比較的安価なモデルから用意する独自のポジショニングを築く
ポルシェはなぜスーパーカーと呼ばれないのか。そう編集部から訊かれて考えたのは、じゃあ今の時代、スーパーカーって呼ばれているクルマってあったっけ? ということでした。
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フェラーリ、マクラーレン、ランボルギーニあたりはそうなのかもしれませんが、どうもそれはブランドイメージに左右されているところも多いような……。だって、同じように高性能でもアストン マーティン ヴァンテージは、そういう扱いされませんよね? シボレー コルベットも然り。ミッドシップじゃないから? そうすると、やっぱり日産GT-Rはマルチパフォーマンススーパーカーと謳ってはいてもスーパーカーには入らないことになりますね。じゃあ、ホンダNSXはスーパーカー?
どうやらポルシェ云々の前に「スーパーカーって何だ?」を明確にしておいた方が良さそうです。じつはこのスーパーカーという言葉、私自身は使っていません。1970年代のまさにスーパーカーブームあたりから使われるようになったこの言葉。あのころはフェラーリ、ランボルギーニだけじゃなくポルシェ911だって、それどころかロータス ヨーロッパだって、フィアットX1/9でさえも含んでいたわけで、特定のセグメントを指すために使うのは難しいそうです。
今は一般的にはスーパースポーツという言葉の方がしっくり来る気がします。ですがポルシェを見たとき、最高出力700馬力の911GT2RSを筆頭に、580馬力のターボS、500馬力のGT3辺りまでならここに入れられそうですが、素の911カレラや718ケイマンまで“スーパー”なスポーツカーなのかと言われると、ちょっと違和感もありますよね。
何ででしょう? デイリーユースを意識した時点で“スーパー”とは括りにくい? いや、でも911ターボSなんてホント普通に使えるクルマだしな……。こうして見ると、じつはポルシェはどこのカテゴリーにもカッチリ属していなくて、それゆえにラインアップ中にスーパースポーツと呼べるモデルがあっても、スーパーカーと呼ばれないのかもしれない……という気がします。
でも、そんな風に広範なラインアップを用意していることこそ、ポルシェをここまでポピュラーな存在にしているのは確かです。振り返ってみると……1994年にデビューしたV8フェラーリのF355ベルリネッタの価格は1490万円で、当時のポルシェ911カレラ クーペの1065万円の4割高いだけでした。
ところが今や、フェラーリ488GTBは3070万円。対する911カレラは前述の通り1244万円ですから、何と約2.5倍もするんです。言い方を変えれば、V8フェラーリも値段は当時の倍にもなったけれど、911カレラは1割増えたに過ぎません。
911は、そんな488GTBにも対抗できる存在として上記のようにGT3やGT2RSのようなモデルもちゃんと用意しています。でも、そうしたカテゴリーにまるごと移行するわけではなく、911カレラのようなモデルも継続し、さらには718シリーズまで設定している。要するにポルシェは、スーパーカーだ何だというカテゴリーのド真ん中で競争するのではなく、それらを片目で見つつも、あくまで独自のポジションで勝負しているわけです。
結論。ポルシェはスーパーカーとは呼ばれないのかもしれませんが、それでいいんです。あくまでポルシェはポルシェなんですよ。
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