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ルノー、日産自動車、三菱自動車:ベンチャーキャピタルファンドを設立、全固体電池素材の開発会社にまず投資

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ルノー、日産自動車、三菱自動車:ベンチャーキャピタルファンドを設立、全固体電池素材の開発会社にまず投資

自動車アライアンスであるルノー・日産自動車・三菱自動車は9日、オープンイノベーションを支援する企業ベンチャーキャピタルファンド「アライアンス・ベンチャーズ(Alliance Ventures)」を設立し、今後5年間で最大10億ドルを投資すると発表した。

Alliance Venturesは初年度、クルマの電動化、自動運転システム、コネクティビティ、人工知能などの新たなモビリティに焦点を当てている新興企業や、技術起業家が参加するオープンイノベーションのパートナーシップを対象に最大2億ドルを投資する予定。その後も毎年投資を行うことにより、昨年発表した戦略的中期計画「アライアンス2022」の期間中、自動車業界で最大の企業ベンチャーキャピタルとなることを目指す。

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アライアンスの会長兼CEOであるカルロス ゴーンは、「このオープンイノベーションに対する取り組みにより、我々はアライアンスのグローバルなスケールメリットを生かしながら、新興企業や技術起業家に投資し、協業することが可能となります。このファンドはまさにアライアンスの核である協働の精神と起業家のマインドセットを反映したものです」と述べた。

アライアンスは10のブランドを有し、2017年には1,000万台以上を販売、主要な自動車市場すべてで事業を展開している。Alliance Venturesの特長は、このアライアンスのグローバルな規模とスコープの広さを、潜在的パートナーに対して提供することだ。

初年度2億ドルを次世代モビリティに対して優先的に投資

Alliance Venturesは新興企業に投資することにより、財務リターンを確保しながら、新技術や新ビジネスをアライアンスに取り入れることが可能となる。また、新規事業の立ち上げにおけるあらゆる段階で戦略的な投資を行い、新たな自動車関連起業家の輩出や新規のパートナーシップを創出していく。

Alliance Venturesの最初の投資先は、コバルトフリーの全固体電池素材を開発する米国企業のionic Materials(アイオニック・マテリアルズ)社。マサチューセッツ州を拠点に自動車および多様な用途に使われる高密度エネルギーバッテリーの性能およびコスト競争力向上を可能とする固体高分子電解質を開発している。ionic Materials社の株式取得は、研究開発協力を目的とした同社とアライアンスの共同開発契約の締結時に行われる。

このような投資を行うことで、Alliance Venturesはアライアンスのメンバーが将来使用する可能性がある新技術の特定と開発を後押しする。こうした取り組みはルノー、日産自動車、三菱自動車3社の協業を強化し、2022年末までに年間100億ユーロ以上のシナジー創出を目指す戦略的中期計画「アライアンス2022」の目標達成を支えるものだ。

同ベンチャーキャピタルへの最初の2億ドルの投資は、年間85億ユーロを超えるアライアンスの研究開発費とは別枠で実施される。

Alliance Venturesの方向性

Alliance Venturesを率いるのは、20年以上にわたる投資銀行での業務経験と、6年以上にわたるアライアンスでの経験を持ち、直近ではブラジル日産の社長を務めたフランソワ ドーサ。Alliance Venturesのチームはその専門知識と、ルノー、日産自動車、三菱自動車から集結したエキスパートから成るクロスファンクショナルチームにより見出された事業機会を活用していく。

この投資活動はアライアンスの戦略を補完するもので、クルマの電動化、自動運転システム、コネクティビティなどの分野での収益増、コスト削減、コスト回避を目指す。アライアンスは、「アライアンス2022」の期間中、EV用の共通プラットフォームおよび共用部品を活用し、100%EVを12車種投入する計画のほか、40車種への自動運転技術搭載と、無人運転車両による配車サービス事業への参画も目指している。

Alliance Venturesは既存の研究・先行開発チームと協力しながら、投資を行うイノベーション分野や市場を特定していく。また、ベンチャーキャピタルの専門家を採用し、同事業のプラットフォーム開発を行っていく。同ファンドは、シリコンバレー、パリ、横浜、北京にあるアライアンスメンバーの技術研究センターや、強固なイノベーションエコシステムを有するエリアの近くに拠点を設ける予定。

ルノー、日産自動車はそれぞれ40%ずつ、三菱自動車は20%を新ファンドに共同出資し、投資判断や業績管理を行う専門の投資委員会を設置する予定だ。

「この投資活動は、世界で最も将来性のある自動車技術の開発を行う新興企業をアライアンスに呼び込むことを目的としています」とゴーンは付け加えた。

中期計画「アライアンス2022」において、ルノー、日産自動車、三菱自動車は、3社合わせた年間販売台数は1,400万台以上に、また、売上高は2,400億ドルに達すると見込んでいる。

ionic MATERIALS社について

現在の二次電池の主流を占めるリチウムイオン式電池は非水系電解質型で、正極と負極の間に介在する電解質に液体を用いている。その液体電解質にはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートといった有機溶媒が用いられていて、水系電解液に比べてイオンの流れやすさにおいて利があるものの、発熱や毒性という問題がある。

これらを解決するために、たとえば東京大学の山田氏らは2種類のリチウム塩を一定の割合で水に混ぜることで常温でも液体となる電解液の開発に成功しているが、そもそも電解質を固体にしてしまえば──というのが固体電解質型の二次電池である。固体だけに以下のようなメリットがある。

 ・ 極低温から高温まで非水系電解質型に比べ温度特性に優れ、安全性が高い
 ・ 寸法を詰められることからエネルギー密度を高められる

いっぽうで、イオンの流れやすさ=伝導度が小さいことや正負極との固体同士の接触による抵抗の高さなどが課題として挙げられている。

iM社が進めるのは、高分子固体電解質の開発だ。物質名は記されていないが、上述のようなメリットに加えて同社は“Lower Cost”を掲げた。ゲルマニウムなどの高価な固体電解質を用いていないことが想像できる。具体的な性能としては、

 ・ 室温(20℃)における1.3mS/cm以上の導電率
 ・ リチウムイオン輸率は0.7
 ・ 単セル5V
 ・ 全固体構造に伴う負極の改良が可能
 ・ 高密度化/低コスト化/安定化……etc.

などを挙げている。Alliance Venturesの出資により本研究に加速がつき、BEVに革新的な技術が生まれることを大いに期待したい。

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