現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > マツダのロータリーエンジン復活は不可能? どうしても乗り越えられない壁とは

ここから本文です

マツダのロータリーエンジン復活は不可能? どうしても乗り越えられない壁とは

掲載 更新
マツダのロータリーエンジン復活は不可能? どうしても乗り越えられない壁とは

 細長い燃焼室形状による熱効率の厳しさ

 マツダという自動車メーカーにとって、ロータリーエンジンは至宝です。なにしろ世界中の自動車メーカーが注目し、チャレンジしたにもかかわらず、世界に先駆けて量産化できたのはマツダ(当時は東洋工業)だったのですから。解決するのが困難だったアペックスシールの共振をさまざまなアイディアとトライによって克服し、マツダの基礎技術力の高さを世界中にアピールしました。

オートマ車は「D」レンジのまま信号待ちをしてもクルマの負担にならないのか

 三角おにぎりのような形をしたローターが、楕円形(正確には中央部が絞られている)の中で回転運動するのがロータリーエンジンです。実際にはロータリーエンジンと呼ばれるものはいくつもあり、マツダが生産してきたのは発明者の名前から、ヴァンケル・ロータリーと呼びます。

 レシプロエンジンでは、ピストンの上下運動を回転運動へと変換しているので、どうしても上下の振動が出やすくなります。しかし、そもそもが回転運動であるヴァンケル・ロータリーでは振動が極めて小さく、まだプロトタイプの段階から未来のエンジンという評価を得ていたのです。

 欠点もあります。それは低回転域での燃焼が安定しないので、トルクがなく、排出ガスに未燃ガス(HC)が多く含まれていました。低回転のトルクがないので、エンジンはどうしても高めの回転で使うことになり、燃費も悪くなります。

 そして排出ガス規制が本格化し、マツダはサーマルリアクターという再燃焼装置によって未燃ガスの対策をしたことで、さらに燃費が悪化してしまいました。排出ガスを再燃焼させるためには燃料成分が必要であり、それは出力を生み出すことはないので、ただただ燃費が悪化してしまったのです。ロータリー=燃費極悪というイメージは、70年代の半ば以降に確立してしまいました。

 ロータリー進化の歴史は、そうした欠点を小さくしていったストーリーでした。その集大成ともいえるのがRX-8に搭載されていた13B-MSP、いわゆるRENESISです。そして、究極の進化といえるのが、2007年の東京モーターショーに参考出品された16Xです。偏心量を増やした、レシプロエンジンでいえばロングストローク化したような、新しいディメンションを採用しています。直噴を採用することで、より精密な燃料噴射を可能にしています。

 ロータリー搭載をイメージさせるコンセプトカーも登場していますね。いよいよロータリーエンジンの復活でしょうか? 時代はハイブリッドシステムが手軽になっているので、低回転での燃焼の安定性と効率に欠けるロータリーエンジンにとっては、モーターのアシストはとても有効です。きっと燃費も改善できることでしょう。しかし、その燃費が普通のレシプロエンジン並みになるのは、ちょっと考えにくいことです。なぜなら、燃焼室の形状が悪いので、効率が高くならないからですね。

 エンジンの燃焼は、高温高圧です。その熱と圧力を回転に変えるわけですが、エンジン自体は冷却されていますね。冷えていたほうが空気を吸い込みやすいし、そもそもエンジンオイルの温度にも限界があります。その結果としてエンジンが、燃焼時の熱を奪うことになってしまいます。

 それを最小にするには、燃焼室の表面積をできるだけ小さくしたいんです。燃焼室の容積に対する表面積の割合をSV比と呼びますが、最小になるのは半円球です。OHCが主流となってきた60年代から70年代は、半円球型燃焼室が増えていきました。というよりも、半円球型燃焼室を作るためにOHCが必要だった、というのが順当でしょう。しかしその後は吸排気効率と、燃焼状態の良好化のために、三角屋根のようなペントルーフ型燃焼室が主流になっています。

 さてロータリーエンジンですが、燃焼室はバナナ型です。これは極めてSV比が大きい形状になります。また燃焼室がズルズルとエンジンが冷えている方向へ移動してしまうのも問題です。だから熱が逃げる量が増えてしまうんですね。この問題をクリアする、現実的な手法はありません。まだ概念しか存在しない特殊な燃焼方法では、逃げる熱を小さくすることが可能ですが、それはレシプロエンジンの燃焼室形状のほうが適用しやすいのも事実です。

 そういう意味では、今後も強化され続けていく燃費規制や、排出ガス規制を考えると、ロータリーエンジンには辛い状況に違いありません。ただし、低振動、シンプルな構造、搭載方向が自在、といったようなアドバンテージはあります。それがハイブリッドシステムと組み合わされたり、電気自動車と組み合わされたりする時に、大きな価値につながるのかもしれません。

