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日本の自動車文化をもっと豊かにするために【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】

掲載 更新 4
日本の自動車文化をもっと豊かにするために【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】

車のニュース [2025.04.18 UP]


日本の自動車文化をもっと豊かにするために【池田直渡の5分でわかるクルマ経済】
文●池田直渡 写真●イタルデザイン、トヨタ、マツダ、三菱、いすゞ、アルファ ロメオ

昭和のレース熱が蘇る!60年代日本グランプリの名車たちが富士に集結

 4月11日~13日、千葉県の幕張メッセで、AUTOMOBILE COUNCIL 2025が開催された。日本車メーカー共通企画として開催された特別展「過去が見た未来」では、国内メーカー各社の過去のショーモデルが展示された。

 市販車は別としてショーモデルだけを書き出すと、トヨタ 4500GT、マツダ S8P(ルーチェのプロトタイプ)、マツダ ビジョンクーペ、マツダ χコンセプト、三菱 HSR-II、いすゞ アッソ・ディ・フィオーリが展示された。


トヨタ 4500GT

マツダ ビジョンクーペ

三菱 HSR-II

いすゞ アッソ・ディ・フィオーリ
 現在のジャパン・モビリティ・ショーの前身である東京モーターショーには、その長い歴史上、数々のショーモデルが出品されてきた。ショーモデルはまさに日本の自動車文化であり、こうしたクルマが保存され、現代の人々が間近で眼にして、振り返ることができることはとても素晴らしいことである。しかしながら、現実的には、こうしたショーモデルの多くは、ショーの終了後解体されてしまう。

 ショーモデルは当然の如く量産されていないので、ワンオフパーツの集合体。制作には途方も無い費用がかかっている。聞くところによると1台4億円くらいだと言う。

 メーカーも、本来であればこれらを保存したいところだが、そこには無情な税制問題がある。制作に4億円かかれば4億円の資産として課税されてしまう。しかもショーモデルは長期間の自然劣化に耐える作り方はされていないので、保管するとなれば、空調などを備えた設備が必要で、劣化部品を交換しようと思えば、またとんでもない価格のワンオフパーツが必要になる。文化的価値はあれど、利益を産まないものに長期的に莫大なコストがかかることを株主がどう思うかは想像できる。その結果が解体という残念な結果を生むのである。

 しかし、思い起こすと我々は、海外メーカーの素晴らしいコンセプトモデルを、さまざまなコンテンツを通して度々眼にすることがある。あれはどうなっているのだろうか?


マセラティ ブーメラン

マセラティ ブーメラン

アルファ ロメオ B.A.T.シリーズ
 例えばジョルジェット・ジウジアーロの「マセラティ ブーメラン」やマルチェロ・ガンディーニの「ランチア ストラトス・ゼロ」、フランコ・スカリオーネの「アルファ ロメオ B.A.T.シリーズ」のようなクルマは、なんと現在は個人所有となっており、世界的に著名なコレクターの手元にある。

 しかも、そうしたクルマはイベントなどに貸し出され、多くの人々が、実物を眼にする機会が与えられる。おそらくはイベントの主催者にだって、相当な信用と誠意が求められると思われるが、そうやって後の世にその当時のメーカーとデザイナーの気概を伝え、感動を与える役割を果たしている。そういう素養がショーカーにはあるのだ。

じつは少し前に、一般社団法人日本自動車工業会(JAMA)から、今秋に迫った次回のジャパンモビリティショー(JMS)についての意見を求められて、筆者は過去のショーカーをオークションで売ったらどうだと提案した。

 世界的には貴重なショーカーがそうしたコレクターたちの手によってレストアされ、保存されているのを眼にすると、我が国で情熱を込めて作られたショーカーが、ショーでの展示を終えたら、お役御免で解体というのはあまりにも寂しい。だったら、JMSの会場で過去のショーカーをオークションで売ったらどうだという話である。

 制作費の全額が回収できるとは到底思えないが、例えば1000万円だったとしても、3億9000万円を損金計上できて、以後税はかからない。利益が出ている年にやれば節税になる。まあ税対策の話はともかくとして、文化的に見れば、廃棄証明を出すためだけに解体廃棄するよりよほど建設的である。


2025年月に開催された第49回レトロモビル 2025には14万6000人もの来場者が集まった(レトロモビル公式HPより)
 冒頭に話が出た、「オートモビルカウンシル」がロールモデルにしているのは、パリの「レトロモビル」。これは欧州を代表するクラシックカーのイベントであり、様々な歴史的名車を展示したり、オークションや展示販売が行われたり、車種ごとのクラブが、リプロパーツやレアパーツを販売するなど、お祭りの一面に加えて、ある意味旧車趣味生活のサポートをする役割も果たしている。

 筆者も30年近く前に一度行ったことがあるが、レトロモビルの楽しみのひとつは、自分ごととして楽しめる点である。すごい最新の技術を眼にして感動するのも良いが、お気に入りのブランドのかつての販促アイテムや、ミニカーやおもちゃ、ほぼサビの塊と化したペダルカーなど、ショップやクラブや個人が、それぞれの規模で思い思いの品を並べて出店し、フリマのように値段を交渉して売買を楽しめる。そういう身近さというか、ショーと来場者の距離感が、JMSとは違う感じなのだ。

 まあショーカーの販売はおそらくオークションになるし、落札価格も多分庶民に手の出るものではないだろうが、多分、大手の自動車メーカーが消費者やメディアに何かを見せるだけのショーではなく、もっと自動車生活とつながった領域まで多階層の楽しみ方ができるショーになっても良いのではないか。その1歩として、ショーカーのオークションは良い手だと思うのだが……。

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みんなのコメント

4件
  • BBDC60°
    まずは、初度登録から13年経過すると自動車税や重量税が
    重課になるという、バカな税制度を撤廃させることですな。
    それが、貴殿が仰るところの自動車文化を豊かにする
    第一歩だと思いますがね。
  • fxnhe501
    文化って、 こういうお歴々が文化文化言い出したときには既に滅びつつあるものだと思う。つまり、もう終わりだ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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