主に「スタック脱出性」と「低μ登坂発進」を向上
2017年冬、富士重工業が「スバルオールラインアップ雪上試乗会」をメディア向けに開催した。同社のコア・テクノロジーである「シンメトリカルAWD」の実力を、雪に覆われた北海道・新千歳モーターランドの特設コースで試すというもので、昨年に引き続いて開催された大型試乗会だ。
しかもコースレイアウトは共通部分を持たせながら、より多様な走らせ方ができるよう進化していた。つまり、2年連続で参加すると、スバルAWD(四輪駆動)の進化が体感できるという具合だ。
その進化とは、フルモデルチェンジしたインプレッサだけで感じられるものではない。レガシィ・アウトバックやフォレスターといったスバルSUVファミリーの雪上走行でも違いが感じられるというから興味深い。
さて、現行のスバル車には4種類のAWDシステムが採用されているが、アウトバックなどに搭載されているのは「ACT-4」と呼ばれるアクティブトルクスプリット式。もともとはパートタイム4WDのシステムを、最適なタイミングで自動的に四輪駆動モードにするという技術から出発したテクノロジーで、その歴史は初代アルシオーネ(1987年)まで遡れるというもの。
ハードウェアとしては、いい意味で「枯れた技術」ともいえるが、そのぶん制御(ソフト)側は常に進化しているという。そして、じつは2016年の年改(商品改良)によってACT-4には「発進時のトラクション性能を向上させる」ために新しい制御が組み込まれていた。
主に「スタック脱出性」と「低μ登坂発進」の性能を上げているという。具体的にいうと、ハンドルを切った状態で坂道発進をしても、しっかりと四輪でトラクションをかけることができるようになったとのことだ。さっそく、雪上コースの坂道で試してみる。
ハンドルを切ったままの坂道発進で進化を確認
勢いをつけて登りたくなるような坂道の頂上手前で停止、そのままハンドルを右に切ってアクセルを踏み込んでみる。なるほど、たしかにタイヤが空転することなく、ググッと雪道にトラクションをかけていくのが確認できた。
従来は、タイトコーナーブレーキング現象といって、舗装路で直結四駆にしてハンドルを大きく操作するとブレーキがかかったような状態になってしまうというネガを嫌い、ハンドルを切っているときには基本的にリヤには駆動トルクを配分しないような制御となっていた。
しかし、それでは雪や泥といったスリッピーな路面状況で、しかもまっすぐには抜けられないようなケースでタイヤが空転するばかりで脱出できない。
そこで、四輪の理想車輪速からタイヤのスリップを算出し、状況に応じて「ハンドルを切った状態でも、後輪にトルクを配分する」ことで、滑りやすい環境でのトラクションを高めたというのが、最新版での進化ポイントというわけだ。
さらにトラクションコントロールやVDC(横滑り防止装置)といった電子制御により、雪上で思い切り振り回しても、まったくもって不安感はない。危険なゾーンに入ってしまう前に、出力が絞られてしまうからだが、だからといって介入が早すぎるという印象もないのは、基本となるシャーシ性能の優秀さゆえだろう。
もっとも完璧というわけではなく、トラクションコントロールの早期介入により走破性をスポイルするような場面もなくはなかった。しかし、2016年の年改によりACT-4が進化したように、SUVに期待される悪路でのパフォーマンスを、今後の改良によってさらに高めることは大いに期待できる。
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