WRX STIの歴代モデルに搭載されてきたエンジンが次期型では遂に変わる。スバル WRXのフラッグシップであるSTIは、次の世代からエンジンをWRX S4と同じ2L直噴ターボのFA20型 水平対向4気筒DITエンジンに切り替えると伝えられている。多くのスバルファンに愛されたEJ20はもう古いのか? 新世代エンジンは、伝統あるエンジン以上の性能を持っているのか?
文:片岡英明/写真:編集部、SUBARU
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WRX STIは現行型で伝統のエンジン見納め?
BRZに積まれてデビューしたFA20型DOHCエンジンは、レヴォーグでは直噴ターボを積み、これをWRX S4に拡大採用した。トランスミッションは8速マニュアルシフトを備え、燃費もいい高トルク対応型のリニアトロニック(CVT)だ。
この流れで行くと、次のWRX STIはFA20型DITターボに6速MTの組み合わせになる。現行のWRX STIの心臓は、レガシィがデビューした1989年に登場したEJ20型DOHCターボだ。
排気量は1994ccで、高出力と高トルクに耐えられるように5ベアリング支持のクランクシャフトやコッグドベルト駆動を採用するなど、最初から高回転と高負荷に耐えられる設計としていた。
古いEJ20型エンジンがFA20型よりも優れる点はあるのか?
EJ20型エンジンはモータースポーツに使うことを前提に開発されたから、最初からパワーアップ、トルクアップを前提として設計されている。チューニングしても耐えられるように、余裕をもって設計された。
1990年代から世界ラリー選手権(WRC)に参戦したが、3連覇の達成に貢献するなど、素性のよさが光っている。
また、21世紀になるとレースでも大活躍。ニュルブルクリンク24時間レースで勇名を馳せた。また、スーパーGTに参戦しているBRZに積まれているのも、基本設計を同じくするターボエンジンだ。
EJ20型DOHCターボは、基本設計こそ古いものの、モータースポーツで鍛えられ、今も一級の実力を備えている。
ビッグボア設計のオーバースクエアエンジンだから高回転は得意だ。ターボ仕様でも8000回転までストレスなく回る。気持ちよくパワーとトルクが盛り上がり、レスポンスもシャープだ。
高回転のパンチ力と切れのよさはFA20型DITを大きく凌ぐ。しかもパワーアップし、トルクを増強しても信頼性は高く、トラブルも少ないのが強みである。
次ページ:FA20型エンジンはEJ20に勝っているのか?
FA20型は優位性多数ながらまだ負けている部分も
最新のWRX STIに積んでいるEJ20型DOHCターボは、最高のパフォーマンスを発揮するために、割り切れる部分は割り切り、高性能を徹底的に追求した。
燃費はFA20型に遠く及ばないし、排ガスも規制値ギリギリだ。扱いやすさや静粛性などにも不満が出る。
EJ20型DOHCターボは、典型的な20世紀のエンジンだ。高性能至上主義を貫き、環境対応はそれなりと割り切った。
ボアとストロークがスクエア設計のFA20型直噴DOHCターボは、地球環境に配慮した新世代の水平対向エンジンである。冷寒時から熱が入りやすく、燃焼効率もいいから排ガスはクリーンだ。
また、実用燃費も悪くない。排ガス規制が厳しくなっても、まだ伸びしろがあるエンジンなのである。
弱点は、EJ20型エンジンより高回転まで回らないことだ。また、軽量化を徹底し、ぜい肉をそぎ取ったエンジンだから、チューニングに耐えられない可能性もある。
これはトランスミッションにも言えることだ。モータースポーツで使うことを考えると不安材料になる。高回転まで回したときのエンジンサウンドが官能的じゃない。これもボクサーマニアは不満だろう。
『高回転まで回せるエンジンへ』変貌しつつあるFA20型
が、最新のFA20型直噴DOHCターボエンジンは、バルブスプリングなどを強化して高回転まで回せるように改良している。バルブスプリングなどを強化したことにより、レブリミットは6500回転になった。
BRZは自然吸気のFA20型エンジンだが、こちらは7000回転まで使いきれるエンジンへと進化している。徐々に高回転まで回せるエンジンに変身しつつあるのだ。
パワーとトルクを上げるためにパーツなどの強化を精力的に行い、冷却にも知恵を絞るだろう。遠からず最高出力、最大トルクともEJ20型エンジンを上回るはずである。
気持ちいい加速に磨きがかけられれば、ドライバビリティは悪くないからサーキットでタイムを縮められるはずだ。実用燃費と快適性能も良好だからロングドライブもラクになる。
モータースポーツは時間をかけてFA20型直噴ターボエンジンを熟成していくだろう。しばらくは参加するカテゴリーによってEJ20型エンジンと使い分けるはずだ。
ここ数年、ヨーロッパの2Lターボエンジンは一気にレベルを上げている。FA20型の水平対向4気筒ターボも、クリーンでパワフル、そして上質なエンジンに育てて欲しいと願う。
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