去る2017年10月1日、岡山県総社市で行なわれた『宮筋ものがたり』(二日目)に行ってまいりました。今回はイベント内の催し『旧き佳き時代の車たち』をメインにイベントレポートをお届けいたします。
昭和レトロをテーマとした地域活性イベント
清流とクラシックカーが織りなす景観が美しい。クルマと地域のコラボ『第6回新見交流会』
『宮筋ものがたり』は、総社市役所のある大通りから一本奥に入った通り、総社宮・総社商店街筋(宮筋)をメイン会場に9月30日・10月1日の二日間にわたって開催されたイベントです。
古くは平安末期からの歴史をもつ宮筋は、商人の町として栄えた活気を取り戻そうと、地域が一丸となって取り組んでいます。
イベントのテーマは『レトロ』。人も心もすべてが豊かだった大正から昭和の時代がイメージされています。懐かしい展示やワークショップなどの趣向を凝らした催しが満載。今回取材した『旧き佳き時代の車たち』もテーマに沿った催しなのです。まずは会場のようすをご覧ください。
思いがけない出会い、ジュニアスポーツ自転車の展示
宮筋を散策していると自転車店『カジタニ』の店先に、幼いころに少年の誰もが憧れたであろう、ジュニアスポーツ自転車の姿。なんと新車で展示されていました!
お聞きしたところ、古くなった蔵を解体している際、中から発売当時の姿のままでたくさん出てきたそうです。それを組み立てて展示しているとのこと。世代にはたまりません。ここにも“旧き佳き時代の車たち”の姿がありました。
名車たちのパレードでイベント二日目が開幕!
名車パレードでスタート。参加車輌70台によるパレードが華やかに行なわれました。三菱 デボネアのオープンカーには、総社市副市長と総社市のゆるキャラ・チュッピーの姿が。
70台の名車たちが総社市役所に集結
『宮筋ものがたり』内の催しのひとつ『旧き佳き時代の車たち』は、総社市のクラシックカー愛好グループ『CLUB・OVER HEAT』がメインとなって開催。総社市役所の駐車場を会場とし、1930~70年代に製造されたクルマたちがおもに展示されました。
オーナーインタビュー
今回は70台の名車たちが参加。参加オーナーのみなさんにインタビューいたしました。
■フォード モデルAタイプ 1930年製
オーナーの福島章さんは、このフォードモデルAタイプを雑誌で見てひと目惚れ。現代のクルマにはない魅力を堪能しているそうです。
「トルク感がすごい。小型の国産車に匹敵」
と絶賛する福島さん。980Kgの車体と3300ccという排気量の組み合わせは、ギアチェンジの必要があまりないのだとか。ウインカーの後付けやロッドブレーキを油圧ブレーキに変更するなど、安全面に対応した小変更はあるものの、ほぼ当時の姿です。
「このクルマはすべてにおいてアナログです。電子制御はもちろんなく、構造がシンプルなので意外に壊れません。ミッションはノンシンクロ。まるでレーシングカーを操る気持ちで乗っています」
たとえばエンブレムに付いた水温計は水銀温度計をラジエータ近くまで伸ばし、周囲の熱を測るというざっくりとしたもの。もちろんパワステではないので、非常に重いステアリングです。
■マツダ K360 1966年製
オーナーの柴田倫孝さんは、K360を含む全愛車のレストアをほぼひとりでこなしているそうです。
「よくミゼットに間違えられるのですが、2ストではなく4ストなんですよ」
と柴田さん。このK360は、ある会社から譲り受けた個体だそうで、このK360自体、台数が少なく貴重な存在です。部品はネットで見つけると購入してストックしておくそうです。じつはこの個体の他にK360の中期型、最終型も現在レストア中とのこと。本当にお好きなのですね。
■スバル R2 1971年製
オーナーの藤田直樹さんは自動車販売店の軒先で不動となっていたこのR2を、格安で手に入れました。家族にも知らせず積載車で連れ帰ったので、非常に驚かれたとのこと。
長らく不動でしたがある日突然、エンジンがかかり始めたそうです。藤田さんはさっそく車検を受け、ドライブへ。行き先はカーイベント『車輪村』。息子さん、友人の佐々木さん(このあと登場)と出かけたそうですが、なんと到着するまでに5時間もかかってしまったそうです。
「エンストが何度かあったんです。何分かするとまたかかるので、安全地帯で待機しながら走っていたら片道5時間もかかってしまいました。さすがに帰り道はJAFを呼びましたけどね(笑)。その後、佐々木さんが電気系、キーシリンダーを直してくれたので現在は快調ですよ」
■スバル サンバー バン(おそらく)1972年製
佐々木英一郎さんのサンバー バンは外装もエンジンもピカピカ。こだわりの1台です。以前はチェイサーのチューニングカーが愛車だったそうですよ。
「商用車がすごく欲しくなり、手に入れました。実家が茣蓙(ござ)の生産地なので、幼い頃から商用車に囲まれて育ったのが影響してるのかもしれないですね。」
チューニングカー好きはエンジンルームによく現れていらっしゃいました。心臓はR2のエンジンに、キャブレターはソレックス36を選択。エアクリーナーはラパンのものを流用。それ以外の部品は基本的に手作りしているそうです。
■ダイハツ ミゼット 1959年製
オーナーの伍賀公夫さんは、郵便配達仕様のミゼットで参加です。この個体は郵便配達仕様に塗り替えたものですが、実際に郵便配達で活躍していた個体もお持ちなのだとか。
とにかく三輪自動車が好きだと話す伍賀さん。免許を取ってはじめて乗ったマツダK360をきっかけに、いままで三輪自動車に魅了されっぱなしだそうです。
■ホンダ S800 1966年製
オーナーの富谷宏さんは軽快さ、コンパクトさを感じる、テールのかわいらしさからエスロク(S600)も考えましたが、ホンダのSといえば富谷さんのなかではエスハチ(S800)ということでこの個体を迎えたそうです。
富谷さんのエスハチは数少ない初期型。外装はもちろん、内装も美しく保たれていました。メーターパネルのレッドゾーンの色褪せがないのは、高回転エンジンである「S」のアイデンティティを大切にされている証でしょうか。
“昭和の元気”を感じたイベントでした
集まった名車たちはもちろん、このイベント全体に“昭和の元気”を感じました。単に「昔は良かった」ではなく、「時代を超えて伝え、愛していく大切さを広く伝えること」が、このイベントのミッションだと思います。
イベント開催のお知らせ
このイベントに参加していたグループ『倉敷旧車倶楽部』のみなさんが11月19日(日)にイベントを開催するそうです。題して『倉敷旧車倶楽部in吉備路もてなしの館』。朝10時より総社市吉備路もてなしの館にて開催されます。会場では車輌展示のほかにフリーマーケットや軽食販売などが行なわれるそうです。ぜひお出かけください。
[ライター・カメラ/野鶴美和]
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