「冬タイヤ」にも種類がある
雪の降る時期に必須なのがスタッドレスタイヤ。久しぶりの厳冬になったこの冬(2017、18年シーズン)は、東京も何度も雪に見舞われ、スタッドレスタイヤのありがたみを改めて知ったという方も多かったに違いありません。冬のタイヤといえばスタッドレスというわけです。
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しかし、「ところ変われば品変わる」という言葉もあるように、日本以外に目を向けてみれば、冬用タイヤ=スタッドレスではない地域が意外とたくさんあります。世界で冬に使われるタイヤには、スタッドレスタイヤ、ウインタータイヤ、オールシーズンタイヤ、スタッドタイヤ(スパイクタイヤ)の4種類があります。こんなに種類が多いのは、地域によって冬の環境が違うのが理由です。
たとえば日本。日本の冬は、雪が降りつつも、気温はマイナスとプラスを行ったり来たりします。そうなると雪は解けて水になり、それが再び凍ります。さらにその上をたくさんのクルマが走るため、氷の路面は磨かれてツルツルに。つまりアイスバーンがあちらこちらに生まれます。しかも、冬でも暖かい日は、除雪されて路面のアスファルトが露出することも。そのため舗装路面にも対応しなくてはなりません。これは世界的に見ても、相当に過酷な環境です。そこで進化したのがスタッドレスタイヤです。
冬タイヤ、世界に目を向けてみると…?
一方、北欧やロシア、アラスカのような極寒エリアには、スタッドタイヤ(スパイクタイヤ)が使われます。これはタイヤに金属の爪が埋め込まれたもの。冬を通じて、真っ白の雪と氷の路面であればスタッドタイヤが最強です。ただし、スタッドタイヤは舗装路面が露出すると、金属の爪が路面を削ってしまい、その粉塵が大問題に。日本でも昔は使われていましたが、あまりに粉塵がひどいということで基本的に使用禁止となっています。つまりスタッドタイヤは、よほどの極寒エリアではないと使えません。
次に日本と環境は似ているものの、路面が乾いているときは、ものすごくスピードを出すというのが欧州です。そこで使われるのがウインタータイヤです。アイスバーンの性能を少し諦めるかわりに、舗装路面での高速走行性能が高められています。また、雨で濡れた舗装路面でも、しっかりとブレーキが効くことも求められています。
アメリカで人気のタイヤがオールシーズンタイヤです。これは夏の舗装路面から、濡れた路面、雪までに対応可能なもの。アメリカの場合、割合に除雪が早く行われますし、日本よりも一段と寒くて、気温が摂氏0度前後を行き来するようなエリアが少なかったりします。そのため、雪が溶けて凍るアイスバーンが日本よりも少ないのです。そうしたこともあり、スタッドレスを利用するエリアもありますが、アメリカ全体としてはオールシーズンタイヤを利用するユーザーが多くなっています。
氷雪上を実際に走らせ比べてみると?
では、実際の雪道や凍結路での、それらの性能の差はどの程度なのでしょうか。今回、横浜ゴムがメディア向けに行った「2018年スタッドレスタイヤ勉強会」において、スタッドレスタイヤとウインタータイヤ、オールシーズンタイヤの比較試乗を体験するこことができました。
試乗コースは、北海道旭川にある横浜ゴムのテストコース。雪を踏み固めた圧雪路と路面を凍らせた屋内のテストコースを、スタッドレスタイヤ「アイスガード iG60」とウインタータイヤ「ブルーアースウインターV905(日本未発売)」、オールシーズンタイヤ「AVID Ascend S323(日本未発売)」という3種のタイヤで走ってみました。
雪と氷の同じ条件で履き比べてみれば、その差は歴然としたものでした。雪でも氷でも、最高のグリップとコントロール性能を見せてくれたのがスタッドレスタイヤ。それに続くのがウインタータイヤで、最後がオールシーズンタイヤでした。
特に大きな差が出たのが、凍結した路面です。ほんの少しの差ではなく、ほかの2種よりも明らかに強力にブレーキが効いて、ステアリング操作の手ごたえも確かな差があります。スタッドレスタイヤは、特に凍結路を主眼に開発されているから当然と言えば当然でしょう。逆に圧雪路は、ウインタータイヤが健闘し、スタッドレスタイヤに近いフィーリングで走ることができました。圧雪路でも凍結路でも、明らかにほか2種よりも劣っていたのがオールシーズンタイヤです。ただし、オールシーズンタイヤは名称のとおり、夏場も使うのが前提です。タイヤの見た目的にもオールシーズンタイヤはサマータイヤそのもの。それでも圧雪路も凍結路も、ある程度走れてしまった。それがオールシーズンタイヤの魅力です。
圧雪から凍結路まである日本の冬の道を走るのならば、その環境にあわせて進化してきたスタッドレスが最適。なんとも当たり前のことですが、それを強く実感できる試乗会でした。
【写真】横浜ゴム「アイスガード iG60」のトレッドパターン
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