現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【試乗】単なるオマージュじゃない! ドライバーを興奮させる新型アルピーヌA110の走り

ここから本文です

【試乗】単なるオマージュじゃない! ドライバーを興奮させる新型アルピーヌA110の走り

掲載 更新
【試乗】単なるオマージュじゃない! ドライバーを興奮させる新型アルピーヌA110の走り

 昔のファンもいまどきのクルマ好きも満足できる完成度

 いよいよ新型アルピーヌA110が街を走り出す。アルピーヌの復活が宣言されたのが2012年。かなり現実味がありそうに思える最初のコンセプトカーがお披露目されたのは2015年。心を躍らせながら動向を見つめていたファンにとっては、まさしく待ちに待った、という感じだろう。新世代のアルピーヌはどんな性格を持っているのか、気になって仕方なかったことだろう。

フランスの名門ブランド「アルピーヌ」が2018年に日本に登場!

 でも、どうかご安心を。日本導入まではもうしばらく待たなければならないけれど、新しいA110は古くからのファンも、かつてのアルピーヌを知らないクルマ好きも、存分に満足できるだろうクルマに仕上がっていた。

──と先走る前に、アルピーヌA110というクルマについて少し説明をしておく必要があるかも知れない。欧州車好きやヒストリックカーのファン達の間では広く知られる存在ではあるけれど、とりわけ若い読者のなかには知らないという人がいても不思議はないからだ。アルピーヌは1995年に休眠に入り、2012年までその名前が正式に表舞台に出ることはなかった。

 アルピーヌは、モータースポーツに傾倒していたフランスの実業家、ジャン・レデレによって創設されたコンストラクターだった。レデレ自身がドライバーとしてル・マンやラリー、公道レースなどを走っていたこともあり、競技のためのスペシャルマシン製作という欲求が膨らみ始めたことがアルピーヌ誕生のきっかけになった。

 レデレはルノーのディーラーを経営していたことからルノーとの縁も深く、作り出すクルマは当初からルノーのパーツを多用していた。A110もR8のコンポーネンツなどを利用して開発され、アルピーヌにとって3番目のプロダクションモデルとして1963年にデビュー。1977年まで進化を続けながら生産されるほど愛された、歴史的な名車である。

 A110は、とても小さく軽いスポーツカーだった。バックボーンフレーム+FRPボディの車体は、わかりやすくいうなら現在の軽自動車規格より45cmほど長く4cmほど幅広い程度に過ぎない大きさ。車重は搭載エンジンなどによって異なるが、ほとんどのモデルが700kg台、もっとも重いモデルでも800kg台半ばほどである。その小ささと軽さ、そしてエンジンを車体の後端にマウントしたRRレイアウトのおかげで、A110は素晴らしく鋭敏でトラクション性能に優れ、ワインディングロードなどを走らせたら抜群に楽しく速いスポーツカーに仕上がっていた。

 その強みを生かして、A110はラリーの分野でも大きな活躍を収めた。1960年代の半ば過ぎから1970年代の頭ぐらいのヨーロッパで猛威を奮い、1973年からスタートした世界ラリー選手権の初代王者にも輝いている。1977年に生産が終了する頃には競技車両としては古さが目立つようにはなっていたが、その抜群にコントローラブルな性格はプライベーターにとっても大きな武器となり、長く第一線で活躍し続けた。現在でも初代A110のファンはフランスだけじゃなく世界的に多く、市場に出てくる数も少なければ相場も高いという状況が続いている。

 ちなみにアルピーヌは1973年にルノーの傘下に収まり、その後もスポーツカー/GTカー/コンペティションカーを生み出してきたが、先述のとおり一度は歴史の歯車を停めてしまう。以来、何度もブランドとしての復活が噂されたが、2012年秋、ついに復活が正式にアナウンスされた、というわけだ。

 新しいA110は、新たにルノー・グループの中の1社として立ち上がった新生アルピーヌによる第1作目のプロダクションモデルとなる。

 手足のように扱えるコントロール性のよさに心酔

 2代目を襲名した新型A110は、初代にちなんだモデルである。こうしたクルマのデビューのときには「かつての名車を現代流に再解釈し直して蘇らせた」というようなフレーズを耳にすることが多いのだが、新型A110の開発アプローチはそれとは似て異なっている。「A110がずっと作られ続けていたとしたらどうなっただろう? と想像しながら開発した」というのだ。

