地方のタクシーでいまだに見られるワケ
セダンやコンパクトカーなど、一般的なタイプの乗用車は前列に運転席と助手席、後列には3人座れるシートを備えた5人乗りが主流です。東京都内ではセダンのタクシーもこのタイプが一般的で、客は4人まで乗ることができ、運転手含め5人乗りです。
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しかし一部では、前列に3人乗ることができ、客が5人まで乗れるセダンのタクシーも存在します。全タク連(全国ハイヤー・タクシー連合会。東京都千代田区)に話を聞きました。
――セダンのタクシーで客が5人まで乗れるものがありますが、ほかのタクシーとどうちがうのでしょうか?
前列の運転席と助手席がセパレートになっていない、いわゆるベンチシートのタクシーは、前列にお客様をふたり乗せることができます。東京でも以前はそのようなタクシーがありましたが、現在はセパレートの車両がほとんどです。ただ、東京でもゼロではなく、地方ではそちらのほうが主流のところもあります。
――なぜ都内では数が少ないのでしょうか?
東京ではお客様がおひとりで利用する場合が多いうえ、ゆったりとした高級感のある車両が求められるため、お客様によっては窮屈にも思えるベンチシートの需要が少ないのでしょう。また、タクシー車両は走行距離に応じて入れ替えていきますが、東京ではそれが4、5年なのに対し、地方では8 10年とサイクルがちがいますので、ベンチシートの車両が比較的多く残っているというのが実情ではないでしょうか。
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全タク連によると、「ユーザーのニーズを受けて、タクシー車両のメーカーでもベンチシートの用意は少なくなってきているのではないか」と話します。
前列ベンチシート型の「セドリック」を製造していた日産によると、「単純にニーズがあまりない」ことから、現在は一般の乗用車、タクシーともに、前列3席人掛けシートを設定する同社のクルマはないそうです。ミニバンなど、多人数乗れるクルマの需要はあるものの、「あえて前に3人乗せなくても、3列シートなどで対応できる」といいます。
あえて前に3人乗せなくても… ベンチシートはいま
大型トラックや軽トラック、バスなどでは、運転席の横にふたり掛けというのは珍しくありませんし、たとえばトヨタ「ハイエース バン」の一部には前列3席の設定がりますが、確かにセダンやミニバン、SUVなどの一般的な乗用車において2017年現在、そうしたものはあまり見られません。トヨタが今後発売を予定している新型タクシー専用モデル「JPN TAXI」も、前列は独立の2席です。
少し過去にさかのぼり、前列3席、後列3席というレイアウトに絞って一般乗用車を調べてみると、日産「ティーノ」(販売期間:1998 2003年)やホンダ「エディックス」(同:2004 2009年)、トヨタ「ビスタアルデオ」(同:1998年 2003年)、「プロナード」(同:2000年 2004年)、フィアット「ムルティプラ」(同:1998 2010年)などがありましたが、いずれも販売を終了しています。また、「エディックス」と「ムルティプラ」は前列3席ではありますが、それぞれが独立したシートであり「ベンチシート」とはいえません。
前列がベンチシートのクルマはコラムシフト(ハンドルの付け根から伸びるタイプのシフトレバー)である場合が多かったことから、このようなクルマは略して「ベンコラ」とも呼ばれます。「ベンコラ」の中古車を多く取り扱う名古屋オートガレージ(愛知県大府市)によると、「横幅が広いアメリカのクルマに多かったのですが、日本車の規格では窮屈になるので、あまり根付かなかったのでしょう」と話します。現在では、アメリカ車でも前列ベンチシートは少なくなっているそうです。
ちなみに、「前列ベンチシート」そのものは、軽自動車を中心にいまも見られます。「ムーヴ」「ウェイク」などで、ふたり掛け前列ベンチシートを採用しているダイハツによると、「ゆったりと座れて、横移動もしやすく使い勝手がよいといったメリットがあります。こうした車両ではパーキングブレーキもフットブレーキで、シフトレバーもインストゥルメンタルパネルから伸びる『インパネシフト』になっています」とのことです。
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