その日のベルリンは、朝からかなりの濃霧でした。気温もあまり上がらず、筆者は首をすくめて早足で歩いていたところ、そのクルマが静かに路上でたたずんでいました。鮮やかな赤に、一度見たら忘れられない衝撃的なスタイリング。今回ご紹介するのは、日本ではもちろん、ドイツでも見かけることが少なくなってきた、アルファ・ロメオGTVです。
ドイツの人々もアルファ・ロメオがお好き?
クルマと自転車の6輪生活で見えた、クルマに負けないエンスージアスティックな世界
ドイツに住むクルマ好きにとって、アルファ・ロメオはどんな存在なのでしょうか?クラシックカーのイベントに足を運べば必ず古いアルファ・ロメオを見かけますし、1990年代の旧DTMマシンを彷彿とさせるフルチューンの155を見かけることがあったりと、ドイツの人々にとっても思い入れのあるブランドであることは間違いありません。とはいえ、普段の街中でアルファ・ロメオGTVを見かけることはあまりなく、その数は日本と同様、年々減ってきています。
細部を観察すると、フロントのグリルにはクロームの加飾、黒と赤に色分けされたサイドスカートという点から、1997~1998年のフェーズ1からフェーズ2の過渡期に生産された個体だと推測されます。アルファ・ロメオGTVのデビューが1995年で、最終型のフェーズ3が生産を終えたのは2004年ですから、生産終了からすでに10年以上経過し、写真の個体も約20年前に作られたクルマということになりますね。
デビューから既に20年以上が経過!
それにしても、本当に特徴的なスタイリングです。小さな丸目4灯のヘッドランプに低いフロントノーズ。そこから斜めにサイドを貫くラインはリアトランク上部に抜けています。バッサリと切り落とされたリアに、横一文字のバックライト類。リアスポイラーを装備したモデルもありますが、写真のように何も付いていないモデルの方が、デザインの良さをそのまま生かしているように感じます。エクステリアデザインを手がけたのは、当時ピニンファリーナに在籍していたエンリコ・フミア。アルファ・ロメオGTVとは兄弟車であるスパイダーや、164も彼の手によるものです。
リアのエンブレムによると、ツインスパーク16V、つまり1.8リッターもしくは2リッターの自然吸気直列4気筒エンジンが搭載されたモデルになります。日本では2003年にようやく2リッター・ツインスパークモデルが輸入されるようになりましたが、それ以前には3リッターV6か2リッターV6ターボしか導入されていなかったため、写真の個体のグレードは日本に正規輸入されませんでした。
日本に導入されずに終わった、フェーズ1・2のツインスパーク搭載モデル
官能的なフィーリングで現在でも名機との呼び名が高いアルファ・ロメオV6エンジンですが、ネックはそのエンジン自体の重さでした。アルファ・ロメオ155のV6モデルとツインスパークモデルを乗り比べたことがある方ならイメージしやすいと思うのですが、V6のパワフルさよりもツインスパークの軽快さを好む方も少なくなかったのです。アルファ・ロメオGTVのV6搭載モデルは、FFらしからぬ軽く素直なハンドリングで評判でしたが、より軽量な直列4気筒エンジンを積んだモデルの方がノーズが軽く、さらに軽快なハンドリングが楽しめるはず…当時カタログを見ながら、なかなか輸入されないツインスパークモデルについて悶々としていた記憶があります。
写真の個体はご覧の通り、20年を経たとは思えない、とても美しい状態を保っていました。デザインも全く古さを感じさせず、むしろ奇抜さに目が慣れてしまって、新車発表当時よりも美しいと感じるほどです。
アルフェッタGTV以来途絶えていた伝統の名前を復活させ、現在では後継車が生産されていないアルファ・ロメオGTVですが、再びGTVを名乗る美しいクーペがデビューすることはあるのでしょうか?2015年にはジュリアを復活させたばかりアルファロメオ。今後にぜひ期待したいですね!
[ライター・カメラ/守屋健]
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