2017年12月にMINI Designのトップに就任したOliver Heilmer氏にとって、デザイン研究というのは単なるキャリアではなく、天職そのものだ。ミュンヘン出身の彼は少年のころから新しいクルマをデザインすることに憧れていた。今、43歳の彼は「いいデザインとは何か」を考え、MINIブランドの将来のビジョンを語る。
1.「なぜカーデザイナーになったのか」
デビュー50周年! Eクラスの源流 メルセデス・ベンツ “Stroke/8”セダン、
「物心がついたころからクルマに興味を持っていた。よくクルマの絵を描いていたし、それが楽しかった。はじめは雑誌などの車の写真にスポイラーとかを付け足していたが、次第にクルマ全体の絵を描き始めるようになった。その頃あたりからカーデザイナーになりたいと思い始めていた。ただ、医者や弁護士のように決まったキャリアがなかったから家族からは心配されたね。大学入学前にシュトゥットガルトの有名自動車メーカにインターンに行ったとき、やっぱり車のデザインを仕事にしたいと決心したんだ。まさか今このようなところにいるとは当時の自分は思ってもいないだろうね」
2.「デザインのインスピレーションはどこから?何が原動力?」
「自分の想像力の刺激になりそうなものはすべて興味を持つようにしている。例えば音楽。ジャズからヒップホップまで、よく聞いている。芸術的なモノだけじゃなく、完全に技術的な目でエンジニアたちによって作られたモノなどもいい。機能や性能だけ考えて作られたのにどこか美しいものがある。50~60年代のファエマ エスプレッソマシーンとかあるでしょう?ああいうのですよ。美しいものすべてが自分の想像力を刺激する。それが次のクルマのデザインにつながってゆく」
3.「いいデザインとは?」
「一貫性があり、ちゃんと意味を持つものだと思っている。製品の機能はその形からすぐにわかるようなもので、なおかつ“使える”ものでないといけないと思う。特に美しさが優先されるものではないと考えている。あとあまりデザインが “うるさい“ものにならないように気を使っているが、同時に単調・無個性なものにならないようにちょっとアクセントをつけるようにしている。」
4.「あなたにとってMINIは?」
「MINIは他のブランドと違ってとてもエモーショナルなブランドだ。どんなに高くて豪華なパーツを使おうが、コンパクトな外見になる。MINIユーザーは自分のクルマをよく見せたい。他と違ってそれはクルマの内側から始まるのだ。それぞれが自分のクルマに対する愛着、思い入れがあるのだ」
5.「カーデザイナーとしての仕事では何が一番おもしろいですか?」
「未来のクルマはどんな形になっているのかはわからない。でも今我々が進めているクルマの進化はきっとプラスになるものだ。少しずつ、未来のクルマをつくりあげている。そう考えるだけで毎朝ベッドから出るエネルギーが自然と湧いてくる。数年後、鏡の前で自分に向かって “よし。MINIブランドでのデザインでやれることはすべてやった” と言えるようにしたい」
6.「将来、MINIはどのようなブランドになっていると思うか。MINI Designのトップとして何を進めたいか」
「私から見るにMINIには常に進化する力があるし、そうでなくてはならないと思う。自動運転、EV、電気モビリティ、デジタル化。近いうちにこれらがどんどん自動車業界を変えてゆくだろう。MINIは都会のブランドとして始まった。常に新しいものを取り入れなくてはならないと考えている。だから、私はMINIの将来はオールEVにあると信じている。また、MINIのオーナーは自分の車やMINIブランドに対して特別な思い入れを持っている人が多い。クルマとドライバーがまるで会話しているかのようになれるインターフェースなども面白そうだし、MINIオーナーたちにはぴったりだと思う」
7.「オールEVのMINIを作ることの魅力は?現行の内燃エンジンモデルとのデザインと違うのは?」
「デザイナーにとって新しい技術は面白い。既存のレイアウトやデザインに新しい風を吹かせ、まったく新しい形が出来上がったりする。EV化は既存のレイアウトを大きく変えるだろう:ドライブシステムは格段に小さくなる。一方、現行の燃料タンクよりもEVバッテリーのほうが大きい。これらによって今のガソリンエンジン車とは全く異なるデザイン、レイアウトが誕生することになる。MINIにとって大きな可能性を秘めているだろう」
8.「2019年にMINI最初のEVモデルが発表予定ですが、何が期待できるでしょうか?」
「特に詳しいことは言えないが、いかにも “MINIらしい” クルマになるでしょう。開発では3Dプリンターなども活躍します」
9.「MINI Designは未来へどう進んで行くのでしょうか?」
「MINIは特定の目的やニーズにこたえるべくして作られる。これはずっと先でも同じでありたい。この伝統とミライのふたつをうまくバランスさせるのが、MINI Designでの仕事を何倍も面白くさせる。同時に、MINIには既存の業界デザインに挑戦することができる。MINIは “constant change and the urban environment” がすべてだ。都市の鼓動に合わせて、われわれも進化する。多様性もだ。いろいろなオーナーやファンがいてこそ、MINIブランドが作り上げられるのだ。これらのつながりを大事にしたい」
10.「具体的には?」
「どんな先でも、街中で走るMINIをMINIとして認識させるものを大切にしたい。極論だが、ひょっとしたら未来の街では自動運転で走る大きな箱みたいなものだけが走っているかもしれない。そのなかでMINIがMINIでいられるものはきっと、現在のMINIのクルマの持つアイデンティティと同じでしょう。我々はクルマだけでなく、運転するときの体験も作らなければならない。例えばコネクティビティ。ディスプレーの大きさや性能の話の先にある、ユーザーがどのような体験をするのか。また、その中でMINIならではの体験はどのようなものがあるのか。これらもデザインしていかなければならない。ここには大きな可能性がある」
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