ル・マンで優勝した787Bの前身モデル
国産メーカー唯一のル・マン24時間レースのウイナー、マツダ787Bの前身であるマツダ767Bがアメリカのオークションに出展されることになった。
【今さら聞けない】マツダのロータリー搭載車はなぜ消えたのか?
767Bといえば、マツダのCカーのイメージカラーともいえる、レナウンのブランド「チャージカラー」を最初に纏ったマシン。654cc×4ローターの自然吸気(NA)ロータリーエンジン13Jを搭載し、1988年のデイトナ24時間にデビュー。総合5位に入賞した。
1989年のル・マン24時間には3台がエントリーし、全車完走。IMSA GTPクラスでは表彰台を独占し、総合でもホッジス・ケネディ・デュドネ組がドライブした201号車が7位に入った。
写真を見ると、オークションに出展されるのは、203号車のようだが、このクルマには、寺田・デュエズ・バイドラーが搭乗。総合11位というリザルトが残っている。
ちなみに、2015年のグッドウッド・フェスティバルのヒルクライムでクラッシュしてしまった202号車には、1989年のル・マンに従野・ルゴー・フォーブスロビンソンが乗り、日本車・日本人による過去最高位タイ=9位でフィニッシュしている。
4ローター化して630馬力を絞り出した
特筆できるのは、やはりエンジン。市販車と同じ2ローター時代は、グループCジュニア、グループC2クラスに参戦していたマツダだが、総合成績を上げるためにパワーアップ化に乗り出し、ターボ化かマルチローター化という選択から、熱の問題も考慮してマルチローターへの道を進む。
もともとロータリーは、積み木のようなエンジンなので、2ローター+1ローターなら、単純に150%の出力に、4ローターなら200%にという計算になる。
実際はエキセントリックシャフトの延長など難しい問題もあったが、マツダはまず3ローター=450馬力の757で、87年のル・マンにチャレンジし、総合7位。4ローターは当初550馬力だったが、オークションに登場する767Bには、レーシングエンジンとして、初とされる可変吸気機構などの新技術を投入し、630馬力にパワーアップ!
この767Bの活躍が、本気で総合優勝を目指す原動力となったのだ。じつは当時、グループC規定の変更が検討されていて、ロータリーエンジン車がルマンに参戦できるのは、あと1年、1990年までと噂されていた。
そこでマツダは、767Bと4ローターの13Jエンジンを徹底的に見直し、モノコックはカーボン化され787Bへ。エンジンは4ローターのまま、100馬力アップ、燃費は10%向上を命題とし、700馬力まで進化した、R26Bロータリーが誕生。ロータリーのラストイヤーとなった1991年(レギュレーション変更が1年延びた)、悲願のルマン初制覇へとつながる……。
1960年代からマツダのエースドライバーとして活躍した、片山義美が引退レース(1990年JSPC富士1000km 6位)でドライブしたのも、じつは767Bだった。
片山は、「767Bのダメ出しを徹底的に行って引退。それを活かして開発されたのが、ルマンで優勝した787B」と語っている。
そんな、栄光のマツダ787Bの礎となった、767B。
オークションでの落札予定価格は、1億8000万円~2億5000万円とも! グループC史上、最高傑作のレーシングカー、ポルシェ956の当時の新車価格が6000万円(レーシングカーだが、プライベートチームに市販されていた)だったことを考えると、マツダ767Bがそんなに高価でいいのかという気もするが……。
でも、その希少性や物語性が高く評価されるのなら、それはそれでマツダファンにはうれしい限りだ。
Photo:GOODING & COMPANY Matt Howell.
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