現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > クルマ好きが初めてテスラに乗るとどうなるのか?【テスラ・モデルX試乗記】

ここから本文です

クルマ好きが初めてテスラに乗るとどうなるのか?【テスラ・モデルX試乗記】

掲載 更新
クルマ好きが初めてテスラに乗るとどうなるのか?【テスラ・モデルX試乗記】

すでに国内販売開始から一年以上が経過し、自動車メディアには出尽くした感のあるテスラ・モデルXの記事。とはいえ、まだまだ未知の乗り物という認識が一般的であるはず。果たして昔ながらのクルマ好きが初めてテスラに乗るとどうなるのか?TEXT&PHOTO:小泉建治(KOIZUMI Kenji)

今さらながらの初ドライブ

堀切・小菅ジャンクション間が2018年2月25日(日)午前5時から、板橋・熊野町ジャンクション間が2018年3月18日(日)午前5時から4車線化

 自動車専門メディアとしては遅きに失した感があるが、2月上旬に神奈川県大磯にて開催されたJAIA試乗会にて初めてテスラに乗ることができた。今さら生真面目なインプレッション記事を書いてもしかたがないが、せっかく乗ったのに記事にしないのももったいので、昔ながらのクルマ好きのひとりが初めてテスラに乗ったらどう感じるのかを率直に綴ってみることにする。
 
 JAIA試乗会とは、日本の正規インポーターが一堂に会して代表車種を持ち込み、メディアの人間に一斉に試乗させてくれるイベントのこと。事前にリストのなかから希望車種を選び、抽選を経て試乗車種が決まる。希望がすべて通るとは限らないため、取材としての予定は立てにくい。JAIA試乗会で本気の取材をかける場合もあるが、今回は自分が好きな、あるいは乗ったことのない車種に絞って希望を出した。
 
 果たして当たった試乗車は、シボレー・カマロ、ロータス・エヴォーラ、ロータス・エリーゼ、ポルシェ718ボクスター、アストンマーティンDB11、そしてテスラ・モデルXだった。モデルX以外がことごとくスポーツカーであることからも、なんとなく筆者の嗜好がわかっていただけるかと思う。



旧来のクルマ好きは相手にしていない!

 知ってはいたが、やはり実物を目の当たりにして度肝を抜かれるのはファルコンウイングドアである。昔ながらのクルマ好きにも刺さるアイテムだが、それを驚くべきことにリヤドアにだけ採用しているのがなんともテスラらしい。

 そして乗り込んでみると、ダッシュボード中央の巨大な17インチの液晶モニターがイヤでも目に飛び込んで来る。見やすいことは見やすいが、なにもこんなにデカくなくても、というのが個人的な本音だ。かつてサーブが、夜間ドライブ時の目の負担を軽減させるため、速度計以外の照明を落とす機能を搭載していたのとは対照的だ。サーブは航空機メーカーに出自を持ち、このインパネの機能もそこから引用された技術だそうだが、そんなエピソードにもクルマ好きという旧石器人はコロッと参ってしまうのであった。

 ところがモデルXの縦型モニター、話は大きさだけでは終わらない。写真を見ていただきたいが、画面に表示される中身がことごとくクルマっぽくないのだ。最近はドイツのプレミアム御三家なんかも、さまざまな電子デバイスを画面上で設定できるようになっているが、どれもクルマ好きの琴線に触れるようなメカメカしいデザインで、「スポーツプラス」みたいなモードを選ぶといろんなところが真っ赤に光ったりする。

 一方のモデルXには、そんなギラギラ感は一切なし。まるでiPhoneの設定画面みたいで、なんというか、手応えというものがない。だがタブレットやスマートフォンに慣れ親しんだ世代にはこちらのほうが馴染みやすいのでは、という気はする。

 私事ながら筆者にはテスラの購入を検討している友人がふたりいる。ひとりはロンドン在住のノルウェー人で40歳代後半、もうひとりは東京在住の韓国人で30歳代後半、いずれも外国人というのには理由があるのかないのか考察の余地があるが、共通しているのは両者ともにIT系企業に勤めているという点だ。そして現在の愛車はノルウェー人が現行VWビートル、韓国人が新型日産セレナと、これまたいかにもクルマ好きではないところも注目である。

