筆者の住むドイツの首都ベルリンでは、今シーズンの冬でもっとも寒い時期が2月末から3月はじめにかけて到来しました。最低気温はマイナス13度前後、日中の最高気温でもマイナス7度前後と、雪こそ降らないもののまさに凍える寒さ。現地の人々は、厚く氷が貼った湖や河川の上でスケートを楽しんでいます。
とはいえ、長い冬が終わり春がもうすぐそこまで迫っているのは、日に日に伸びていく日照時間を見ても明らかです。3月はじめのベルリンの日没時刻はだいたい18時。街行く人々の表情も心なしか明るいです。そんな中、「こいつもきっと、春が待ち遠しいんだろうな」というクルマに出会いました。今回ご紹介するのは「アルファ・ロメオ・スパイダー」です。
ドイツ各地から貴重なクルマが集う!Die Oldtimer Showイベントレポート
80年代的デザインに身を包んだシリーズ3
アルファ・ロメオらしい鮮烈なレッドをまとったこのスパイダーは、1983年から1989年にかけて生産されたシリーズ3と呼ばれるモデルです。フロントグリルと一体になった大型のバンパーや、大きなリアバンパーと大型化したテールランプ、そしてテールランプの上にちょこんとそびえるゴム製のリアスポイラー…今の感覚で見ると、とても80年代的デザインですね。
クリーンな造形が特徴だったシリーズ2までのアルファ・ロメオ・スパイダーが、時代の流れでゴテゴテとしたデザインになったことに対し、どちらかというと否定的な意見が多かったようです。事実、後に登場するシリーズ4では、リアスポイラー等は取り外され、シリーズ2までの流れを汲むスタイルに戻されています。筆者自身、シリーズ3のスパイダーにはあまり心惹かれるものはなかったのですが、こうして久しぶりに実車を見かけると「これはこれでいいな!」と思わせられる魅力があります。
ドライビングポジションはイタリアンスタイル
全長4,270mm、全幅1,630mm、全高1,290mmのボディサイズは、現行ND系マツダ・ロードスターと比較して、355mm長く、105mm狭く、55mm高くなっています。写真の個体はスパイダー2.0と呼ばれる2リッター直列4気筒DOHCエンジン搭載モデルで、最高出力は125馬力を発生。車重1,040kgのボディを5速マニュアルトランスミッションで軽快に引っ張りました。あらためてスペックを見ると全幅が狭いので、日本の路上を走らせても楽しそうですね。
当時のアルファ・ロメオで特徴的だったものの一つが、インテリアとドライビングポジションです。シフトレバーの付け根はダッシュボードのかなり前方に位置していて、そこからひょろりと伸びた長めのレバーを操作します。また、ドライビングポジションはペダルに合わせるとステアリングが遠くなり、逆にステアリングに合わせるとペダルが近くなるという、典型的なイタリアンスタイル。ステアリングの近くにシフトレバーがあるので、慣れれば操作はしやすいのですが、そんなところも古き良きイタリア車の伝統を引き継いでいます。
アルファ・ロメオ・スパイダーは、シリーズ1からシリーズ4まで、大きな変更を受けずに生産された長寿モデルです。シリーズ1の登場は1966年、シリーズ4の生産終了は1993年で、実に27年に渡って生産が続けられました。シリーズ全体で12万4千台が作られた中、今回撮影したスパイダー2.0はその内の2万9千台、約4分の1を占めています。こうして見ると、シリーズ屈指の人気モデルと言えるでしょう。
ドイツでは女性ユーザーに人気!
アルファ・ロメオ・スパイダーの最終型・シリーズ4は、最終型クラシック・ミニと並んで、当時「90年代に新品で買えるクラシックモデル」としてコアな人気を誇りました。ドイツでもきれいに維持されたシリーズ4を見かけることがありますが、それよりも目に付くのがガンガン使い込まれているシリーズ3です。とくに女性のユーザーに人気のようで、比較的若い方が日常の足に使っている様子をよく見かけます。
スパイダーに積まれる4気筒エンジンは、ジュリアから受け継がれてきた伝家の宝刀。低速からのトルクも厚く、高回転でブン回してもタフで、電装系にさえ気を付ければ現在でも維持は難しくありません。絶対数こそ減ってきていますが、これから春を迎えて、幌を開け放ったアルファ・ロメオ・スパイダーを街中で見かけることが少しずつ増えていくことでしょう。写真のようなシリーズ3も、これからも数多く残っていくとよいですね!
[ライター・カメラ/守屋健]
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