OEMは、Original Equipment Manufacturingの略で「相手先企業のブランドをつけて販売される完成品や半成品の受注生産」の意。「マツダブランドをつけて販売されるスズキ製の車」というように、他社が開発・生産した車を自社ブランド製品として売る、それがOEM車だ。実はホンダを除く国産7メーカー全てが、何らかの形で販売しているほど、OEM車は浸透している。成功例ばかりではないが、OEM車にはメリットがあり、これまで数々の記憶に残るOEM車が世に送り出されてきた。
文:渡辺陽一郎、編集部
ベストカー2018年2月26日号
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「OEM」にはどのようなメリットがあるのか?
かつて自社開発モデルだったマツダ キャロル。現在はスズキ アルトのOEM車だ
OEM車を作る理由は、開発費用を抑えて商品の種類を増やせるから。
車両開発には少なくとも100億円の費用が必要だが、OEMなら簡単に調達できる。その代わり供給を受けるメーカーは、製造メーカーから買うため儲けは少ないが、それでも構わない。
理由はさまざまだが、顧客を失いたくないからというのも理由のひとつ。例えば、かつて自社で軽の製造と販売を行っていたマツダは、軽から完全に撤退すると長年の顧客を逃すため、需要をOEM車で繋ぎとめようとした。
また軽自動車を扱った経験のない日産が、ピノなどを販売したのは、日産車ユーザーの22%が軽を併用していたから。日産が軽を扱えば効率よく売れると考えたのだ。
そのほか、GMのシボレーキャバリエのように、貿易摩擦の解消を目的に輸入されたOEM車もある。
本家より100万円安かった“オペル製のスバル車”
スバル トラヴィック(2001ー2004年)は、オペル ザフィーラのOEM車
OEM車を導入するメリットは、主にメーカーと販売会社にある。ユーザーからすれば実質的に車種の選択肢が減るわけで、メリットは乏しい。
しかし、スバル トラヴィックは価値の高いOEM車だった。タイ製とはいえオペルのミニバン、ザフィーラと同じ車で、発売時点の標準仕様の価格は2.2Lエンジンを搭載して199万円。
当時のマツダ プレマシーや日産 リバティと同程度だが動力性能は上まわり、走行安定性、乗り心地、シートの座り心地などは欧州車の品質だ。オペル ザフィーラと比べても約100万円安い。買い得なOEM車であった。
本家より大幅値引きした日産のOEM車
日産 オッティ(2005-2013年)は三菱 eKワゴンのOEM車。単に日産のバッジを付けただけでなく、こちらはフロントマスクが本家と若干異なるデザインに
「オッティはうちからのOEM車なのに日産の販売店は信じられないような値引きをする。値引き競争になると、eKワゴンが負けてしまう」
日産は販売台数を増やすことに重点を置き、車検や点検費用で売り上げる考えだから、薄利多売のOEM軽自動車で大幅値引き販売を行った。これもOEM車を導入する目的とその戦略だった。
まだまだある! 記録より記憶に残ったOEM車たち
■トヨタ キャバリエ/1996-2000年
トヨタ キャバリエはGM キャバリエのOEM車。こちらは同じ車名でトヨタバッジを付けて販売された
貿易摩擦を緩和すべくGMのシボレー キャバリエをトヨタで売ることになった。販売の低迷で値下げを繰り返し、最終的にセダンの価格が156万円に下がった。2.4Lエンジンを搭載しながら、1.5LのカローラセダンSEなどと同等の価格だ。超絶的な買い得車であった。
■シボレー MW/2000-2003年、2006-2010年
シボレー MWはスズキ ワゴンRソリオのOEM車
OEM車とベース車の違いは、一般的にはメーカーエンブレム程度だ。しかしシボレーMWは大型グリルを装着して、ベース車のワゴンRソリオとは顔つきを大幅に変えた。本革シートを備えながら価格を安く抑えた仕様も用意され、シボレーブランドも注目された。
■いすゞ アスカ/1997-2002年(3代目)
3代目いすゞ アスカ。初代は自社開発、2代目はスバル レガシィのOEM車、3代目はホンダ アコードのOEM車と彷徨った流浪の車
セダンの生産を終えてOEM車に切り替えた後のいすゞは、いろいろなメーカーと提携を結んだ。特にホンダとは活発で3代目アスカは5代目アコードのOEM車。ビッグホーンなどとは逆に供給を受けた。ただしセダンのみでワゴンはなく、販売は伸び悩んだ。
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