 そんな、クルマ好きではないはずのふたりが、テスラに関しては熱く語り、そして筆者に執拗に質問してくる。自宅に招いても、私のクルマやバイク、そしてズラリと並べられたミニカーには一瞥もくれないふたりがだ。

 つまり、テスラが相手にしているのは彼らのような人々なのだ。その点においては、クルマ好きにも訴えかけてくるBMW i3やi8とも明確に異なる。筆者が共感を覚えるのは圧倒的にiシリーズのほうだが。



テスラだけの世界観が、新しい顧客層を惹きつける

 走り出すと、まぁEVらしく凄まじい加速を見せる。信号待ちで先頭にいると、路肩をすり抜けてきたバイクが停止線より前に停まった。一般論としてバイクのほうが発進加速に優れているから、先に行ってもらって結構、と思っていたのだが、青になってもモタモタしていたので堪らずアクセルを踏みつけると、あっという間にバイクがミラーのなかで点になってしまった。0-100km/h加速は3.1秒だそうで、もはやスーパースポーツである。

 だが、それにもかかわらず高揚感がない。EVなんてそんなもの? いやいや日産リーフなんて、e-Pedalを駆使すれば内燃機関のクルマとは違った、新しい「スポーツドライブ」が楽しめて相当エキサイティングだったりするのだ。

 一方このモデルXは、ACCとステアリングアシストを作動させて、できるだけ自動運転に近い状態でリラックスしたいと思わせる。早く来い来い完全自動運転、である。そういえば前述の韓国人も、先日会ったときに「セレナのプロパイロットは凄いですよ~」とうれしそうに話していた。

 チョイ乗りドライブなので、航続距離だとか、街中での使い勝手だとか、ワインディングでのハンドリングだとかはわからない。だが、テスラの方向性は十分に伝わってきた。

 つまり、アピアランス然り、乗り味然り、筆者のような旧石器人はまったく相手にしていないということだ。EVでも駆けぬける歓びを体現しているBMW iシリーズや、なるべく既存のエンジン車から乗り換えても違和感を最小限に抑えられるように配慮されている日産リーフとは根本から理念を意にする。

 テスラの演出は徹底している。新しいMacBookやiPadが出るとついつい買い足してしまう友人が勢いでローンを組んでしまいそうな、愛車のプロパイロットが自慢の友人が心底憧れるような……そんな彼らの琴線にこそ触れるような世界観に満ちているのだ。

 仮に経済的に余裕ができても、おそらく筆者がテスラを買うことはないだろう。テスラの方向性は明確だ。旧石器人は既存の自動車メーカーにまかせておけばいい。

 ……でも、ファルコンウイングドアだけは、うん、嫌いじゃありません。
 
 
 

Specifications
テスラ・モデルX P100D
全長×全幅×全高:5037×2070×1680mm 車両重量:2487kg フロントモーター最高出力:262ps リヤモーター最高出力:510ps システムモーター最高出力:611ps 最大トルク:967Nm 駆動方式:AWD 価格:1718万2000円

