■クルマの商品開発は海外が中心、ハイブリッドだけは日本が中心
2017年度の国内販売統計によると、トヨタは販売総数の約40%、ホンダは約28%(ただし小型/普通車に限ると約50%)をハイブリッドが占めました。日本はハイブリッド大国といえそうです。日本のユーザーはなぜそこまでハイブリッドを欲しがるのでしょうか。
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今の日本車メーカーは、海外中心の商品(クルマ)を開発していますが、ハイブリッドは日本国内の販売比率が高いです。例えばトヨタの場合、2017年度(2017年4月から2018年3月)の世界生産台数に占める国内販売比率は18%でしたが、ハイブリッド車に限ると40%前後に高まります。
ホンダは4輪車全体で見ると国内比率は14%と低いですが、ハイブリッドは70%以上に達します。商品開発も海外向けが中心となっていますが、ハイブリッドについては今でも日本が重要な市場なのがわかります。
ハイブリッドは環境/燃費性能が優れていますが、価格も高いです。ノーマルエンジンとの価格差を燃料代の節約で取り戻すには、長い距離を走る必要があります。そのような人達が大勢いて、ハイブリッドを買うのでしょうか。トヨタ系列の販売店でセールスマンに尋ねました。
「ハイブリッドを購入するお客様の中には、『一度はハイブリッドに乗りたい』と考えている方も多いです。ハイブリッドはノーマルエンジンに比べて価格が高いですが、今はアクアなど200万円以下のハイブリッドも増えています。サイズの小さな車種を選べば、あまり価格を高めずにハイブリッドを買えます。そしてハイブリッドはエンジンノイズが小さいために、一度味わうと普通のエンジン車には戻れません」といいます。
今はクルマを買い替えるサイクルが7~9年に伸びたと言われてます。ハイブリッドが本格的な普及を開始したのは、2009年に発売された先代プリウス以降なので、今まさにハイブリッドを選択可能になった人も多く、「一度はハイブリッドカーに乗りたい」ニーズが根強いようです。
前出のセールスマンによると「アクアやプリウスはノーマルエンジンを用意しないハイブリッド専用車だから、環境性能の優れたクルマに乗っていることを周囲の人達にアピールできます。この選択理由は法人のお客様にも多いです。環境意識の高い企業姿勢を表現できるからです」とのことです。
今ではハイブリッドが一種のブランドになり、長い距離を走るとトクをするといった損得勘定だけでなく、「ハイブリッドであること」にも価値が生じているようです。
■経済的な損得勘定で比較するHVとノーマルエンジン
しかしその一方で、経済的な損得勘定も重要でしょう。「どの程度の距離を走れば、ハイブリッドでトクをするのか」も考えてみましょう。
例えば、セレナを買う時は、ベーシックなS(スマートシンプル)ハイブリッドと、本格的なハイブリッドとなるe-POWERで、選択に迷うことがあると思います。
セレナe-POWERハイウェイスターV(340万4160円)と、ハイウェイスターVセレクション(293万4360円)の価格差は46万9800円です。e-POWERでは2列目がセパレートタイプのキャプテンシートになるなど、機能にも差があります。エコカー減税はe-POWERが免税だから、納める税額で約8万円の差が生じます。そうなると最終的な実質差額は39万円です。
そして実用燃費がJC08モードの85%、レギュラーガソリン価格が1リットル当たり140円で計算すると(今は150円近くまで高騰していますが過去の平均で140円とします)、e-POWERの1km当たりの走行単価は6.3円です。Sハイブリッドは9.9円だから、1km当たり3.6円の差が生じます。
そうなると10万8000kmを走れば、e-POWERとSハイブリッドの価格差を燃料代の差額で取り戻せます。仮に1年間に1万5000kmを走れば、7年少々です。逆に1年間に7000kmの走行では15年を要します。またガソリンの価格が高まると、取り戻せる距離は短くなります。
全般的な傾向として、大排気量の高価格車ほど、取り戻せる距離が短いです。価格が500万円でエコカー減税が免税であれば、17万円の節税が可能になり、大排気量車にはハイブリッドの燃費数値が、ノーマルエンジンを積んだグレードの約2倍に達する車種もあるからです。10万km以下で取り戻せる場合もあります。
逆に小排気量の低価格車は、取り戻せる距離が長くなります。ノーマルエンジンも燃費が優れ、1.2~1.5リッタークラスでは、ハイブリッドの燃費数値が2倍になることはありません。そしてハイブリッドには、駆動用モーター/駆動用電池/制御機能が必ず搭載され、ノーマルエンジンとの価格差を20万円以下に抑えることは現在では難しいです。その結果、価格差を燃料代の差額で取り戻せる距離も15万km前後に達します。
概算的な目安をいえば、1年間に1万5000km以上を走ると、ハイブリッドを選ぶ経済的なメリットが強まります。それ以下のユーザーは、ハイブリッドを選んだことで損失が生じることも考えられるため、セレナで行ったような損得勘定の計算をすると良いでしょう。
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