日本に上陸したフェラーリの新型「296GTS」は、痛快なオープントップモデルだった! 最新の“跳ね馬”に今尾直樹が迫る。
驚くべき俊敏さとレスポンス
メルセデス・ベンツらしい高級ミニバンとは──新型Vクラスを考える!
く~、カッチョいい!
ロッソ・コルサのボディ色にブルーのライン。1965年のル・マン24時間耐久レースにマラネロ・コンセッショネアーズというイギリスのフェラーリ・ディーラーがプライベート参戦したときの「250LM」を彷彿させるカラーリングである。
筆者はたまさか東名高速をトランポに載せられて西に向かう、このクルマを見て感激した。新しいフェラーリ296GTSだったとは知らずに!
296GTSは、「ファン・トゥ・ドライブを定義する」という惹句で2021年6月に登場した2992ccV6ミッドシップのPHEV(プラグイン・ハイブリッド)、その名も「296GTB」に遅れること10カ月、2022年4月にデビューしたそのオープン・バージョンである。
キャッチコピーは、「ドライビングのスリルの概念を定義する。トップを開けることも含めて」。
GTBのBがベルリネッタなら、GTSのSはスパイダーを意味する。ニッポンでは6月24日に発表となり、同月25、26日と鈴鹿サーキットで開催されたフェラーリ・レーシング・デイズでお披露目されている。
いや、もうメチャクチャよかった。陶酔状態になって、どうなってもいいや、と一瞬思った。そんなことを思わせる自動車はフェラーリだけだ。
「ピッコロ(小さな)V12」と、開発中に社内で呼ばれていたという2992cc、120度V6ターボ・エンジンのいななきを、オープンで体感する法悦をいかに描写せぬ。ステアリングホイールに設けられたマネッティーノでレースを選び、山道を走る。
ハンドリングは自由自在。ステアリングを切れば、296GTSは瞬時に向きを変え、大地に張り付くような安定感を維持したまま、コーナーに入り、旋回し、そして抜けてゆく。
侵入時のブレーキングでフォン、フォンッと8速DCTが自動的にブリッピングしながら、たぶん5速から2速ギヤにまで電光石火でダウンシフトし、クリッピングポイントを過ぎたところでアクセルを踏み込むと、“フォオオオオオオッ”と、快音を発しながら息の長い加速を間髪入れずに披露する。驚くべき俊敏さとレスポンス。目眩く横Gと前後Gの悦楽。天下無敵。ああ。いいっ!
地中海の太陽よりもきつい内房の日差しを浴びながら、私は生きる喜びを知る。容赦なく照りつける日差しに首筋がヒリヒリする。生きている証である。GTBでは得られない、さらなるプラスの喜びだ。
GTSだけがなしうるプラスの要素296GTSは、296GTBがそうであるように、電子制御の塊で、内燃機関(ICE)を電気モーターがヘルプしながら快走する。
スタビリティコントロールやトラクションコントロールをはじめとする電子制御なしではとうてい御し得ない途方もないパワーとトルクを素人にも享受させてくれる。それも、極上のサウンドトラックを、GTBよりもストレートに生で聴かせながら。
「ホット・チューブ」という排気共鳴を利用した、フェラーリ特許のサウンドシステムはGTS用に再設計されている。室内に轟く、ピッコロV12のレーシーにして享楽的なサウンドが、本当に生なのか、それともこのチューブによって増幅されたものなのか、判別するのはいささかむずかしい。
ただ、文字通り、リアルな空気と私は一体化していて、ライブ感がより高まっていることは疑いない。
だから、酔っちゃうのである。自己陶酔。映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』な、別次元の宇宙に住む、運転がメチャクチャうまいオレにいつしかなっている。そういう幻覚をドライビングという行為を通して、296GTSはもしかしたらGTB以上に“リアル”に見せてくれる。
ま、錯覚ですけれど、夢を見ている間は本当のことだ。そこが、欲張りといえば欲張りな、GTSだけがなしうるプラスの要素なのである。
ピュアEV走行も出来ちゃうインプレッション的なことも少々書いておきますと、リトラクタブルハードトップを開けたのは、撮影のため、海ほたるの駐車場でのことだった。
開閉はこれまでのフェラーリのスパイダー同様、センターコンソールの小さなスイッチを押し続けるだけでよい。オープン時にはサイドのウィンドウが自動的にスーッと下がり、リヤのカウル(「トノーカバー」と呼ぶ)がパカッと開いて、ルーフがふたつに折りたたまれて格納される。要する時間は14秒。45km/h以下なら走行中でも開閉できる。
天井のある駐車場でヴオンッ! というエンジンの爆音を撒き散らして目立ちたくなければ、EV走行すればよい。
ステアリングホイール中央の跳ね馬のマークの斜め左あたり、普段は真っ黒けの表面を軽く触ると、ハイブリッド・システムを制御するeマネッティーノの4つのモードのアイコンが点灯して浮かび上がる。