こんな記事も読まれています

トヨタ「GR86」とスバル「BRZ」がそれぞれ「良いクルマ」を目指したら、驚くほど似た味付けになってしまいました
トヨタ「GR86」とスバル「BRZ」がそれぞれ「良いクルマ」を目指したら、驚くほど似た味付けになってしまいました
Auto Messe Web
GRヤリスRally2の潜在能力がヤバい! デビューしたてなのにトップドライバーたちが絶賛する「驚きの性能」とは
GRヤリスRally2の潜在能力がヤバい! デビューしたてなのにトップドライバーたちが絶賛する「驚きの性能」とは
WEB CARTOP
明暗別れた金曜の走り出し。勝田が語る“インカット”の影響と勝者オジエとの違い/WRCクロアチア
明暗別れた金曜の走り出し。勝田が語る“インカット”の影響と勝者オジエとの違い/WRCクロアチア
AUTOSPORT web
フロント一新、小型SUV『ミツビシASX』が大幅改良。HEV・MHEV・ガソリン車が6月から欧州で発売
フロント一新、小型SUV『ミツビシASX』が大幅改良。HEV・MHEV・ガソリン車が6月から欧州で発売
AUTOSPORT web
「ヘンタイ」が褒め言葉に聞こえたらかなりの重症! 重度のクルマ好きがやりがちな「一般人には理解不能」な行為7つ
「ヘンタイ」が褒め言葉に聞こえたらかなりの重症! 重度のクルマ好きがやりがちな「一般人には理解不能」な行為7つ
WEB CARTOP
スズキ「“超凄い”ソリオ」実車展示! 高機能レーダー多数搭載! “自動で走る“機能搭載の「ハイトワゴン」運行の理由とは
スズキ「“超凄い”ソリオ」実車展示! 高機能レーダー多数搭載! “自動で走る“機能搭載の「ハイトワゴン」運行の理由とは
くるまのニュース
全くもって一貫性がない……! ペナルティに泣くアストンマーティン、F1の裁定に不満タラタラ「アロンソとストロールに厳しい」
全くもって一貫性がない……! ペナルティに泣くアストンマーティン、F1の裁定に不満タラタラ「アロンソとストロールに厳しい」
motorsport.com 日本版
本誌執筆陣がオススメするいま注目のモデルをピックアップ!「このクルマ、間違いないです!」ル・ボラン2024年6月号、本日発売!!
本誌執筆陣がオススメするいま注目のモデルをピックアップ!「このクルマ、間違いないです!」ル・ボラン2024年6月号、本日発売!!
LE VOLANT CARSMEET WEB
トヨタ、北京モーターショー2024で、バッテリーEVの新型モデル「bZ3C」「bZ3X」を世界初公開
トヨタ、北京モーターショー2024で、バッテリーEVの新型モデル「bZ3C」「bZ3X」を世界初公開
月刊自家用車WEB
三菱ふそうが「ジャパントラックショー2024」に出展! 新型モデル「スーパーグレート」特別仕様車や新型「eCanter」キャリアカー展示
三菱ふそうが「ジャパントラックショー2024」に出展! 新型モデル「スーパーグレート」特別仕様車や新型「eCanter」キャリアカー展示
くるまのニュース
【バイク版ナビ】「MOTTO GO」プレリリース版が公開!カーナビの名門パイオニアが7月提供予定サービスを先取り体験だ!  
【バイク版ナビ】「MOTTO GO」プレリリース版が公開!カーナビの名門パイオニアが7月提供予定サービスを先取り体験だ!  
モーサイ
「ご当地ほりにし」国内2県で新たな地域限定ラベルが登場!
「ご当地ほりにし」国内2県で新たな地域限定ラベルが登場!
バイクブロス
フィアット500に、1.2Lエンジンを搭載する新グレード「1.2 Dolcevita」を設定
フィアット500に、1.2Lエンジンを搭載する新グレード「1.2 Dolcevita」を設定
月刊自家用車WEB
「アップガレージ青森三沢店」が5/12にプレオープン!
「アップガレージ青森三沢店」が5/12にプレオープン!
バイクブロス
トーヨータイヤ、EV専用を含む小型トラック向けに2種類の新製品
トーヨータイヤ、EV専用を含む小型トラック向けに2種類の新製品
日刊自動車新聞
トヨタ新型「カローラ“クロス”」発表! 「レクサス」級にカッコイイ「斬新フェイス」へ刷新! 新型「コンパクトSUV」約494万円から ブラジルに登場
トヨタ新型「カローラ“クロス”」発表! 「レクサス」級にカッコイイ「斬新フェイス」へ刷新! 新型「コンパクトSUV」約494万円から ブラジルに登場
くるまのニュース
ついに登場 メルセデス・ベンツ新型「Gクラス」世界初公開! 初の電気駆動Gクラス「G580」は“その場で旋回”できる機能を搭載!?
ついに登場 メルセデス・ベンツ新型「Gクラス」世界初公開! 初の電気駆動Gクラス「G580」は“その場で旋回”できる機能を搭載!?
VAGUE
ラウル・フェルナンデス、ヘレステストで最新型アプリリアMotoGPマシン初ライド。直前のスペインGPでは昨年型使用
ラウル・フェルナンデス、ヘレステストで最新型アプリリアMotoGPマシン初ライド。直前のスペインGPでは昨年型使用
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1299.91499.9万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

412.01770.0万円

中古車を検索
モデルXの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1299.91499.9万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

412.01770.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村