4.0L V8ツインターボ・マイルドHVに四輪駆動
アウディA8の販売数の内、英国では20%をS8が占めるとか。ただし、落ち着いた容姿のリムジンは、運転するクルマではなく、運転してもらうクルマだとみなされているように思う。
【画像】高訴求力のオールシーズン・リムジン アウディS8 クワトロ 同クラスのサルーンと比較 全129枚
S8は、黒いサルーンが並ぶ駐車場で、他との違いへ密かに喜ぶ重役が選ぶA8なのかもしれない。高度な技術を楽しみつつ、高性能だとはご近所に気付かれたくない、税理士や弁護士が乗るアウディともいえるだろう。
それでも、S8の能力の幅は極めて広い。ドライバーにも高い充足度を与える、魅力的なサルーンへ仕上がっている。
現行型は、2020年に登場した4代目A8の強化版。エンジンは4.0L V8ツインターボガソリンのマイルド・ハイブリッドで、トップクラスの洗練性と動力性能、高級感を実現している。それでいて、控え目なボディをまとうことも特徴になっている。
最大トルクは81.4kg-mと、3代目S8より5.1kg-m高い。571psの最高出力は、34ps低いけれど。マニュアルモード付きの8速ATと、四輪駆動システムのクワトロが、この大エネルギーを受け止める。
片バンクのシリンダーを休止させ、効率を高めるシリンダー・オンデマンドを実装。ベルト駆動のスターター・ジェネレーター(ISG)は、最大8kWの電気をリチウムイオン・バッテリーへ送れるという。
機械式センターデフだけでなく、S8にはアクティブ・リアデフも組まれる。低速域では前輪と逆向きに、高速域では同じ向きにリアタイヤが制御される、後輪操舵システムも標準だ。
予見的に制御されるエアサス 非の打ち所がない車内
サスペンションは、アウディがプレディクティブ・アクティブと名付けた逸品。前方を監視するカメラと、高速なアクチュエーターが連動し、個別にエアスプリングを予見的に制御する。ドライブモードによって、その特性は変化もする。
コンフォート+モードでは、カーブでボディを傾け遠心力を吸収。ダイナミック・モードでは、スチールコイルと比較し、ボディロールは半分にまで抑えられるという。
ドアを開くと、乗降性を良くするため、車高がスッと上がる。驚くほど高速に。乗り込んでドアを閉めると、通常の高さへ戻る。優れた技術を実感させる、小ワザといえる。
インテリアは、カーボンファイバーとアルミニウムのさりげない化粧トリムなどで、A8以上のスポーティ感が醸し出されている。素材はくまなく上質で、実際に押せるハードスイッチが沢山並び、改善したい部分は見つからない。
最新世代と比べると少し旧式かもしれないが、インフォテインメント用タッチモニターは10.1インチ。ステアリングホイールはマルチファンクションで、メーター用モニターもクリア。スポーツシートはサポート性が高く、第一級の運転環境だと表現できる。
インフォテインメントは、MMI。個別のコントローラーはなく、タッチモニターだけの入力で操作性に優れるわけではないが、ショートカットキーは用意されている。
ショートホイールベースのみの設定でも、ヒーター内臓のリアシート側は広々。上級リムジンらしく、独立したモニターが用意される。
落ち着いた容姿を裏切る速さ 唸らされる操縦性
公道へ出れば、野蛮に感じられるほどの速さで、落ち着いた見た目の印象を裏切る。ドライバーがその気になれば、通常は滑らかな8速ATは容赦なくギアを切り替え、0-100km/h加速を3.9秒で処理する。
迅速に反応する四輪駆動システムも、この鋭さへ貢献している。スピード感は、スピーカーから再生される人工音によって、強調されてもいる。
それでいて、コンフォート+モードを選べば、ウットリするほどスムーズでエレガント。優しいアクセルペダルの操作へ、精緻にV8エンジンは反応。軽負荷時には、気筒休止システムが作動し4気筒状態になるが、驚くほど粘り強い。
操縦性で唸らされるのは、サスペンションと後輪操舵システムが叶える、適応力の幅の広さ。シャシーとのコミュニケーション力とレスポンスは、まさに新次元だ。大きなボディを意識させないほど正確に反応し、ドライバーを鼓舞する。
カーブが連続する区間では、回頭性は意欲的でありつつニュートラル。先代のA8では、備わらなかった強みといえる。
リアシートへVIPが乗っている場合は、コンフォート+を選ぶのが正解。速度抑止用のスピードバンプを検出すると、気付かない内に車高は50mm上昇し、サスペンションのストロークを確保。電動アクチュエータにより、ストラットの衝撃は打ち消される。
30km/h程度で通過すれば、殆どバンプの存在は感知できない。21インチのアルミホイールを履いていても。ロードノイズも驚くほど低い。
訴求力の高いオールシーズン・リムジン
カーブでは、ボディは最大3度まで傾斜。より快適に、高速コーナーを駆け抜けられる。
流れの速い郊外の幹線道路でも、高速道路でも、市街地でも、ボディは常にフラット。最近、ポルシェ・パナメーラが同等の技術を採用したことはご存知だろう。
またダイナミック・モードでは、アクティブ・アンチロールシステムとして機能。設置性を高め、一層シャープな操縦性を引き出してくれる。果たして、その精度や安定性、敏捷性には驚かずにいられない。
従来のS8も間違いなく速かったが、ドライバーの魅力ではライバルに届かずにいた。運転しやすく、アウトバーンでは頼もしくても、ワインディングでは一体感が乏しかった。
しかし現世代のS8は、歴代が築いてきた特長はそのままに、動的な能力が大幅に引き上げられている。高度な技術が相乗し、ドライバーが楽しめる、極めて訴求力の高いオールシーズン・リムジンが完成している。
ただし、ステアリングホイールやペダルは軽く、情報量は希薄。明らかに、アシストされている感覚を伴う。操縦性も自然で一貫性が高いとはいえず、システムの介入を感じさせるものではある。制御は上品だけれど。
車重が2220kgあるS8の燃費は、カタログ値で8.7km/L。マイルド・ハイブリッドと気筒休止システムを備えるが、ランニングコストは小さくない。英国価格は、試乗したブラックエディションで11万3740ポンド(約2218万円)となる。
要求を満たす究極のモダン・アウディ
乗り心地は快適で、車内空間は贅沢なほど広く、高速移動は極めて安楽。突出した洗練性と能力を宿す、理想的なエグゼクティブ・エクスプレスだと表現できる。選んだ理由を問わず、現代のリムジンとしての要求をしっかり満たしている。
出色のパフォーマンスとテクノロジー、主張しすぎないステータス。V8エンジン自体も味わい深い。これぞ、究極のモダン・アウディだと表現していい。
◯:アウディらしい高品質なインテリア ソウルフルでスムーズなV8エンジン 高度なサスペンションが叶える快適性
△:やや旧式に見えるインテリア 優れない燃費
アウディS8 クワトロ・ブラックエディション(英国仕様)のスペック
英国価格:11万3740ポンド(約2218万円)
全長:5190mm
全幅:1945mm
全高:1473mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:3.8秒
燃費:8.5-8.7km/L
CO2排出量:138g/km
車両重量:2220kg
パワートレイン:V型8気筒3996cc ツインターボチャージャー+ISG
使用燃料:ガソリン
最高出力:571ps/6000rpm
最大トルク:81.4kg-m/2050-4500rpm
ギアボックス:8速オートマティック(四輪駆動)
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売れなさ過ぎ。