 つまりA110が時代とともに進化を繰り返してくる過程をひとつひとつ想像しながら、“A110らしさ”を追求した最新型を作り上げた、ということなのだろう。開発陣の心と頭の中にあったのは“復活”ではなく、“継承”であり“進化”だったのだ。

 だからなのだろう、2代目A110のなかにはスタイリングのみならず、初代の素晴らしかった部分をあちこちに見ることができる。車体のレイアウトはRRからミッドシップへ、基本構造はバックボーンフレーム+FRPボディからオール・アルミ製へ、サスペンションは4輪ダブルウイッシュボーンへ、エンジンは1.8リッターターボへ、車体の下面の後ろ1/3を占める大型リヤディフューザーが備わるなどエアロダイナミクスも考慮され……と、その“進化”の痕跡は多岐にわたるどころの話ではないが、走らせて感じられるテイストには驚くほど共通項を発見できたのだ。

 初代A110の最大の特徴は、とにかく軽快であり、俊敏であるということだった。そして新型A110もそこが最大の特徴であり、そこを声を大にして賞賛したいクルマに仕上がっていた。ワインディングロードやサーキットを走ったときのステアリングの正確さ、身のこなしの軽やかさと素早さは、大袈裟ではなく感動的といえるレベルである。フロントタイヤは常に貼りつくように路面を捕らえ続け、プッシングアンダーを感じさせることもなく、代わりにリヤタイヤがジワジワとグリップを手放していこうとするような動きを伝えてくる、絶品ともいえるバランス感覚。荷重移動を利用してリヤをスライドさせていく楽しみ方だって、ウデか慣れさえあればそう難しくなく味わえる。クルマ全体の動きがとにかくわかりやすく、ドライバーの操作に対してエンジンの反応もステアリングの反応もいいから、コントロールしやすいのだ。初代A110もまさしくそうしたタイプのスポーツカーだったから、古くからのファンにとっては感涙モノである。しかも新しいA110はそれをさらに高次元で味わわせてくれるのだ。かつてのA110を知らない世代にも、その楽しさと気持ちよさは間違いなく大きな感動を植え付けることだろう。

 1.8リッターターボはあらゆる領域から素早く充分なパワーとトルクを解き放ってくれて、単に1103kgという軽い車体を爽快に加速させるだけでなく、シャシーの働きを極めて効果的にサポートしている印象だ。252馬力に320N・mだから驚くほどの速さがあるというわけでもないが、ターボの存在をほとんど意識させない鋭いレスポンスと勇ましい吹き上がり、初代A110をも連想させる、できのいい4気筒のスポーツ・エンジンらしい歯切れのいいサウンドは、ドライバーを延々と興奮させ続けるに充分だ。しかも嬉しいことに、見た目のイメージよりも遙かに扱いやすいし、乗り心地も望外に快適で、日常使いだってGTカー的な使い方だって楽々こなしてくれる懐の深さも持っている。1台のスポーツカーとして、夢見心地になれるほど魅力的なのだ。これに惚れなかったら嘘だと思う。

 日本へ上陸を果たすのは、おそらく2018年の後半。価格に関しては現時点では当然未定だが、本国の5万8500ユーロ(約790万円/1ユーロ135円で換算)という数字がひとつの参考にはなるだろう。絶対的な金額としては安いとはいえないし、簡単に手が届くわけでもないけれど、夢を見ることぐらいはできてしまいそうな絶妙なところにある。だから今、僕の頭のなかはとても忙しいし、心は激しく掻き乱されている。

