冬の日中は、ポカポカ陽気で、暖房をかけ続けていると眠くなってしまいます。オートエアコンの温度設定も28度にすればいいのか、それとも20度、25度にすればいいのか、迷うことが多いですよね。
冬のこの時期、エアコンの使い方って難しいですよね。そもそもクルマから温風が出る仕組みはどうなっているんでしょうか?
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意外に知らない、冬場の正しいカーエアコンの使い方について自動車テクノロジーライターの高根英幸氏が解説します。
文/高根英幸
写真/ベストカーWEB編集部 Adobe Stock
【画像ギャラリー】クルマのヒーターとエアコンはどう違うのか?
暖房を入れた車内はポカポカ陽気 居眠り運転に注意せよ!
冬場のエアコンの使い方は難しい。暖かくなりすぎると眠気を誘い居眠り運転につながるからだ
真夏と並んで、真冬の季節は、クルマでの移動は天候を問わず快適で、クルマを所有している恩恵を大きく感じられる。目的地に着いてもクルマから降りたくないほど快適なことも珍しいことではないだろう。
しかしドライバーにとっては、気を付けなければいけないポイントがある。暖房は快適であるだけでなく、心地良過ぎて睡魔を呼ぶこともある、ということだ。
のぼせるほどの高温に設定することはないだろうが、心地良いと思うほどの温度設定や、温室のように陽射しが差し込む状況では、リラックスし過ぎて眠気を感じてしまうこともある。
そうなると運転に集中することも難しくなるし、注意力も判断力も鈍くなってしまうのは、非常に危険だ。
オートエアコンは、1年中同じ条件で室内空間を快適に保ってくれる非常に便利な装備だが、実際には日照状態などで室温を調整するため、1年中昼夜で同じ温度を保っている訳ではない。
夏は温度設定を高めに、そして冬は低めにすることで燃料を節約しながら安全で快適な走行を実現することができる。
エアコンスイッチを押さなくても温度調節を高温にするだけで暖房にできる
エアコンのスイッチをONにせず、温度を高く設定するだけで暖房が作動する
暖房はエアコンを使わなくてもできる。冷房はエアコンのスイッチをONにしなければ、冷風は出ないが、暖房は温度調節を高温にするだけで暖気が出るので、エアコンをONにする必要はない。
これを知らない人が実に多い。家のエアコンと同じようにエアコンスイッチを入れて、オートエアコンの温度設定を28度や30度にする人が意外に多いのだ。
クルマはエンジンという熱源があるため、冷却損失を活用する暖房は非常に効率のいい空調なのだ。
ヒーターだけの使用はウインドウの曇りに注意
ヒーターを入れていてフロントウインドウが曇ってきたらデフォッガーかエアコンを入れる
家庭用エアコンの場合は冷房も暖房もエアコンが作り出しているがクルマの場合、エアコンは除湿と冷房を行なっているだけで、暖房はエンジンの冷却水を使ったヒーターによって実現している。
しかしヒーターだけの暖房は使い方を間違えたり、気象条件によっては危険なこともあるので、理解したうえで使い分けることが重要だ。
エアコンの除湿機能を組み合せることで除湿暖房を実現している。外気温が低い場合は、内気循環モードとして室内の空気を循環させて暖めた方が、室内温度は早く上昇させることができる。
しかし、内気循環は室内の空気だけを利用しているため、急激に条件が変わってしまうことがあることに注意したい。というのは乗員の呼気や発汗による湿度上昇はウインドウの曇りを発生させる原因となるからだ。
急激に曇ることで視界を奪われることもある。外気導入になっていれば、湿度の低い外気を直接ウインドウ内側に当てることでも曇りは防げるが、すでに曇ってしまった場合は、ヒーターだけで曇りを解消させるのは時間がかかる。
もしウインドウが曇ってしまった場合は、曇りをとるデフロスターとデフォッガースイッチを押す方が手っ取り早い。
扇方の枠に縦に3本のラインが入っているのがデフロスタースイッチで、長方形の枠に縦に3本のラインが入っているほうがデフォッガースイッチだ。
デフロスタースイッチはフロントウインドウに暖かい風を送ることによって曇りを取り除く。
デフォッガースイッチはリアウインドウにプリントされた電熱線でガラスを暖め、霜や曇りを除去する。
また、エアコンをONにすれば除湿暖房になるから、曇りの問題は解消される。もしウインドウが内側から曇ってきて、エアコンがオンになっていなければ、ACのスイッチを押すことでコンプレッサーが駆動され、みるみる曇りが解消される。
ただし、視界を失うほどの急激な曇りが生じた際には、エアコンを入れるだけでなく、周囲の通行を確認しながら左に寄ってハザードを点灯して曇りが解消されるまでは停車するようにしたい。
エアコンを入れても曇りが解消されないなら、それは吹き出し口の選択を間違えているか、エアコンのクーラーガス(冷媒)が抜けていて除湿ができなくなっている状態のどちらかだ。
本来、冷媒は家庭用のエアコンや冷蔵庫のように、本体が寿命になるまで使えるものだ。
しかしクルマのエアコンはエンジンルームという温度変化と振動に晒される場所で使われるため、どうしても経年劣化により配管などの継ぎ目やコンプレッサーのシールから漏れが発生してしまう場合もある。
