車検の有効期限が約半年くらい残っているお客が好まれる傾向に
その昔、セールスマンが新車をすぐ買うかどうかの見極めで重要視していたのが車検有効期間満了まで残りがどれぐらいあるかであった。まだ車検シール(車検標章)が大きくて、カラーバリエーションがいくつか用意されていたころには、ディーラーの駐車場にお客がクルマを乗り付けてきたときに、誘導しながらさりげなく車検シールを見て車検有効期間が近いかどうかを確認し(ローテーションで年ごとに色が異なる)、すぐ買ってくれそうかどうかの判断をしていた。今でも駐車場までセールスマンがきて、車両誘導してくれているときは、できるセールスマンほど、さりげなく乗ってきたクルマをチェックしていると考えていいだろう。
その当時の、超有望購入見込み客(Aホット客などと呼んでいる)は、車検切れまで1もしくは2カ月ほどしか残っていない下取り予定車で来たお客であった。車検切れまであとわずかという物理的理由もあるので、条件(値引きなど)が折り合えば、即受注となる可能性はかなり高い。そのため下手な駆け引きをせずともセールスマンが好条件を提示してくるので、意図的にタイミングを合わせて商談を仕掛けてくるお客も目立っていた。
しかし時代は移り変わり、いまでは車検切れまで1もしくは2カ月しか残っていない下取り予定車に乗ってきたお客は逆にあまり歓迎されていないようである。
「昨今では納車まで2カ月や3カ月かかるケースはざらです。年度末決算期などのかなり特別な事情がなければ、在庫車があった場合でもお客さまとの書類回収などで時間がかかるような事態も想定できるので、商談時には最短でも1カ月はかかるとご案内させていただいているようです(結果的に若干早まるケースもある)」とは事情通氏の話。
そのようなこともあり、今では最低でも車検有効期間切れまで半年ほど残っている下取り予定車で乗り付けたお客のほうが販売現場では歓迎されるとのことである。
納期遅延が発生すれば、下取り予定車をその分乗り続けなければならないので、車検有効期間切れがすぐやってくる下取り車は継続車検を受けなければならない。新車を販売したディーラーが格安で車検を通したり、車検を通さずに下取り車だけ回収して代車などを貸すケースなど、その対応はさまざまだが、ディーラーだけでなく、新車を購入したお客にも面倒がかかってくることになる。セールスマンはそれを嫌がって、車検有効期間に多少余裕のある下取り予定車に乗っているお客をAホット客としているようだ。
逆に継続車検を受けた直後の愛車を下取りに出せば、下取り査定額が良くなるし、かえって買い得感の高い新車購入になるのではないかと考えるひともいるだろう。もちろん車検有効期間に応じて下取り査定では加点されて査定額はアップするのだが、それ以上、つまり付加価値としては高い評価されないようである。今どきは中古車販売に際しては、購入時に車検を取り直すケース(いわゆる車検整備付きというケース)が好まれる傾向もあるので、昔ほどは“車検残たっぷり”というのはありがたがられなくなっているようだ。
確かに継続車検を受けるタイミングというのは、代替えを決意するひとつの時期であることには変わりない。あるディーラーでは初回車検(初度登録から3年間有効)を迎える直前、33カ月ぐらいのタイミングであくまで任意となるが“33カ月点検”として、メンテナンスパック(一定期間の任意で受けるものや、法定点検などにかかる費用を一括して前払いすることで割安になるもの)メニューに含んでいるとのこと。
しかし、この33カ月点検は、車検有効期間切れのタイミングでの新車への代替えを進めるきっかけ作りのために設けられているようなのである。
今どきは新車への代替えを行わずに、そのまま継続車検を受け続けて10年以上乗り続けることも珍しいことではなくなっている。昔より「車検が近いですね」というセールストークは、新車への代替え促進のための“おまじない”の効果は薄くなっているようだ。
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