サーキット走行は、公道では発揮できない性能を存分に解き放てる爽快感とスリルに満ち溢れている。とはいえ、いきなりのサーキットデビューは不安がつきもの。そんなときはまずNISMOドライビングアカデミーへ入校してみては?NISMO契約のプロドライバーがドライビング技術を基礎からじっくりと教えてくれる。(REPORT:今 総一郎 PHOTO:宮門秀行)
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「ぎゃぁ~~~~!!!」
車内に響く絶叫とともに、富士スピードウェイの約1.5kmに及ぶホームストレートを爆走していた。メーターはすでに200km/hを超え、220km/h…、240km/h…、なお加速中。景色はみるみる過ぎ去り、ハンドルにどうにかしがみついていた。
気付いた瞬間には第1コーナーにノンブレーキで突っ込んでいた。慌ててブレーキを掛け、ハンドルを切ったが、たちまちクルマはスピン。グルグル回る光景の中、祈りも虚しく、勢いそのままにクラッシュした。無傷で済んだのは、これがシミュレーターでの出来事だからだ。しかし、リアリティを追及して開発したということだから、もし現実だったら大変なことになっていたに違いない。
サーキットを走るというと、とにかく速く走る姿を想像するが、その根本には自分のクルマの限界を把握していなければならない。しかし、独学よりも誰かに教わった方がはるかに効率的だろうと思っていた矢先に絶好の機会が訪れた。それがNISMOドライビングアカデミーだ。
このプログラムは日産のワークスチームとして活躍するNISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)が、サーキット走行を始めたい人に向けて考案したレッスンであり、「GT-R」「フェアレディZ」のほかNISMOロードカーのオーナーならドライビングスキルに合わせて設定した3つのプログラムを受講することで楽しく安全にドライビングテクニックを向上させることが可能とのこと。
校長を務めるのはNISMOアンバサダーのミハエル・クルム氏。そして講師を務めるのは、松田次生、柳田真考、藤井誠暢、星野一樹、千代勝正、佐々木大樹とNISMO契約のレーシングドライバーたち。その顔触れは豪華のひと言に尽きる。
今回、富士スピードウェイで開催されたメディア向けプログラムは、特設コースを用いたタイムトライアルを行なった後に、スポーツドライビングの基礎を学ぶ「ステージ1」とサーキットでの走り方を練習する「ステージ2」を体験し、再びタイムトライアルでレッスンの効果を実感するというものだった。
まずは1回目のタイムトライアル。3つのヘアピン→定常円(左回り)1周→定常円(右回り)1周とシンプルなコースを覚えて挑み、タイムは55秒53。受講者の中では[中の上]くらいで、平均53秒~54秒台の上位陣にあと一歩届かない。レッスン後、果たしてタイムはどこまで縮むのか?
次のメニューは円形に配置されたパイロンを5周する定常円旋回。レッスンで使用した「ノートe-POWER NISMO」は前輪駆動車であり、速度が速すぎると外へ外へと流されていくアンダーステアに見舞われ、ハンドルをいくら切っても曲がらない。最初のチャレンジで難なくクリアしたのだが、80%ほどでセーブして走っていると指摘された。そこでアドバイスを踏まえての再チャレンジでは、あえてアンダーステアを引き起こし、徐々にアクセルを緩めていった。すると、段々とパイロンへと近づいていき、タイヤが鳴りそうで鳴らないという絶妙な塩梅を確かに掴めた。公道では事故寸前の状況だが、その心配がいらないのは特設コースならでは。
こうして各レッスンを受けて、その成果を確かめる2回目のタイムトライアル。
クルム校長をはじめ、1日みっちりと指導してくれた講師陣が見守る中、「こんなことなら最初は手を抜けばよかった……」と一瞬の後悔がよぎったが、教わったことを意識して走ったタイムは54秒05とタイムの短縮に成功した。
独学では時間も手間も掛かる上に、冒頭のような失態を起こさないとも限らない。しかし、プロのレーシングドライバーによる的確かつ分かりやすい指導なら、わずか1日でも着実に効果があることを実感できた。
今回は「ステージ1」「ステージ2」で基礎を学んだが、さらに本格的なテクニックを学べる「ステージ3」やサーキットライセンスを同時に取得できる「サーキットライセンス取得プラン」も用意されているとのこと。これをきっかけにサーキット走行に踏み込んでみようかな。もちろん今度はNISMOロードカーとともに。
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