クーラーガスが少なくなっていると冷房や除湿の効きが悪くなる。だからといってクーラーガスだけを再充填すればいい、という訳ではない。クーラーガスが抜けている原因を突き止めて修理しなければ、また叙々に抜けてしまうことになるからだ。
内気循環の危険性を知っておこう
内気循環のスイッチ。左に2つのスイッチはデフォッガー
クルマの空調には室温(吹き出し口から出る空気の温度)や風量の設定のほか、吹き出し口の位置や、吹き出す空気を選ぶモードがある。
吹き出す空気の種類は、前述の内気循環と外気導入で、基本は外気導入だ。冷暖房や除湿を強力にしたいなら内気循環で室内の空気を利用し続けるのもいいが、そのまま内気循環を続けていると車内の酸素濃度が低下してしまうことがある。
室内空間の広さや乗員数にもよるが、酸素濃度が低下してくると頭痛や眠気の原因となるため、暖房ののぼせや心地良さからくる眠気とは別の意味で危険なのである。
高級車のオートエアコンは内気循環を選んでも一定時間経過すると外気導入に切り替わるクルマもあるし、普段は外気導入でホコリやPM2.5などの不純物を検知すると内気循環に切り替えるオートモードを持つクルマも珍しくない。
吹き出し口の設定にも注意が必要
エアコンの吹き出し口の位置は夏場と冬場では違うという
吹き出し口の設定も大事だ。冷房なら上半身や顔に冷風が当たるようダッシュボードの上部ダクトを選択すればいいが、暖房ではのぼせる。
直接頭部に温風が当たるのは避けるべきだろう。ダッシュ上部と足下の吹き出し口を同時に選ぶことで頭寒足熱モードとなるクルマは多い。
もしくはフロントウインドウ手前と足下を選んで、曇り止めと頭寒足熱を両立させるのもアリだ。「頭寒足熱」は睡眠や健康に良いとされてきただけでなく、クルマの運転にも重要なことなのである。
暖房は足だけを暖めればいい、という訳ではない。しかし実際には温風は対流によって上昇するから自然に室内全体を暖めることになる。
その時、フロントウインドウ手前から吹き出す風やダッシュボードのダクトから乗員に向かって吹き出すのも温風であると、顔がほてるだけでなく、のぼせて頭がボーッとしてしまったり眠気を起こしやすいのだ。
暖房は燃費に影響するのか?
暖房は、エンジンの廃熱を利用しているので燃費にあまり影響しないが、エアコンの冷房で使われるコンプレッサーはエンジンで動かしているので、そのぶん燃料を使い、燃費も悪くなる。
暖房の送風の強弱による燃費への影響もそれほどはないが、朝方冷えている時に車内を暖かくするための暖機運転と高温および強い送風の設定はこのかぎりではない。
EVやHVに使われているコンプレッサーはエンジンの動力でなく、電気で動かす電動コンプレッサーを搭載しているが、EV、そしてHVやPHVのEVモードの場合は暖房時にエンジンの廃熱が利用できないため、電気ヒーターを搭載している。このため暖房時の燃費はガソリン車と比べると大きく悪化する。
こうしたことは航続距離にも影響するため、最近の車種では外気の熱エネルギーを利用するヒートポンプ方式が採用されている。
ただ、外気温が低いと、そのぶん冷媒との温度差が小さくなり、ヒートポンプによる暖房能力は低下するため、HVでは、外気温が0度前後になると自動でエンジンが始動し、ガソリン車の暖房方式に切り替わる。
まとめ:冬場の最適な温度設定は?
高めの温度設定で暖房のON/OFFを繰り返すのは避けた方がいい
さて、冬場に最適な温度設定は何度なのか? 家のエアコン設定と同じく悩んでいる人が多いことだろう。
エンジンをかけた後しばらくして車内が暖まってきたら、温度設定は20度に設定するのがよいだろう。
高めの28度に設定して頻繁に暖房のスイッチをON/OFFにしている人がいるが、暑すぎたり寒すぎたりと温度の変化が激しく、体調を壊す原因にもなるので避けた方がいい。
特に日差しが車内に降り注ぎ、冬の車内は温室のようになっている場合が多く、運転者の眠気を防ぐ意味でも車内は、あまり暖かくない方がいいのだ。
後は窓を開けたり、着ているもので快適さを調整しよう。外気導入で室内の清浄性を保ち、眠気を防ぐことも大事だ。
車内のウインドウが曇ってきたらデフロスターモードにして暖かい風をフロントガラスに当てて、曇りを除去しよう。
マニュアルエアコンの場合は、デフロスターモードに切り替えて温度や風量を上げると、ガラス付近に設置されたエアコンの吹き出し口から暖かい空気が勢いよく出て、曇りを除去する。
雨の日など湿気が多い場合には、外気導入モードから内気循環モードに切り換えた後に、ACボタンをオンにして車内を除湿することで、ガラスの曇りを素早く除去することができる。
オートエアコンの場合は、デフロスターのスイッチを押すだけで、ACスイッチがオンになり、エアコンの吹き出し口から暖かい空気が出てガラスの曇りを除去する。
ただ、自動的に外気導入モードになってしまうクルマもあるので、雨の日など湿気が多い場合は手動で内気循環モードにするとガラスの曇りを素早く除去できる。
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