こんな記事も読まれています

どうせ乗るなら、悪路に強くてカッコいい車がいい! アウトドアカーの代名詞的な三菱 デリカD:5がベースのキャンパー
どうせ乗るなら、悪路に強くてカッコいい車がいい! アウトドアカーの代名詞的な三菱 デリカD:5がベースのキャンパー
月刊自家用車WEB
マツダのETC取り付け位置に唖然……色々あってフツーの場所なったけど戻した方がよくね??
マツダのETC取り付け位置に唖然……色々あってフツーの場所なったけど戻した方がよくね??
ベストカーWeb
なんで今でもこんなカッコいいの……サンルーフの開き方なんて痺れるぜ!!  やっぱ2代目ハリアーこそ至高!!  内装のデキ伊達じゃなかったのよ!
なんで今でもこんなカッコいいの……サンルーフの開き方なんて痺れるぜ!!  やっぱ2代目ハリアーこそ至高!!  内装のデキ伊達じゃなかったのよ!
ベストカーWeb
コンパクトなのに積載性ハンパなし!? [新型WR-V]はキャンプにもピッタリ! ホンダが提供する新たなライフスタイルとは?
コンパクトなのに積載性ハンパなし!? [新型WR-V]はキャンプにもピッタリ! ホンダが提供する新たなライフスタイルとは?
ベストカーWeb
2024年3月 中古車相場 値上り・値下りランキング ランクル70、高値傾向に
2024年3月 中古車相場 値上り・値下りランキング ランクル70、高値傾向に
グーネット
【2024年3月 中古車見積ランキング】プリウス(50系)がトップに返り咲き
【2024年3月 中古車見積ランキング】プリウス(50系)がトップに返り咲き
グーネット
GTワールドチャレンジ・アジアがセパンで開幕。8台参加の日本勢はDステーションが総合6位入賞
GTワールドチャレンジ・アジアがセパンで開幕。8台参加の日本勢はDステーションが総合6位入賞
AUTOSPORT web
キャンプにオススメ!野外での“トイレ事情”を解決する「キャンパートイレ」発売
キャンプにオススメ!野外での“トイレ事情”を解決する「キャンパートイレ」発売
グーネット
三菱 コンパクトSUV「ASX」改良モデル発表 “ダイナミックシールド”強調した新デザイン
三菱 コンパクトSUV「ASX」改良モデル発表 “ダイナミックシールド”強調した新デザイン
グーネット
「ランクル250販売前線」悲喜こもごも?? 意外に多い「辞退客」とは? ディーラーごとに対応は千差万別だった
「ランクル250販売前線」悲喜こもごも?? 意外に多い「辞退客」とは? ディーラーごとに対応は千差万別だった
ベストカーWeb
テスラ「モデル3」 最高速262キロ!専用デザインの新グレード「パフォーマンス」追加
テスラ「モデル3」 最高速262キロ!専用デザインの新グレード「パフォーマンス」追加
グーネット
ヒョンデ、高性能EV「IONIC 5 N」の国内仕様車の概要を発表 4月25日から期間限定モデル「First Edition」の購入予約受付を開始
ヒョンデ、高性能EV「IONIC 5 N」の国内仕様車の概要を発表 4月25日から期間限定モデル「First Edition」の購入予約受付を開始
月刊自家用車WEB
「サーキット以外の場所でやることにも意味があったと思う」盛り上がりを見せた岩佐歩夢発案のSFキャラバンが成功裏に終了
「サーキット以外の場所でやることにも意味があったと思う」盛り上がりを見せた岩佐歩夢発案のSFキャラバンが成功裏に終了
AUTOSPORT web
新型スイフトスポーツも新型ワゴンRも24年夏に登場予定か!? スズキは計5台の新型を投入で戦力アップなるか
新型スイフトスポーツも新型ワゴンRも24年夏に登場予定か!? スズキは計5台の新型を投入で戦力アップなるか
ベストカーWeb
「SLS AMG」の偉大さをメカニズムから検証。速さだけでないメルセデスの安全思想も注ぎ込まれた最高傑作の1台でした
「SLS AMG」の偉大さをメカニズムから検証。速さだけでないメルセデスの安全思想も注ぎ込まれた最高傑作の1台でした
Auto Messe Web
スーパーカーオーナーさん、いらっしゃい──新型ヒョンデ アイオニック5 N試乗記
スーパーカーオーナーさん、いらっしゃい──新型ヒョンデ アイオニック5 N試乗記
GQ JAPAN
愛犬家は要チェック!?ルノー「カングー」最長1年間貸与!モニターキャンペーン実施
愛犬家は要チェック!?ルノー「カングー」最長1年間貸与!モニターキャンペーン実施
グーネット
軽からミニバンまで!車中泊にぴったりの厚さ8cmマット、新デザイン登場 ベアーズロック
軽からミニバンまで!車中泊にぴったりの厚さ8cmマット、新デザイン登場 ベアーズロック
グーネット

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

940.01550.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

634.71358.0万円

中古車を検索
A110の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

940.01550.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

634.71358.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村