関連タグ

こんな記事も読まれています

カワサキ KLX230用「フロントスプロケット(12T)」が力造から登場!
カワサキ KLX230用「フロントスプロケット(12T)」が力造から登場!
バイクブロス
サージェント、事前警告ナシの不正追い抜きペナルティに疑問符「順位を戻せと言ってくれたらよかったのに」
サージェント、事前警告ナシの不正追い抜きペナルティに疑問符「順位を戻せと言ってくれたらよかったのに」
motorsport.com 日本版
動画を送ろう! トーヨータイヤが「すべてのトラック・バス事業に携わる人たちに感謝を伝えるプロジェクト2024」を実施
動画を送ろう! トーヨータイヤが「すべてのトラック・バス事業に携わる人たちに感謝を伝えるプロジェクト2024」を実施
乗りものニュース
【MotoGP】苦境が好転しないホンダ、チーム側も予想外? 「理論的には良い改善をしているはずなのに」と困惑
【MotoGP】苦境が好転しないホンダ、チーム側も予想外? 「理論的には良い改善をしているはずなのに」と困惑
motorsport.com 日本版
カーボンニュートラル実現を目指して!ホンダが中国における次世代EV「烨シリーズ」を発表
カーボンニュートラル実現を目指して!ホンダが中国における次世代EV「烨シリーズ」を発表
バイクのニュース
ポルシェ『カイエンGTS』改良新型、日本での予約を開始---価格は1868万から
ポルシェ『カイエンGTS』改良新型、日本での予約を開始---価格は1868万から
レスポンス
“信じられない展開”を制したオジエの逆転勝利。ラトバラ代表も「8回も世界王者に輝いた理由がよく分かる」と感嘆
“信じられない展開”を制したオジエの逆転勝利。ラトバラ代表も「8回も世界王者に輝いた理由がよく分かる」と感嘆
AUTOSPORT web
ハイエース ステップワゴン ジャスティ アコード……今や当たり前になったクルマ界の技術11個の「元祖」たち
ハイエース ステップワゴン ジャスティ アコード……今や当たり前になったクルマ界の技術11個の「元祖」たち
ベストカーWeb
マツダ「ボンゴ」をDIYで親子3人で楽しむキャンプ仕様に! ボディのイラストは父と愛娘との合作でした
マツダ「ボンゴ」をDIYで親子3人で楽しむキャンプ仕様に! ボディのイラストは父と愛娘との合作でした
Auto Messe Web
ホンダ WR-Vの受注が好調! 発売後1カ月で計画の4倍以上となる好調な立ち上がり
ホンダ WR-Vの受注が好調! 発売後1カ月で計画の4倍以上となる好調な立ち上がり
Webモーターマガジン
ホンダが“豪華内装”の新型「軽バン」発表! 前代未聞の「めちゃオシャ」仕様がスゴい! 上質「ブラウン内装」採用した新型「軽商用車」の正体とは
ホンダが“豪華内装”の新型「軽バン」発表! 前代未聞の「めちゃオシャ」仕様がスゴい! 上質「ブラウン内装」採用した新型「軽商用車」の正体とは
くるまのニュース
劇的逆転勝利のトヨタ小林可夢偉「燃料が最後までもつか確信が持てなかった。本当に大変だった」/WECイモラ
劇的逆転勝利のトヨタ小林可夢偉「燃料が最後までもつか確信が持てなかった。本当に大変だった」/WECイモラ
AUTOSPORT web
トヨタのクロアチア・ラリー4連覇を支えた気象予報士の存在。「天気を当てるなんて誰にもできない」と豊田会長も賛辞
トヨタのクロアチア・ラリー4連覇を支えた気象予報士の存在。「天気を当てるなんて誰にもできない」と豊田会長も賛辞
AUTOSPORT web
レクサス GXが2024年秋に発売へ。100台限定モデルの抽選も受け付け|LEXUS
レクサス GXが2024年秋に発売へ。100台限定モデルの抽選も受け付け|LEXUS
OPENERS
道路に引かれた「いろいろな線」なぜ白や黄色で描かれる? いつ誰が引いている? 「白線」「黄色線」の正体とは?
道路に引かれた「いろいろな線」なぜ白や黄色で描かれる? いつ誰が引いている? 「白線」「黄色線」の正体とは?
くるまのニュース
レッドブル&HRC密着:フロントタイヤに厳しいコースでも圧勝。フェルスタッペンは難コンディションの路面で弱点をカバー
レッドブル&HRC密着:フロントタイヤに厳しいコースでも圧勝。フェルスタッペンは難コンディションの路面で弱点をカバー
AUTOSPORT web
N-VANは乗り手を選ぶ…… 「おれはこのクルマに選ばれるだろうか」と試されるぞ!! 【テリー伊藤のお笑い自動車研究所】
N-VANは乗り手を選ぶ…… 「おれはこのクルマに選ばれるだろうか」と試されるぞ!! 【テリー伊藤のお笑い自動車研究所】
ベストカーWeb
素のスイフトにMTがあるのは「走り好きの若者」もだけど「高齢ドライバー」のためでもあった! MT設定にみるスズキの良心に感動!!
素のスイフトにMTがあるのは「走り好きの若者」もだけど「高齢ドライバー」のためでもあった! MT設定にみるスズキの良心に感動!!
WEB CARTOP

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

263.0325.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

19.8438.0万円

中古車を検索
RX-8の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

263.0325.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

19.8438.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村