eD(eドライブ)はピュアEV走行で、航続距離は最長25km。最高速度は135km/hに制限される。これだけEV走行できれば、たいていの屋内駐車場から脱出できる。
H(ハイブリッド)はデフォルトで、エネルギーの流れを最大効率にし、電池にエネルギーが十分あれば、EV走行する。充電モードもある。エンジンが突然始動したり止まったりするので、慣れるまで、その都度、ギョッとする。
チェッカードフラッグのアイコンは「パフォーマンス」、レースでいうと決勝用で、エンジンは常時ONとなり、電池の効率を維持しつつ、フルパワーを発揮。エンジンが始動すると、温まるまで、たまげるサウンドを発する。そのときはワクワクすると同時に、いけないことをしているような心持ちになる。これはちょっと音が大きすぎるのでは……と不安になり始めた頃、静かになるからご安心。
ストップ・ウォッチのアイコンは「クオリファイ」、レースでいうと予選用で、充電を無視して最大のパフォーマンスを発揮する。
830psの威力2992ccの内燃機関(ICE)は120°V6で、大きく開いたVバンクの間にIHI製ターボチャージャーを配置し、最高出力663psと最大トルク637Nmを絞り出す。リッターあたり220psという超高性能で、V6のバンク角120°は等間隔燃焼の完全バランスだから、そのスムーズさときたらピッコロV12のネーミングにふさわしい。
ICEと8速DCTの間に挟み込まれた、F1ではMGU-K(モーター・ジェネレーター・ユニット、キネティック)と呼ぶ電気モーターは、最高出力167ps、最大トルク315Nmを発揮する。「クオリファイ」モードのときに生み出されるシステム最高出力は830ps/8000rpm、システム最大トルクは740Nm/6250rpmに達する。
乾燥重量は、GTBが1470kg、GTSが1540kgで、オープン機構の追加による重量増加は70kgにとどまっている。830psという力持ちにとって、おとなひとり分の重量増は無視できるらしく、296GTBと同じ最高速度330km/h、0~100km/h加速2.9秒をフェラーリは主張している。
自由自在に思えるハンドリングは、軽量、コンパクトで重心の低い120度V6のミッドシップであること、リチウムイオンバッテリーを床下に配置することによる低重心化、さらにV8ミッドシップ、たとえば「SF90」より50mm短い2600mmのショート・ホイールベースであることによる。ブレーキ・バイ・ワイヤのブレーキもタフで制動力バツグン。
木更津から先、館山自動車道に入って巡航していると、オープンにした頭上からゴーっという音が聞こえてきた。リヤのウィンドウをあげていれば、キャビンに乱流が入ってくることは微塵もない。296GTBと同じ、「エアロ・ブリッジ」と名づけられたルーフ・エンドの整流板も効果大なのだろう。GTS用に再設計されたエアロダイナミクスによって整えられた空気がジェットストリームになって後方に流れていく様が思い浮かぶ。
スパイダーなのにボディの剛性感はベルリネッタとなんら変わらない。フェラーリによると、これまでのスパイダー・モデル、たとえばSF90スパイダーより、ねじり剛性は50%も増しているという。
乗り心地が296GTBより若干硬い印象を受けたのは、この個体がオプションのアセット・フィオラノパッケージだからと思われる。このパッケージを選ぶと、GTレース由来のカナダのマルチマチック社製のショックアブソーバーがサーキット走行に最適化される。つまり、よりファームになっている。マネッティーノと呼ばれるドライブ・モードの切り替えダイアルを「スポーツ」から「レース」に切り替えると、若干跳ねるぐらい硬い。いわゆるGT3レベルの手前ぐらいの、ハードコアな気分が味わえる。
アセット・フィオラノではさらにカーボンなどの軽量素材を用いて車重が8kg軽くなる。たった8kgと思うなかれ。標準でボディメイクのコンテストに出る藤沢五月ぐらい絞っているのだから。
高速巡航中は、フォンッ、フォンッとやたら叫んだりはしない。自動車の分野では初採用だという「6ウェイ・シャシー・ダイナミック・センサー」がステアリングの角度やアクセル、ブレーキ、前後横G等をモニターしていて、ドライバーの意図を察しているからだ。
ゆったり静かに、というときには静かに、ワインディングを全開で、というときには期待以上の爆裂感で応えてくれる。臨機応変、たいへん頭がいい。高速巡航中、もしも退屈して、フォンッ、フォンッと叫んで欲しいと思ったら、ステアリングの根元の左のパドルを手前に引いてシフトダウンすればよい。
ステアリング中央の跳ね馬マークの下にあるエンジンのスタート&ストップのスイッチを押すと、ヒュウウンッという電子音が聞こえてくる。
人間を楽しませるためにテクノロジーを使う。フェラーリがやっているのは、シンプルにそれなのだ。いいよねぇ。
文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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