろうか! スバルXVも拙者としてはかなり洒落たクルマだと思っているのだが、新型ジムニーはそれに勝るとも劣らずの伊達っぷりである。
車両価格は6月下旬時点では不明だが、どうせお安いのだろう(普通車と比べて)。そしてもちろん、税金や部品代などもお安い。
これまで、拙者にとって分相応な価格の国産車は、XV以外はどうしてもそのデザイン的なダサさに我慢がならず、選択肢には入ってこなかった。だが新型ジムニーならぜんぜん大丈夫である。ていうか、むしろウェルカムだ。
や、それより何より「最近のスズキ車」こそが、もしかしたら拙者のようなタイプの自動車愛好家にとっての希望の星なのかもしれない。
新型ジムニーは素晴らしいが、考えてみれば現行型のスイスポ(スイフト スポーツ)だってかなりのモノであり、イグニスも悪くないじゃないか。
スズキのこの傾向(デザインもクルマ自体もかなりいい感じであること)が今後も続くのであれば、拙者は「輸入中古車評論家」の看板を降ろし、いっそ「スズキ車評論家」になっても良いとすら考えている。
無論、それになるまでには短めに見積もっても10年はかかる大事業なのだが。
[ライター/伊達軍曹]
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