■撮影用に4台のインプレッサを用意した理由は?
「ショーン・オブ・ザ・デッド」「ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!」など、往年の名作をオタク目線で換骨奪胎した快作で多くの映画ファンから支持を得るエドガー・ライト監督によるハリウッド本格長編デビュー作「ベイビー・ドライバー」(2017年)。
世界中が涙した『ラ・ラ・ランド』 ラブストーリーを彩るクラシックカーにも注目
映像と音楽が完璧な融合を見せる本作は“カーチェイス版「ラ・ラ・ランド」”とも評され、米映画批評No.1サイト<ロッテントマト>では異例のフレッシュ度100%(=満点!)を獲得。ド派手で疾走感あふれるカーアクションと、監督がこだわり抜いたロックやポップ、ソウルといった30曲もの多彩な音楽を見事にシンクロさせ、日本を含む世界的な大ヒットを記録した作品です。
物語は、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンのヒット曲「ベルボトムズ」のビートにのせた怒涛のカーチェイスからスタート。天才的なドライビングテクニックで犯罪組織の“逃がし屋”として活躍する主人公・ベイビー(アンセル・エルゴート)が操るのは、撮影用に改造された真紅のスバル「インプレッサ WRX」(2006年型)です。
銀行を襲撃した強盗団を乗せたベイビーは驚異的なハンドルさばきでパトカーの追跡を振り切ると、逃げ込んだ先の立体駐車場にあらかじめ用意していた北米仕様のトヨタ「カローラセダン」に乗り換え、警察の追手から無事に逃走。この鮮烈すぎる約6分間のオープニングシーンによって、観客を一気に作品の世界に惹き込んだのでした。
とにかく逃げて逃げて逃げまくる本作では、超高難易度な圧巻のカーアクションが終始展開されますが、それらのスタント撮影は全てスタントドライバーによる実演というから驚き。ワイヤーやグリーンバックもほとんど使用せず、コンピューター処理は画像を鮮明にする程度に留めているそうです。
そもそも「インプレッサ WRX」というチョイスからして日本の“走り屋”たちも熱狂しそうなチョイスですが、なんとエンジンを載せ換えたり後輪駆動に改造したりと、撮影用に4台もの異なるWRXを用意したとのこと。
他にも「三菱 ギャラン」などの渋い日本車が登場するので、オタク監督の執拗なまでのコダワリが生んだ極めてリアルなアクションであることを意識して観ると、より一層手に汗握るものがあるはず。
また、各場面にマッチする絶妙な選曲のサウンドトラックはもちろんのこと、シフトチェンジや排気音、ドアの開閉やクラッシュ音に至るまで全てをビートに合わせる緻密な演出が、観る者を体感的な気持ち良さへと誘います。
車好きや音楽好きはもちろん、あらゆる映画好きを魅了する革新的な作品と評される所以も納得のいくところ。映画すきを自称する方ならば、同じく大の映画マニアであるクエンティン・タランティーノ監督の作品と比較してみるのも面白いでしょう。
エドガー・ライト監督は続編準備に取りかかっていることを認める発言をしており、今後の展開も注目を集めています。
■『ベイビー・ドライバー』作品情報
ストーリー:ベイビー(アンセル・エルゴート)。その天才的なドライビング・センスが買われ、組織の運転手として彼に課せられた仕事―それは、銀行、現金輸送車を襲ったメンバーを確実に「逃がす」こと。
子供の頃の交通事故が原因で耳鳴りに悩まされ続けているベイビー。しかし、音楽を聴くことで、耳鳴りがかき消され、そのドライビング・テクニックがさらに覚醒する。そして誰も止めることができない、追いつくことすらできない、イカれたドライバーへと変貌する―。
組織のボスで作戦担当のドク(ケヴィン・スペイシー)、すぐにブチ切れ銃をブッ放すバッツ(ジェイミー・フォックス)、凶暴すぎる夫婦・バディ(ジョン・ハム)とダーリン(エイザ・ゴンザレス)。彼らとの仕事にスリルを覚え、才能を活かしてきたベイビー。しかし、このクレイジーな環境から抜け出す決意をする―それは、恋人デボラ(リリー・ジェームズ)の存在を組織に嗅ぎつけられたからだ。自ら決めた「最後の仕事=合衆国郵便局の襲撃」がベイビーと恋人と組織を道連れに暴走を始める―。
監督:エドガー・ライト出演:出演:アンセル・エルゴート、リリー・ジェームズ、ケヴィン・スペイシー 他
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