大卒初任給が2万6200円の時代に238万円で登場
1967年に238万円と当時高価な価格で販売されていたトヨタ2000GT。新卒大学生の初任給が2万6200円から換算し現在の価格に照らし合わせると約2000万円。前期型、後期型の2000GTを合わせても337台しか製産されず1台作るごとに60万円近くの赤字が出ていたという。そんなトヨタ2000GTだが、現在でも9割以上が日本に残っているとのことだ。今回は2000GTオーナーズクラブジャパンに取材をしてきた。
今回取材協力をして頂いたトヨタ2000GTオーナーズクラブジャパン会長の瀬谷さんは33年間2000GTを所有している。
「さすがに新車は高額で購入できませんでした。縁あって中古で購入したのが33年前ですね」
現在トヨタ2000GTオーナーズクラブジャパンは77名のクラブ員がいるという。
「売りたい人はいないですね。新車から乗っている人はほとんど居なくて、お父さんの代から受け継いでいる方が多いです。車両は日本に9割が現存しています」。
337台しか製産されいないなか、9割が残っていることが驚きではないだろうか。
「いろいろとトラブルがありましたが、解決していくごとに愛着が湧いてきますね。自分が乗れなくなったらせがれに譲っていくクルマだと思います」と語る。
市販車の発表前に積極的にレース参戦
トヨタ2000GTをあらためて振り返ると1965年10月に開催された東京モーターショーでプロトタイプがデビュー。その2年後の1967年5月に市販車が発売されているが、じつは発売前の1966年第3回日本GPに出場し3位入賞を果たしている。(ゼッケン15の写真は第3回日本GP仕様)
また同年10月にFIA公認のスピードトライアルに出場し、3つの世界記録と13の国際記録を更新したことでも有名だ。現在、愛知県にあるトヨタ博物館に所蔵される2000GTトライアルカーはレプリカで、残念ながら実車は現存していないと言われている。
またクルマ好きなら1度は見たことのある写真かもしれないが、1967年4月に日本初の富士24時間レースに2台の2000GTとスポーツ800がワークス参戦し、ワン・ツー・スリーフィニッシュを果たしている。もう1台のトヨタスポーツ800はトラブルに見舞われ4台並んでゴール出来なかったことが悔やまれる。写真は同年のデイトナ24時間でフェラーリが行った編隊でのゴールの模様をまねてフィニッシュした瞬間のものだ。
市販車が発売する前にレース参戦し、輝かしい成績を刻んできた2000GTの商品PRを見ると、当時の人が憧れる理由がわかる気がする。その後市販車が発売され、わずか3年間という短い期間だったが337台が製産された。そのうちの前期型100台は左ハンドル仕様となっていた。また後期型に左ハンドルの設定はなかったと瀬谷さんは教えてくれた。
そんな337台のなかでもプレミアムと言えるモデルが何種類か存在する。その1台がボンドカーだ。映画「007」でオープンモデルとして登場した2000GTは今でも多く人の目を輝かせる。2台現存する内の1台は、現在トヨタ博物館に展示されている。
また廉価版として2.3LのSOHCエンジンを搭載したトヨタ2300GTも数台製産され、日本に2台現存しているという。
さらにわずか3台だけ塗られたゴールド色のトヨタ2000GTもあった。ゴールド色は1967年の東京モーターショーに展示されたあとに一時期はオーナーの手に渡っていたが、現在はヤマハが保管している。そのうちの日本に2台現存しているから驚きだ。
当時の純正カラーは前期型に白、シルバー、赤の3色設定。後期型はグリーンとブルーが追加された5色だと瀬谷さんは教えてくれた。「白が7割ぐらいと多かったですね。オプションは後期モデルのみエアコンがありました。前期はなかったですね。それと、オートマチックモデルのトヨグライドが後期型にありました」
クラウン用のM型直列6気筒SOHCエンジンはヤマハ発動機によりDOHC化。楽器に使われるウッドをダッシュボードパネル、ステアリングなどに使用し高級感を演出している。
ロングノーズ・ショートデッキと当時誰もが憧れたデザインに、サイドウインドウがつり上がった目のように見えることからチャイニーズ・アイと呼ばれている。ちなみに前期型と後期型の違いはフロントのフォグランプが大きいほうが前期型で、リヤの変更点はリフレクターが巨大化しているのが後期型だ。ほかにも変更点はあるが今回は割愛させていただく。
またホイールはプロトタイプではワイヤーホイールを着用していたが、市販車では世界初のマグネシウムホイールを装着。センターロックが非常に美しい。多くの車両はマグネシウムホイールを保管し、リプロダクションのアルミ製を履いている個体が多い。
50年経った今でも多くの人を魅了するトヨタ2000GT。こんなに人々に愛され続ける自動車が今後生まれるだろうか。だからこそ、ヘリテージを大事にし今後の自動車文化を意識したクルマ作りをし続けてほしいと思う。 (取材協力:オールドナウカーフェスティバル・トヨタ2000GTオーナーズクラブジャパン)
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