値引きありきの商習慣や試乗できないなどの理由で普及は限定的
2017年10月、メルセデス・ベンツ日本がクルマのオンライン販売を開始した。SLCの6速MTなどオンラインショップ限定モデルを用意したことも話題となったが、規定の書類を用意しておけば最短20分程度で購入が可能になるという「本当のショッピングサイト」であることも衝撃的だった。
これまでも新型車のWEB予約などはあったが、実際の購入フローはディーラーと呼ばれる販売店における対面で行なわれるもので、オンラインで決済までできるケースはほとんどなかったからだ。しかも、メルセデス・ベンツ日本のオンラインショップでは納車までも最短10日、標準的には25日で完了するというから、いかにもWEBらしいスピード感もあるといえる。
であれば、今後の自動車販売はオンラインショップが増えていくのかといえば、現時点のサービス内容を見ている限りは、そうとも言い切れない。まず、値引き交渉がなくワンプライス価格となっている点は、これまでの商慣習からして反発するユーザーも少なくないだろう。もちろん、メルセデス・ベンツ日本ではオンライン限定モデルを対象としているので、相見積もりをとったりすることはできないので、値引きする必要がないのも事実だ。
逆に、値引き交渉に時間をかけるより、オンラインのワンプライス(もしくは最低価格保証)で売ってくれたほうが短時間でスマートに購入できるのでウェルカムというユーザーもいるだろう。こうしたユーザーマインドについては、オンラインショップの普及によって変わってくる可能性が大きい。
また、現状でいえば現金払いやリース契約には未対応で、残価設定ローンしか支払い方法が設定されていないのもリアル店舗での販売と比べたディスアドバンテージになるが、このあたりは普及と拡大に伴って改善できる部分だろう。ほかにも、車両の下取りサービスがないなどのネガもあるが、オンラインショップでの販売が広がっていけば、これらをワンストップサービスで提供できるよう進化していくことだろう。
しかし、どんなにサービスが進化しても、オンラインだけでは試乗する機会を得ることは難しい。そもそもオンライン限定モデルならばリアル店舗で試乗することも難しいので、そのあたりは妥協できるユーザーが利用するのだろうが、オンライン販売が広がっていくには試乗機会をどのように確保するのかが課題となってくる。
もっとも、ネットで予約して試乗車を自宅などまで運ぶというサービスについては、期間限定でAmazonと日産がコラボレーションして企画したこともあった。そうしたサービスが拡大すれば、「試乗して、気に入ったらクルマを購入する」といったオンライン販売が当たり前となる時代がやって来るかもしれない。
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