現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【世界の名車】消滅が噂されるランチアの代表作「デルタ」

ここから本文です

【世界の名車】消滅が噂されるランチアの代表作「デルタ」

掲載 更新
【世界の名車】消滅が噂されるランチアの代表作「デルタ」

 グループA時代の世界ラリー選手権で6年連続チャンピオンを獲得

 時代の移り変わりとともにさまざまなメーカーが誕生し、消えていく。それはある意味では自然な流れといえなくもないけれど、そのブランドをこよなく愛した人達にとってはこのうえなく淋しい出来事だ。

【100万円で狙える】女子ウケ抜群! デートで見栄をはれる中古輸入車4選

 今、また多くのファンに愛されてきたブランドがひとつ、消えようとしている。以前から消滅がウワサされていたランチア、である。2014年に発表されたFCAの中期経営計画のなかでランチア・ブランドがイタリア国内専売になることは示唆されていたが、ついにそのタイミングが来て、しかもイタリア国内でもランチア・ブランドで販売されているのはプレミアム・コンパクトカーのイプシロンのみ、ニュー・モデルに関する真実味のあるウワサは何も聞こえてこない。

 ランチアは1906年設立の歴史あるブランドで、上品で格調高いクルマばかりを作り続けてきた。先進的な技術を積極的に採り入れてきたことでも知られていて、ランチアの作るクルマは概ね俊足でもあった。当然ながらモータースポーツの世界にもその名を残してきている。

 とりわけラリーでの活躍は、ランチアを語るときには絶対に無視することができないほど。フルヴィアHF、ストラトス、ベータ・クーペ、ラリー037、そして一連のデルタ・シリーズと、1970年代から1990年代初頭までの国際ラリー、世界ラリー選手権に送り込まれたクルマ達は軒並み猛威を振るったのだから。

 なかでもデルタHF 4WDとデルタ・インテグラーレの強さは、強烈な印象としてオールド・ファンの心に残っていることだろう。世界ラリー選手権がグループAで争われることになった初年度の1987年から1992年まで、6年連続でマニファクチャラー・チャンピオンシップを制覇しているのだ。

 デルタは、元をただせばVWゴルフに対抗して1979年に発表された、前輪駆動の5ドア・ハッチバックだった。同じファミリーカーのカテゴリーにあって、ゴルフが比較的シンプルな大衆車然としたモデルであったのに対し、アルカンターラを用いた高級車然としたインテリアを持たせることなどで差別化を図った、ランチアらしい上品なクルマであった。

 最初の異変は1985年。グループB規定で行われていた世界ラリー選手権を戦うために、デルタS4というモデルがデビューした。デルタの名を持ち、デルタのイメージを持つスタイリングをしていたが、中身は──ほかのグループBマシン達がそうであったのと同じで──まったく別モノ。1.8リッター直4DOHC+ターボチャージャー+スーパーチャージャーという強力なエンジンをミッドシップ・マウントし、フルタイム4WDで駆動するという完全な専用設計で、ロードカーは”12カ月で200台”というグループBのホモロゲーションを満たすためだけに作られた。

 そして1986年いっぱいでグループBが廃止となり、翌年からグループA規定で争われることが決まると、次の異変が現れる。デルタS4で培った4WD技術を盛り込み、165psの2リッター直4DOHC+ターボチャージャーを搭載した”デルタHF 4WD”を発表。デルタのラインアップの最上級モデルとして市販するとともに、いち早く競技規定に沿って開発を進めてきたこのマシンでラリーを戦いはじめ、いきなり勝ち星を稼ぎはじめたのだ。

 そして13戦9勝という圧倒的な強さで1987年のシリーズ・タイトルを獲得するわけだが、ランチアは開発の手をまったく緩めなかった。シーズン半ばの9月、デルタHF 4WDに大幅に改良を加えた”デルタHFインテグラーレ”をデビューさせる。

 視覚的にもっとも大きな変化は、よりワイドなホイールを収めることのできるブリスター・フェンダーを持っていたこと。そしてエンジンは185馬力と20馬力ほど出力が上げられていたが、重要なのは単にその数値ではなく、バルブまわりの改良やターボチャージャーの大容量化、大型インタークーラーの採用など、さまざまな手が加えられていたことだ。

