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クルマ好きのキミは、いつのまにか偏屈で狭量なオッサンになっていないか?

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クルマ好きのキミは、いつのまにか偏屈で狭量なオッサンになっていないか?

『IMPORTカーセンサー』なる雑誌のデスク担当だった頃は、御府内の南町奉行所近くにあった編集部まで、荏原郡下北澤村から帝都電鉄線および営団地下鉄銀座線にて毎日通勤していた拙者である。

しかしその後は現在の長屋兼オフィースがある同郡碑文谷村にひたすらこもり、家の者以外とは特に接することなく、また口をきくこともないまま、シコシコと日々駄文を製造している。

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そんな暮らしを6年ほど続けたある日、というか具体的に言っちゃうと昨日、拙者はひとつの事実に気づいてしまった。

自分の性格がやたらと「頑固かつ排他的」になっているのだ。

単なる「偏屈で狭量なおっさん」

拙者の長屋兼オフィースはまったく大したことのないあばら家ではあるが、それでも自分が快適に過ごせるよう、すべての物やその配置などは完全な自分好みに細かくチューニングされている。そして拙者はひとり親方(自営業者)であるため、誰かに指図されたり、訓戒や打擲などを受けることもまったくないまま、ほぼすべての行動を、自分が思うとおりのやり方でのみ執行している(時おり、発注元の編集部で土下座していたりはするが)。

……そんな生活を6年間も続けた結果、拙者はどうやら「お山の大将」になってしまったようなのだ。

とにかく、ごく稀に玉電などに乗って御府内に行こうとすると、電車内や駅構内、あるいはそこらへんにいる者どものやっていること、言っていることなどがいちいち気に食わなくて仕方ないのである。

といっても、彼ら彼女らは特段な異常行動をしているわけではない。

つり革につかまって立っている拙者の前で座っている男の脚が、ちょっと(本当にちょっとだけ)前に出ているとか、狭い茶店で横の椅子に座っている男が組んでいる脚が、ほんの少し(本当に少しだけ)拙者のいわゆるパーソナルスペースを侵害しているとか、焼鳥屋のカウンターで隣に座る喫煙者が、そのライターと灰皿をなぜか(少しだけ)拙者側にオフセットさせているとか、その程度のことである。

その程度のことなのに、拙者は思わず「ムキーッ!」となってしまい、その者をぶん殴る……わけにもいかないので、まだ茶を飲んでいる最中であったり、注文した焼鳥がデリバーされてもいないというのに、「栗田さん、出よう!」とばかりに勘定を済ませ、とっとと店外に出てしまうのだ。

拙者には拙者の言い分もあるわけだが、冷静かつ客観的に見るならば、その姿は「単に偏屈なおっさん」であるだろう。

偏屈なままではゼニが稼げず滅亡してしまう

零細自営業者として他者とほとんど交わらないまま、碑文谷村で6年間の唯我独尊生活を送った結果、拙者は極端に偏屈なおっさんになってしまった。そしてさらなる問題は、この偏屈さは今後の加齢進行によって一層ドライヴがかかっていくだろうことが容易に想像できる点だ。今はまだ「栗田さん、出よう!」で済んでいるが、あと3年もすればブツブツと小言を言うようになり、5年もすると狂気の域へと迷い込む。そんな気がしてならない。つーか、たぶんなるだろう。

「それはマズい」と拙者は考えた。

何がマズいって、偏屈で小言が多くて狂気じみたお山の大将的おっさんになってしまうと、ゼニが稼げなくなるからだ。

自分が比較的若手だった頃は、周囲の編集者(拙者に仕事を振ってくれる人たち)はたいてい拙者より年長だった。が、拙者が中高年になっていくにつれ、編集者は「たいてい年下」という状況に変わっていった。そしてその状況は今後さらに加速するだろう。

となると「偏屈で小言が多くて狂気じみてるおっさんライター」にわざわざ仕事を振ろうとする若手編集者など、この世に一人もいないことは明らかであるため、拙者は「仕事激減→ガソリン代がないからクルマにも乗れず→買い替えもできず→滅亡」というコースを確実にたどることになるのだ。

あと数十年もすれば放っておいても滅亡するこの肉体ではあるが、さすがに今はまだ滅亡したくない。そのため、自分は自らに「にこにこ異界めぐりキャンペーン」という荒行を命じた。

他者と積極的に交わることを試みたが

「にこにこ異界めぐりキャンペーン」とは、読んで字のとおり「にこにことした笑顔をふりまきながら、極力ふだんは行かない世界に足を踏み入れてみる」というセルフキャンペーンだ。

しかめっ面をして碑文谷村にこもっているからダメなのである。もっとこう広い世界でさまざまな人と積極的に交わることで、自分は柔軟性みたいなものを取り戻さねばならぬのだ。そうしないとゼニが稼げぬのだ。滅亡するのだ。

とはいえどこに行けば良いかわからなかったため、とりあえずは、日頃から世話になっている各編集部を表敬訪問することにした。

営業に類することはほとんどしてこなかった拙者だが、たまにはそういうのもよかろう。編集部に行き、「でへへっ、おばんでがす!」とか言いながら自分の額をぺしっと叩き、「ちょっとした新製品紹介の小コーナーでも喜んで書きますので、もしもお困りの案件がございやしたらこのアテクシめに(ぺしっ! と額を叩きながら)どうかお気軽にお申し付けを! でへへへへ~」とかなんとかやるのだ、うむ。

だがしかし、現実は厳しかった。

「新しい価値観や文化」に触れることの価値

多くの編集部の多くの若手編集者は、「突然ノーアポで来られても困ります……」と明らかに不機嫌な様子で、「ついでだから言いますけど、伊達さんはいまだにEメールを使ってますが、今後はgithubに取り込んでプライベートレポジトリにinviteしますんで、○×△□を■●▲したうえで、ローカルリポジトリで○×△□を……」と言われた。後半は正直、まったく聞き取れなかった。

「俺が碑文谷村にこもっていた間に、世界は変わってしまったのか……」

そうつぶやきながら、そして涙を流しながら、せめて愛すべきクルマに触れることでこの傷心を癒そうと考え、自分は某編集部近くにあった某輸入車ディーラーに入った。

飛び込み客であるにもかかわらず、対応してくれたセールス氏はわたしを人間として扱ってくれた。「良かったらご試乗もしてみませんか?」とまで言ってくれた。

お言葉に甘え、自分は2018年式の最新某モデルに乗り込んだ。

が、自分は2018年式のそれのエンジンを掛けることができず、トランスミッションを「D」に入れることすらできなかった。

なぜならば、どのスイッチが何を意味しているのか、まったくわからなかったからだ。

村にこもっていた時間が長すぎた。拙者はもう手遅れだが、これをお読みの貴殿らにおかれては、こうはならないよう、極力自分の世界だけに閉じこもらず、新しい物事、新しいクルマなどとも積極的に関わるよう心がけていただけたなら幸いだ。それでは、御免。

[ライター/伊達軍曹]

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