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BMWの「R nine T Racer(アール・ナインティ・レーサー)」は、レーシングマシンそのもの

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BMWの「R nine T Racer(アール・ナインティ・レーサー)」は、レーシングマシンそのもの

■ネオクラシックの波がBMWにも波及した!

 バイク界で絶賛流行中のネオクラシックモデルですが、BMWももちろんラインナップしています。現在5種類のモデルが用意され、その中で最もスポーティなスタイルを纏っているのがこの「R nine T Racer(アール・ナインティ・レーサー)」です。

今、ネオクラシックなカワサキのZ900RSが大人気!? そもそも、バイクに流行りはあるのか?

 ネオクラシックブーム自体はもう結構長く続き、日本で最初にヒットしたのは1989年に登場したカワサキ・ゼファー400でしょう。もっとも、その頃はネオクラシックという言葉は一般的ではなく、「ノスタルジックなベーシックスポーツ」とか「レトロなノンカウルバイク」なんて呼ばれていました。

 そうこうするうちにいくつかのメーカーがその流れに乗っかり、「見た目はクラシカルだけど中身は最新」というモデルが徐々に増えていきました。いつしかそれが「ネオクラシック」や「ネオレトロ」、「モダンクラシック」と呼ばれるようになり、今ではすっかりひとつのカテゴリーとして定着したというわけです。

 ちなみにこうした動きはクルマ界も同様で、古き良き時代のスタイルと車名を新しい技術でよみがえらせたニュービートルやニューミニは特に有名ですね。

 アール・ナインティ・レーサーは日本に2017年から導入が始まったモデルで、ヘッドライトを覆うハーフカウルと低い位置に装着されたクリップオンハンドル、そして1人乗り用のシングルシートカバー(専用のフレームとステップを装着し、構造変更の申請をすれば2人乗りも可)を標準装備しているのが外観上の特徴です。

 モチーフになっているのはかつてのレーシングバイクであり、1973年に登場して数々のレースで活躍したR90Sが直接的な元ネタになっています。

「やはり、多くのお客様が70年代のレーシングシーンとの親和性を感じていらっしゃるようです。R90Sは市販車を改造して速さを競う“スーパーバイクレース”で活躍したモデルですが、特に50代以上のライダーの方々にとっては懐かしく、その頃の憧れにひたれることが支持されている要因ではないでしょうか」とBMWのマーケティングを担当する大西洋介さんがユーザーの傾向を語ってくれました。

■長距離走行が楽なBMWの中では異色な存在

 実際にまたがるとよく分かりますが、そのライディングポジションはレーシングマシンに近い・・・というよりもレーシングマシンそのもの。車体を真横から見るとハンドルとシートの高さはほぼ同じです。

 つまり、乗車中は燃料タンクに覆いかぶさるような姿勢が求められるため、上体を支えるには腹筋や背筋、腕力を少々使うことになるのです。そのため、ハッキリ言ってしまえば決して安楽&快適なモデルではありません。BMWは基本的に長距離走行を得意とするメーカーですが、アール・ナインティ・レーサーだけがかなり異色な存在と言えるのです。

 そのあたりを大西さんに聞いてみたところ、「確かにそうですね。ただし、少し見方を変えて頂けると中途半端には作っていないということです。昔のレーシングマシンは簡単に乗りこなせるものではありませんでしたが、それに忠実であろうと本気でクラシックを追求した結果、このカタチになったのです。

 バイクは多かれ少なかれ変身願望を叶えてくれる乗り物だと思います。その意味でアール・ナインティ・レーサーには非日常性がたくさん詰まっていますから、ぜひそこを楽しんで頂きたいですね」ということでした。

 これには納得。アール・ナインティ・レーサーがスパルタンなのは見た目から分かっていることです。穏やかそう見えて実は冷たかったりするとかなりガッカリするものですが、手強そうに見えて実際そうなのですから、そこに裏切りはありません。

 それに快適性を求めるなら他のアール・ナインティシリーズに目を向ければすべて解決。なぜなら、レーサー以外のモデルには前傾姿勢を必要としないアップタイプのハンドルが備えられ、きっちりと差別化がはかられているからです。

■運転姿勢以外は極めてフレンドリーなマシン

 ではエンジンや足回りはどうか?これらに関しては安心してもらって大丈夫です。ライディングポジション以外は極めてフレンドリーで、ライダーのスキルをきっちりとサポートしてくれる、おもてなし感にあふれています。

 まずエンジンですが、排気量が1169ccもあると聞けばフレンドリーと言われてもちょっと尻込みしてしまうかもしれません。ところがスロットル操作に対する反応はとても従順で、パワーが唐突に盛り上がったり、ギクシャクしたりすることはまったくなし。絵に描いたような「気は優しくて力持ち仕様」で、クラッチやブレーキレバーの操作性が軽いことも手伝って、街中のノロノロ運転でも持て余さずにすみます。

 コーナリングを支える足回りも頼もしく、タイヤがビタッと張りついたように安定して駆け抜けることができます。路面に少々デコボコがあっても何事もなかったかのように衝撃を吸収し、たとえ狭い峠道でもスイスイと走れてしまう安心感に誰もが驚かされるでしょう。

 しかも、タイヤがロックしたり、スベッたりするような場面ではABSやオートマチック・スタビリティ・コントロールと呼ばれる電子制御が介入し、危険を回避してくれるなど安全装備も充実です。もちろん限界はありますが、クラシカルな見た目とは裏腹に最新のセーフティ機能が張り巡らされているというわけです。

 アール・ナインティ・レーサーには、デザイン性、スポーツ性、実用性、安全性といったさまざまな機能が盛り込まれ、走らせている時はもちろん、眺めている時でさえ気持ちを高めてくれるはず。

 このモデルを手に入れたなら、ウェアやヘルメットも含めてオシャレに気を使うことが求められますが、人から注目されることも含めて、これまでのバイクライフをガラリと変えてくれる存在になるはずです。

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