 同様に4WDシステム、サスペンションまわり、ブレーキまわり、ギヤ比などにも、キメ細かな改良が加えられている。グループB時代とは異なりグループA規定は改造範囲がかなり限定的だっていたため、ベースとなるクルマそのものを大幅にバージョンアップしていかないと、競技車両のパフォーマンスを上げていくことができなかったからだ。

 1995年に惜しまれつつも生産終了

 1989年のシーズン途中で発表された”デルタHFインテグラ-レ16V”も、もちろんその法則に則って開発されたモデルである。名称どおりパワーユニットが16バルブ化され、タービン、インタークーラー、インジェクターなどが変更されて、最高出力はいよいよ200馬力に。

 そして0-62mph(約100km/h)加速タイムは5.7秒、最高速度は220km/hへとパフォーマンスアップを果たしている。エクステリアでも目立つバージョンアップが行われていて、エンジンルームのクリアランスを大きくとるためにボンネットに膨らみが持たされ、またヘッドライトまわりやバンパーまわりなどに冷却孔が可能な限り設けられるようになった。

 そしてこれが重要なことなのだが、トレッドが拡大され、よりワイドなホイールを履き、さらには4WDシステムの駆動力配分がそれまでよりFR寄りになったことで、コーナーでの回頭性が高まった。より”曲がる”クルマへと変化したのだ。ラリーのためのベース車両という意味合いでももちろんだけど、ロードカーとしての楽しさも大幅に増していたのである。

 その後、デルタHFインテグラーレは、1992年にさらにワイド・トラックになりブリスター・フェンダーも拡大されるなど大幅に進化した”デルタHFインテグラーレ16Vエヴォルツィオーネ”に、1993年にはエヴォルツィオーネの210馬力から215馬力へとパワーを上げつつ出力特性を変えるなど細かな変更を受けた”デルタHFインテグラーレ16Vエヴォルツィオーネ2″と発展し、ラリーへのワークス参戦をやめた後も一定以上の人気を保ちながら、1995年、惜しまれながら生産中止となる。

 以来、ランチア・ブランドからはモータースポーツで活躍するクルマは生まれてきていないし、スポーツ・モデルそのものも生まれてきていない。

 そういうこともあるからだろうか、昨今、いわゆるヤングタイマーと呼ばれる世代のクルマ達が脚光を浴びたなかで、世界的にもっとも早く価値が認められ、もっとも早くもっとも激しく流通相場が値上がりしたのは、このランチア・デルタ・インテグラーレだった。

