ミニバンやSUVの走りが向上した今でもセダン独自の魅力がある
筆者は、セダンを2台も所有するほどのセダン好きである。独身だからということもあるが、基本的に自分が所有するクルマはセダンかクーペしかありえないと考える、今では極めて奇特なタイプといえる(人生で最初に買ったのはハッチバック車だったが)。
ナゼそんなにもセダンに惹かれるのかというと、今でもセダンはミニバンやSUVより高級で走りが良くなる資質が高いといえるからだ。価格帯や排気量などの車格が同じで、セダンとそれ以外の選択肢があれば、迷わずセダンを選ぶ。
今では信じがたいことだが、1990年頃はトヨタのマークIIやクラウンが月平均2万台近くも売れ、月間販売台数ランキングの上位はすべてセダンが占めていた。
しかし、1990年代中盤に巻き起こったRVブーム以降セダン人気は大激減。ミニバンの居住性や実用性、SUVの多機能性に慣れるとセダンの必要性を感じなくなるのは無理もない話だろう。
今やセダンは子供や若い女子へのウケが悪く、現在のセダンユーザーの平均年齢は60歳をはるかに超えているといわれる。セダンを運転している人は中高年が圧倒的に多い。それでも、だからといってセダンは決して絶滅することはなく、少ないながらも一定のシェアを保持し続けている。
ミニバン派やSUV派からすれば、セダンがなくならずに存続していることが不思議にさえ思うかも知れないが、セダンは不滅なのだ。
重心の高いミニバンやSUVでもセダンと互角以上の走行性能を備えたモデルが珍しくなくなった今にあって、セダンがなくならない理由は、やはり「高級で走りが良い」というセダンの本質的な魅力が今も失われていないからだろう。
荷物と同じ部屋に乗るのは貨物車に乗車するようなもの
まず、セダンはハッチバック車に比べてボディ剛性で有利である。
今どき、ハッチバックやワゴンだからといってボディが緩く感じるなんてことはないが、それでも厳密には2ボックス車より3ボックス車のほうが高剛性であることは明らかだ。
たとえば、生産工場のラインに流れるボディシェルを見比べると、ボディの後端が輪切りの穴になっている2ボックス車より、3ボックス車の方がいかにも丈夫そうに見える。
実際、セダンとワゴンの両方が設定される車種で比較しても、やはりセダンのほうがより高剛性でリヤまわりの重心が低いために、走りが良いと評価される場合がほとんどだ。
さらに3ボックス車のセダンは「乗員の居住空間と荷室が別々になっている」ことから、2ボックス車よりも本質的に高級であるといえる。極端にいえば、2ボックス車やワンボックス車は貨物列車のなかに乗車するようなものといえる。
また、2ボックス車のドンガラボディは、3ボックス車よりもノイズが反響しやすくなることから、静粛性でもセダンに優位性があるし、空力特性でも基本的には3ボックス車のほうが有利とされている。
あらゆる技術が進歩した今では、一般的にはほとんど実感できない程度の差ではあるが、前述したように、やはりセダンには今でも積極的に選ばれる理由が明確にあるのだ。
国家元首や皇族・王族が乗るクルマは今でもセダンが主流ということから、世界的にも「セダンは高級」と認識されていることを証明している。英国王室はレンジローバーではなくジャガーのXJに乗っているし、去年来日したロシアのプーチン大統領もマイバッハの特殊車両を持ち込んでいた。
ベントレーやマセラティがSUVを出すようになっても、真のフラッグシップはセダンであることに変わりはない。というわけで、セダンにはクルマ好きなら理解、納得できる魅力がいっぱいなのである。
セダン偏愛主義者からの提案としていわせていただくと、子育て世代など、ミニバンなどの実用性が絶対的に必要な状況では仕方がないが、そういう必要性に迫られないクルマ好き諸兄はセダンに乗るのがシブイ!(はず)
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