FRスポーツとして確実に進化を遂げた
S14シルビアは、6代目シルビアとして、1993年10月に登場。開発コンセプトは、「意のままに楽しい走りとセンスの良さを徹底追及したスタイリッシュスポーツクーペ」。「センスの良さを徹底追及したスタイリッシュ」云々はかなり疑問が残るが、メカニズムは確実な進歩があった。
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シャーシそのものは、先代のS13から踏襲したものだが、ボディサイズはひと回り大きくなり、全車3ナンバー化された。ただ大きくなっただけでなく、ボディ剛性はS13に比べ、曲げ剛性で約200%、捻り剛性で約150%と大幅に強化され、全体的な安定感がアップ。
サスペンション形式も、フロント=ストラット、リヤ=マルチリンクとS13と同じだが、サスペンションストロークは増えていて、ジオメトリーも改良。とくにリヤはよく動くようになり、接地性が向上し、トラクションが良好に。FRスポーツとして、歓迎できるアップデートが施されていた。
エンジンも、S13の後期から搭載されていたSR20が採用されたが、S14へのフルモデルチェンジに合わせ、NAにもターボにも可変バルブタイミングシステムのNVCSを採用。ドライバビリティがよくなり、ハイオク仕様になったNAは、最高出力が20馬力もアップ(160馬力)。
ターボ車は、レスポンスのいいボールベアリングタービンになり、コンプレッサーハウジングも最適化されたことで、パワーは220馬力に。マフラーも大容量化されていた。
人気のあったS13型に比べ市場の反応は今ひとつ
このパワーアップに合わせ、ブレーキも容量も増やされ、ターボ車には対向ピストンキャリパーも標準化。コンセプトの「楽しい走り」という面では、かなり満足できるいいクルマに仕上がっていたのだが、市場の反応はS14シルビアに冷たかった……。
不人気の理由は、スタイリング。「アートフォース」というキャッチで、大ヒットとなった先代シルビア=S13は、あの流麗なスタイルとFRのパッケージというのが、人気の原動力だったのに対し、S14のボディは、大きく、丸みがあり、とにかくシャープさが乏しかった。
デビューから3年後、1996年6月のマイナーチェンジで、ライトまわりを一新し、いわゆる「ツリ目」に変更し、人気回復を図るが、RVブームなどの影響もあり、販売台数はさほど伸びずにモデル末期を迎えることに……。
日産のような規模の大きな会社になると、社内にもいろいろな意見があるのだろう。そのために車種ごとのキャラクターも、なかなかキープできなかったのかもしれないが、S14はパフォーマンス面では秀逸だっただけに、ボディサイズとボディデザインの問題で、市場の支持が低迷したままだったというのは、何とも惜しい。クルマ作りの難しさを考えさせられた一台といえよう。
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