 ランチア・ブランドの終焉がこれまで以上にリアルに感じられるタイミングであることもあって、ファンとしてはとても複雑な心境なのだ。

 【画像ギャラリー】

こんな記事も読まれています

さよなら「ゾエ」! ルノーのEV先駆者を振り返る 後継は「5」 楽しい走りで電費は優秀
さよなら「ゾエ」! ルノーのEV先駆者を振り返る 後継は「5」 楽しい走りで電費は優秀
AUTOCAR JAPAN
「911ターボ」登場から50年! 「911ダカール」と「タイカンGTS」と並んでポルシェの過去・現在・未来を表現したブースがおしゃれ
「911ターボ」登場から50年! 「911ダカール」と「タイカンGTS」と並んでポルシェの過去・現在・未来を表現したブースがおしゃれ
Auto Messe Web
王者ミケリスが貫禄のポール・トゥ・ウイン。新たな僚友ジロラミも初勝利/TCRワールドツアー開幕戦
王者ミケリスが貫禄のポール・トゥ・ウイン。新たな僚友ジロラミも初勝利/TCRワールドツアー開幕戦
AUTOSPORT web
羽付き9X8のデビュー戦9位は「最大限の結果」とプジョー技術ボス。1周目の事故で損傷の94号車も完走
羽付き9X8のデビュー戦9位は「最大限の結果」とプジョー技術ボス。1周目の事故で損傷の94号車も完走
AUTOSPORT web
もはやガソリン車より便利に…? 高速道の「EV充電器」怒涛の増設! 魔の空白区間?―“出ていいよ”
もはやガソリン車より便利に…? 高速道の「EV充電器」怒涛の増設! 魔の空白区間?―“出ていいよ”
乗りものニュース
全長5.7m級の「斬新トラック」実車公開! ド迫力“カクカク”デザイン×「全面ステンレス」ボディ採用! 「サイバートラック」を披露
全長5.7m級の「斬新トラック」実車公開! ド迫力“カクカク”デザイン×「全面ステンレス」ボディ採用! 「サイバートラック」を披露
くるまのニュース
1225馬力の新「ハイパーカー」欧州初上陸! 中国アイオン(AION)新型EV導入へ
1225馬力の新「ハイパーカー」欧州初上陸! 中国アイオン(AION)新型EV導入へ
AUTOCAR JAPAN
ランボルギーニ、新型車を間もなく発表へ…電動『ウルス』の可能性も
ランボルギーニ、新型車を間もなく発表へ…電動『ウルス』の可能性も
レスポンス
タイヤ装着前に信号が変わるミスが発生、クルーは転倒。ガスリーはピットストップの改善を誓う/F1第5戦
タイヤ装着前に信号が変わるミスが発生、クルーは転倒。ガスリーはピットストップの改善を誓う/F1第5戦
AUTOSPORT web
BYDが輸入車の聖地に新店舗オープン! EVバスも運行予定の目黒通りはBYD率が高まること必至です
BYDが輸入車の聖地に新店舗オープン! EVバスも運行予定の目黒通りはBYD率が高まること必至です
Auto Messe Web
「フェラーリは戦略以外のすべてで強い」と逆転勝利のトヨタ技術首脳。改善傾向のタイヤ摩耗も警戒
「フェラーリは戦略以外のすべてで強い」と逆転勝利のトヨタ技術首脳。改善傾向のタイヤ摩耗も警戒
AUTOSPORT web
新しくもどこか懐かしい? 「愉しむためのBEV、時代が変わる予感」 ヒョンデ・アイオニック5N
新しくもどこか懐かしい? 「愉しむためのBEV、時代が変わる予感」 ヒョンデ・アイオニック5N
AUTOCAR JAPAN
斬新“レッド内装”採用! ホンダ新型「“スポーティ”セダン」世界初公開! 異形ハンドル&特殊モニターに「カッコイイ」の声も!「GT」登場
斬新“レッド内装”採用! ホンダ新型「“スポーティ”セダン」世界初公開! 異形ハンドル&特殊モニターに「カッコイイ」の声も!「GT」登場
くるまのニュース
もてぎに「働くクルマ」が大集合、ゴールデンウィークにイベント開催へ
もてぎに「働くクルマ」が大集合、ゴールデンウィークにイベント開催へ
レスポンス
白熱する来季F1ドライバー市場、“主役”はレッドブル離脱噂のフェルスタッペン&新規参戦アウディ?
白熱する来季F1ドライバー市場、“主役”はレッドブル離脱噂のフェルスタッペン&新規参戦アウディ?
motorsport.com 日本版
もはや「スーパーカー」!? めちゃ“黒い”トヨタ「ハイエース」登場!“クセ強”1BOXバンが「カッコ良すぎ」と反響集まる
もはや「スーパーカー」!? めちゃ“黒い”トヨタ「ハイエース」登場!“クセ強”1BOXバンが「カッコ良すぎ」と反響集まる
くるまのニュース
『ホールデン・コモドア』国際交流戦に現れ、快走したオーストラリアンV8【忘れがたき銘車たち】
『ホールデン・コモドア』国際交流戦に現れ、快走したオーストラリアンV8【忘れがたき銘車たち】
AUTOSPORT web
メルセデス・ベンツ Gクラスの電気自動車がまもなくやってくる?──GQ新着カー
メルセデス・ベンツ Gクラスの電気自動車がまもなくやってくる?──GQ新着カー
GQ JAPAN

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

520.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

77.7456.5万円

中古車を検索
デルタの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

520.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

77.7456.5万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村