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【ヒットの法則393】ジープ チェロキーは伝統ある4×4性能に快適性をプラス、期待に応える進化を遂げていた

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【ヒットの法則393】ジープ チェロキーは伝統ある4×4性能に快適性をプラス、期待に応える進化を遂げていた

2007年のニューヨークモーターショーでデビューしたジープ チェロキーの国際試乗会は、その年の末、アフリカ・モロッコで行われている。ラインアップを3モデルから7モデルへと拡大したジープは、当時なにを目指していたのか。Motor Magazine誌ではジープブランドの中核モデルとなった新型チェロキーに注目、その試乗を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年2月号より)

その雰囲気どおりの走りっぷり
ジープ チェロキーという名を耳にして、まず思い浮かべる姿は現行モデルのそれではなく、かつて一世を風靡した、あのスクエアなフォルムの方……そんな人は、きっと少なくないはずだ。実は世界的に見ても、傾向は似たようなものだったらしい。スペインからチャーター機に乗り、初めて足を踏み入れたアフリカはモロッコの地にて対面することとなった新型チェロキーは、見ての通り直線基調のいかにも「らしい」フォルムをまとっていたのである。

●【くるま問答】ガソリンの給油口、はて? 右か左か、車内からでも一発で見分ける方法教えます(2020.01.21)

かつてのチェロキーを彷彿とさせる一方で、ジープ コマンダーとの親和性も強く感じさせるようになったフォルムは、これまでになく力強い印象も醸している。それはクラムシェル形状のボンネットや7連スロットグリル、台形フェンダーといったジープ伝統のディテールに拠るところも大きい。

一体化されたフロントのライトユニットも、よく見るとヘッドライトは丸型で、これまたいかにもジープ。個人的にはユニットのベゼル部分をダーククロームにして眼差しをもっとパッチリさせたいところだが、それは余談である。いずれにせよ、チェロキーという名への期待に、しっかり応える外観に仕上がっていることは間違いない。

高い位置にあるドライバーズシートに滑り込むと、室内の眺めも一変している。こちらもやはり直線が基調のスッキリとしたデザイン。周囲との比較で言えばクオリティ感はそれなりというレベルだが、現行モデルからの改善ぶりは著しい。そして実際にステアリングを握って走り出すと、そうした内外装の雰囲気は決して伊達ではないということがわかった。その走りっぷりに、明らかな進化のほどが見られたからである。

感心させられた快適な乗り心地と静粛性
まずそれを実感させるのが車内の静けさだ。パワートレーンは、これまで同様のV型6気筒3.7Lユニットに4速オートマチックトランスミッションの組み合わせだが、エンジンは燃焼室形状やバルブ駆動系の改良によって低速トルクを増強するとともにスムーズさと静粛性も向上。実際、これまでのゴロゴロとしたフィーリングは解消され、気持ち良く回ってくれる。もちろん、遮音自体もさらに力が入れられたのだろう。最初はちょっと我が耳を疑ったほどの静けさが実現されている。

動力性能も申し分ない。もとより充実した低速トルクが信条のエンジンだけに、アクセルペダルを深く踏み込むまでもなく、気持ち良く走ってくれるのである。

さらに感心させられたのが快適な乗り心地だ。市街地の荒れた舗装でも、この手のSUVに特有の上屋がユサユサと揺れて落ち着かない動きや、大きなタイヤとホイールがバネ下でドタバタと動き回る感じが抑えられ、姿勢はフラットに保ちつつも足さばきはしなやかな、上質な乗り味を実現していたのである。

しかし、そこはジープだけに、そうした洗練とオフロード性能をトレードオフにしたりはしない。

新しく採用されたセレクトラック2 4×4システムは、電子制御によって車輪の空転を感知して駆動力を最適配分するフルタイム4WD。当然備わるローレンジでは、ハイレンジの実に2.72倍の駆動トルクを得られるだけでなくクラッチのロックも行われ、最大の駆動力を発揮することができる。またヒルディセントコントロール、ヒルスタートアシストといった電子デバイスも初採用されている。

それらの効果はまさに絶大。試乗コースにはパリ・ダカールラリーでも使われるという砂丘超えも含まれていたのだが、新型チェロキーは特別な操作をまるで必要とせず、そこを軽々走破することを可能にしてくれた。そこまで厳しい場面でなくても、たとえば100km/h近い速度で駆け抜けるフラットな、しかし時おり岩や砂が浮き出たダートも、強靭なボディやよく動くサスペンションのおかげで、不安なく走り切ることができたのだ。

まとめるならば、皆が望んでいた姿かたちを手に入れ、オンロードでの快適性を向上させながら、ジープの基本であるオフロードの性能をもしっかり高めてみせたのが、この新しいチェロキーということになるだろうか。

ヨーロッパでの好調を受けて、2008年以降、日本市場にも新しいコンパクトSUVがいくつか上陸することになるはずだが、そんな中でこの老舗定番ブランドは、十分戦える資質を得たと見て間違いない。

もちろん、そんな風にライバルの多い中で、かつてのブームのような独り勝ちという状況を再現するのは難しいだろうが、300万円台という現状の価格レベルが維持されるなら、当時憧れながらも手が届かなかった層を含めて、大いに惹き付ける力はあるはず。あとは日本の街中でどれだけ映えるかが決め手となりそうだが…。それは早ければこの春くらいにも、実際に確かめることができそうである。(文:島下泰久/Motor Magazine 2008年2月号より)



ジープ チェロキー リミテッド主要諸元
●全長×全幅×全高:4493×1839×1797mm
●ホイールベース:2694mm
●車両重量:1935kg(EU)
●エンジン:V6SOHC
●排気量:3700cc
●最高出力:205ps/5200rpm
●最大トルク:314Nm/4000rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:4速AT
※欧州仕様

[ アルバム : ジープ チェロキー はオリジナルサイトでご覧ください ]

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